見出し画像

これだから……。

 いつぞやの脳内こしつ

 いつも通り予想通り。そんな通り道はないのに、閑古鳥のはずなのに、わちゃわちゃしている我が思考回路ゆうほどう

 さて、キャラこいつたちをどうしようか。
 手掛けている(当時)作品。
 ある二つの種族が戦いによって絶滅するのだが、一定の条件を満たせば両族は蘇生できるという乱暴な設定(主役がその種族に該当する)。

《……なんで、なんであんな展開にしたんだよ? まだ言えてなかったのに》

 いまにも泣き出しそうな弱々しい声を、鼓膜が拾う。くぐもっていてもしっかりと聴こえるのは本当に便利だと、我ながらに思う。自画自賛。

「悪いなとは思っている。君がそれほど主役あの娘に想いを寄せていたとは、ね」

《なんだよ、それ。アンタはオレらをバカにしてんのかよっ⁉ ……作者って、そういうモノなの?》

「いや、君のあの時の気持ち。こっちにも十分すぎるほど伝わったよ。胸が苦しくなって、目頭が熱くなって、唇と肩が震えてきた。呼吸だって、浅くなっていったんだ」

 真の姿は視えない。代わりにモデルにしている既存作品のキャラを借りている状態。
 その場面のときの彼は、とても印象的で今でも刻まれている。少しおかしな話で場面よりも、この子達の淡い感情が色濃いんだ。

《解ってんなら、なんで……》

 雨に打たれている仔猫のような、縋りたいものが遠ざかるのを耐えるような声を、口から絞り出した。

「そういう設定だから、としか言いようがない」

 冷淡に言える自分に目をみはる。
 この子もあの娘も、互いの気持ちは解っている。しかし、物語の筋書き上、それは避けようのない展開だから。

《オレ、……オレらって、アンタにとっていったい何なんだ?》

 キャラの立場としては至極当然の質問だ。
 私としては、たとえ架空の人物だとしても、私から生まれた“我が子”なんだ。敵だろうと味方だろうと、退場させたくはない。死は作品のなかだけであって、(キャラ)個人として生かしているつもりで書いていた。

 “大事な子たちだよ”
 そう伝えたって、聞き入れてくれないのは承知している。どう解釈するかは“出来事”をどう受け取るかで決まりつつある。それが違えていようと歪んでいようと、それで納得できればそれでいいとさえ思う。

《実際にアンタらみたいに生身の体を持っているわけじゃない。だから死を軽んじられているのか? って、疑っちゃうんだよね。それにオレらが肉体を有していたとしても、自分じゃないから痛くも痒くもないってことだろ? 違うか? 答えてみろよ》

 キツい問いを投げかけられた。すぐには回答に窮する。そんな問い、来るとは思ってもいないから。


 未だにこれは答えられずにいる。言葉として用意出来たとしても、それが彼にとって欲している答えではないだろうから。

 キャラからすれば、一寸先は闇の現実の人生そのものを歩いているから。自分たち人間が神様や仏様に「どうしてこんな展開になる?」と文句を言うようなもの。
 まだ彼らは自分が置かれた立場や使命、状況を把握して責任を生きている。

 なんだか、いろいろ習った気がする。

 これだから、物書きは楽しい。自分ではない『無意識の自分だれか』と話せるから。




よろしければ支援願います。