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中国地方旅【温州】①中国人のお母さんに髪を乾かしてもらった話

先週末、私は中国の温州に行ってきた。
夫の同僚のLinくんが実家に帰るというので、私たちも誘ってくれたのだ。
なかなか中国人の家にお邪魔する機会なんてなんて、またとないチャンス。私たちはそのお誘いに甘えさせていただくことになった。

Linくんとは何回か夫と一緒にご飯に行ったこともあり、英語と日本語で話してくれる優しい友人だ。


温州は中国の南の海沿いにある。上海から高鉄に乗って、約3時間半で温州に到着する。山に囲まれた地域で自然が豊かで海鮮が有名だ。
昔は貧しい地域だったが、海外でビジネスをする人が増えて、中国でも有数のお金持ちがいる地域らしい。


金曜日、二人の仕事終わりに私も合流して、19時過ぎに上海を出て、23時頃に温州に到着した。
駅にLinくんのお父さんが迎えに来てくれて、そこから車に乗って実家へ向かった。

ここで私は初めてベンツに乗った。
うわあ、ベンツってこんなに乗り心地がいいものなのかあ、と感動した。

そして実家に着いたら、夜遅かったのにも関わらず、お父さんとお母さんは私たちを温かく迎え入れてくれた。
冷えたライチにメロン、ブルーベリーとたくさんのフルーツを出してもてなしてくれた。

マンションの一部屋で、かなり広くて居心地が良いお宅だった。

私たちは拙い中国語で挨拶して、自己紹介もした。温州は方言があり、いつも聞いている上海語と違ったので聞き取るのが難しかった。

そして少し話した後にシャワーをお借りした。(中国には基本的に浴槽はない)

ドライヤーを借りて、ある程度髪を乾かした後、もうお父さんお母さんは部屋に入っていたし、あまり長く使っても迷惑かなと思ったのと、いつも全部乾かさず、ある程度乾いたら自然乾燥にしていたので、その状態でドライヤーを返却しに行った。
そうしたらお母さんが「あら!まだ髪が濡れているわ!」と言われて、
私は「大丈夫大丈夫!ありがとう!」と伝えたのだけど、
お母さんは引き下がらずに「そこに座りなさい!」と椅子があるところへ私を促して、ドライヤーのスイッチをオンにした。

そしてお母さんは私の髪を乾かし始めたのだった。

あれ、私は今何をされているんだ?と客観的に自分の状況を把握してみたのだが、
どうやら現在29歳の私は、先ほど会ったばかりの友人のお母さんに髪を乾かしてもらっているみたいだ。

私の髪の長さはミディアムより少し長めくらいの長さなので、乾かすのに少々時間がかかる。

1時間ほど前に出会ったばかりの人に乾かしてもらうなんて、とても気まずくて仕方なかったのだが、これも貴重な経験だなと思った。

それに髪を濡れたままだと身体が冷えるし、身体を冷やすことは中国では1番良くないということもあるのだろう。

そんなことを思いながら、お母さんは櫛も使って髪を梳かしてくれて、私の髪はサラサラに仕上がった。
夫も「いつもと違ってサラサラしてていい感じ!」と褒めてくれた。

Linくんに話を聞いたところ、お母さんは昔美容師の勉強をしていた経験があるとのことだった。
そしてLinくんにはお姉さんもいて、「娘が小さい時にはたくさん乾かしていたからね」とお母さんに言われた。

私は2月にブリーチを2回して髪をピンク色に染めた。ブリーチをした後は髪がゴワゴワするようになっていたので、トリートメント剤を使ってなんとか保っていたところだった。

しかしちゃんと髪を乾かして、櫛を使うとサラサラになるんだなと感じた。

当たり前のことをちゃんと当たり前にすることが大切なのだと改めて思った。



次の日、「昨日はありがとうございました。今日の私の髪はとてもいいです。」「今日は自分でやります」と伝えたら、
お母さんは「あら、よかった!今日もやってあげるわ!」と言って、また次の日の夜も髪を乾かしてくれたのだった。

二日目は、もう私も肩の力を抜いてされるがままに髪を委ねた。

そしてお母さんに、「あなたの髪はゴワゴワしてるから、ちゃんとトリートメントつけて、髪を乾かしなさい」と言われた。

面と向かって、ちゃんと指摘された。


大人になってから、大抵は自分で乾かすことが多い。美容院に行った時は美容師さんが乾かしてくれるが、それは美容師さんにとっては仕事であり、私はそれをサービスとして受け取っている。


思いがけず、そして久しぶりに、そんなサービス以外の状況になって、最初は居心地悪かったはずなのに、終わった後"髪を乾かしてくれた"その事実に心が温かくなった。

なぜ心が温かくなったか。
たぶんそれはサービスではなかったから。

きっとお母さんは、心からちゃんと髪を乾かしてほしかっただけだし、
私もそれを真正面から受け取った。
ただそれだけのことだったからだ。


誰かから愛情を受けて、褒められると人は変わるみたいだ。

また髪をサラサラにしたいし、夫からも髪を褒められたい。

そう思った私は上海に戻ってきてから、髪を乾かす時間が長くなって、ちゃんとサラサラにして、夫に褒めてもらいにいっている。

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