LGBT法案は、どういう内容なのか?(その2)

先日に引き続きLGBT法案の中身を見てみる。なお、特に注記しない場合、自民党・公明党が今の国会に出したものを引用する。ちなみに、蛇足だが、衆議院のホームページではまだ法案はアップされていない(参議院ではアップされている。衆法なのに。。)。

第3条までは目的や定義、基本理念を規定しており、何らか行為を求めるのは第4条以降である。今回は、国や地方公共団体に関するものを見ていく。

国・地方公共団体の役割

(国の役割)
第四条 国は、前条に定める基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する施策を策定し、及び実施するよう努めるものとする。
(地方公共団体の役割)
第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との連携を図りつつ、その地域の実情を踏まえ、性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する施策を策定し、及び実施するよう努めるものとする。

まず、国や地方公共団体の役割が規定されている。
理解の増進を図るための法律を作るからには、わざわざ書くまでもないことのように思うが、何か意味があるのだろうか。「努めるものとする。」というのは、実施しなくても良いということなんだろうか。第7条等と違い、「国」となっているのも気になるところである。

施策の実施の状況の公表

(施策の実施の状況の公表)
第七条 政府は、毎年一回、性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する施策の実施の状況を公表しなければならない。 

これは、少し書きぶりが異なるが、「子供・若者白書」のように、「~白書」を作るべし、ということなんだろうか。。

※子ども・若者育成支援推進法(平成二十一年法律第七十一号)
(年次報告)
第六条 政府は、毎年、国会に、我が国における子ども・若者の状況及び政府が講じた子ども・若者育成支援施策の実施の状況に関する報告を提出するとともに、これを公表しなければならない。
2 こども基本法(令和四年法律第七十七号)第八条第一項の規定による国会への報告及び公表がされたときは、前項の規定による国会への報告及び公表がされたものとみなす。

基本計画

 (基本計画)
第八条 政府は、基本理念にのっとり、性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する基本的な計画(以下この条において「基本計画」という。)を策定しなければならない。
2 基本計画は、性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解を増進するための基本的な事項その他必要な事項について定めるものとする。
3 内閣総理大臣は、基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本計画を公表しなければならない。
5 内閣総理大臣は、基本計画の案を作成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出その他必要な協力を求めることができる。
6 政府は、性的指向及び性同一性の多様性をめぐる情勢の変化を勘案し、並びに性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する施策の効果に関する評価を踏まえ、おおむね三年ごとに、基本計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更しなければならない。
7 第三項から第五項までの規定は、基本計画の変更について準用する。

理解増進のためにここまでする必要があるのか。そもそも何をどう理解するかは国民一人一人が主体的に行うことであって、国民的に理解が得られていない段階なら法律として時期尚早であり、だからこそ、これまで名称に「理解」を含む法律が存在しないのだと思う。政府に計画まで作らせて特定の事柄について国民に理解させようというのはパターナリズムが過ぎるのではなかろうか。

学術研究等

(学術研究等)
第九条 国は、性的指向及び性同一性の多様性に関する学術研究その他の性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する施策の策定に必要な研究を推進するものとする。

超党派の案だったときには、「調査研究」だったものが「学術研究」に変わっている。「国民の理解の増進に関する施策の策定に必要な調査研究」よりイメージはできるが、学術研究にしろ調査研究にしろ、そういったものは事業主や学校に何かを求める前に行うことではないのか。

知識の着実な普及等

(知識の着実な普及等)
第十条 国及び地方公共団体は、前条の研究の進捗状況を踏まえつつ、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて、国民が、性的指向及び性同一性の多様性に関する理解を深めることができるよう、心身の発達に応じた教育及び学習の振興並びに広報活動等を通じた性的指向及び性同一性の多様性に関する知識の着実な普及、各般の問題に対応するための相談体制の整備、民間の団体等の自発的な活動の促進その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
2・3 略

やはり「前条の研究の進捗を踏まえつつ」と出てくるのである。これは超党派の案だったときも同じ。
ところで、広報や相談体制の整備は話として分かるが、「民間の団体等の自発的な活動の促進」とは何だろう。「自発的な活動」なら勝手に行ってくれ、ということでは。
ちなみに、現状、「自発的な活動の促進」を含む法律は3本あるようだが、すべて環境に関するものである。また、前例となる法律で例示されているのは、「情報の提供」である。LGBT法案は当事者が困っているからということで出てきたものだと思うし、当事者のことは当事者が分かっているという声もあったが。。

森林・林業基本法(昭和三十九年法律第百六十一号)
(国民等の自発的な活動の促進)
第十六条 国は、国民、事業者又はこれらの者の組織する民間の団体が自発的に行う緑化活動その他の森林の整備及び保全に関する活動が促進されるように、情報の提供その他必要な施策を講ずるものとする。

生物多様性基本法(平成二十年法律第五十八号)
(多様な主体の連携及び協働並びに自発的な活動の促進等)
第二十一条 略
2 略
3 国は、事業者、国民又は民間の団体が行う生物の多様性の保全上重要な土地の取得並びにその維持及び保全のための活動その他の生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する自発的な活動が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。

バイオマス活用推進基本法(平成二十一年法律第五十二号)
(民間の団体等の自発的な活動の促進)
第二十七条 国は、事業者、国民又はこれらの者の組織する民間の団体が自発的に行うバイオマスの活用の推進に関する活動が促進されるよう、情報の提供、助言その他の必要な施策を講ずるものとする。

性的指向・性同一性理解増進連絡会議

(性的指向・性同一性理解増進連絡会議)
第十一条 政府は、内閣官房、内閣府、総務省、法務省、外務省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省その他の関係行政機関の職員をもって構成する性的指向・性同一性理解増進連絡会議を設け、性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する施策の総合的かつ効果的な推進を図るための連絡調整を行うものとする。

基本計画のところでも思ったが、手続きについて規定しすぎではないか。

大分食傷気味になってきたが、さらに続くかも。。

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