LGBT法案は、どういう内容なのか?(その1)

G7サミット前に提出されるかどうかを含めて世間を賑わしたLGBT法案。マスコミや野党が熱心に取り上げるが、何がしたいのかも自分には見えてこない。どんな内容の法案なんだろうか。実際の条文を確かめてみることにした。

ここで早速出端を挫かれてしまうのだが、5月21日21時現在で、衆議院・参議院のホームページを見ても法案本体を確認できない。。議案の審議経過自体は掲載されており、LGBT法案より前に受理されたものは法案本文も掲載されているのに不思議である。仕方ないので政党のホームページにも行ってみる。

自民党・公明党提出の法案

自民党には関連するページがなく、公明党は山口代表の議員総会での挨拶を紹介しているが内容自体は掲載していない。他の法案の扱いを知らないが、少なくともこの法案を積極的に見せるつもりはないらしい。
どうしたものかと検索していたら、古屋圭司議員のホームページに掲載されているものを発見。古屋議員は、今回の法案の提案者でも賛成者でもないが、自民党LGBT特命委員会の初代委員長とのこと。
http://www.furuya-keiji.jp/blog/archives/20290.html

立憲民主党・共産党・社民党提出の法案

立憲民主党等の法案は、立憲民主党のページですぐに見つかる。
https://cdp-japan.jp/news/20230518_6080

ただ、掲載ページには、以下の説明が。。国会戦術というものなのか知らないが、成立を目指すことを目的にしない法案って一体。。ちなみに、法案のファイルを開くと左に90度傾いて表示される。共産党は赤旗のページに掲載されているものの党本体のページには非掲載、社民党は入管法改正案とまとめて福島党首の会見の内容として紹介、という程度のようである。

 「議連合意案」は、差別禁止を含まず、当事者の尊厳を保護するには不十分ですが、当事者に譲歩をしてもらいとりまとめられたもので、その内容をさらに切り下げる自民党「修正案」を容認することはできません。立憲民主党は、自民党「修正案」の不当性を訴えるため、本法案を国会へ提出したものです。

 立憲民主党は、昨年6月に、差別禁止を含む「LGBT差別解消法案」を提出しています。この法案の成立を追求しつつ、国会で本法案を議論することを通じて、自民党「修正案」が、性的指向・性自認の多様性が尊重される社会の実現に逆行するものであることを明らかにしていきます。

立憲民主党HP「LGBT理解増進法案を国会へ提出」(令和5年5月18日)同5月21日22時閲覧

法案の中身

法案を探すだけで、既に与野党問わずやる気のなさを端々に感じさせるが、気を取り直してとりあえず読んでみる。

条文数が違う?

自民党・公明党案は本則11条・附則3条、立憲民主党・共産党・社民党案は本則14条附則3条である。元々超党派でまとまったものから、自民党・公明党案になる過程で3条消えたらしい。何が消えたのか。

立憲民主党・共産党・社民党案(旧超党派案)

(本則)
第1条 目的
第2条 定義
第3条 基本理念
第4条 国の役割
第5条 地方公共団体の役割
第6条 事業主の努力
第7条 学校の設置者の努力
第8条 施策の実施の状況の公表
第9条 基本計画
第10条 調査研究
第11条 知識の着実な普及等
第12条 相談体制の整備等
第13条 民間の団体等の自発的な活動の促進
第14条 性的指向・性同一性理解増進連絡会議
(附則)
第1条 施行期日
第2条 検討
第3条 内閣府設置法の一部改正

自民党・公明党案

(本則)
第1条 目的
第2条 定義
第3条 基本理念
第4条 国の役割
第5条 地方公共団体の役割
第6条 事業主等の努力
第7条 施策の実施の状況の公表
第8条 基本計画
第9条 学術研究等
第10条 知識の着実な普及等
第11条 性的指向・性同一性理解増進連絡会議
(附則)
第1条 施行期日
第2条 検討
第3条 内閣府設置法の一部改正

両法案の比較

見出しだけみると「学校の設置者の努力」「相談体制の整備等」「民間の団体等の自発的な活動の促進」がなくなったらしい。
ところが、である。
よくよく見ると、1点目は「事業主の努力」が「事業主等の努力」になっており、独立の条だった「学校の設置者の努力」が前の条の項になっただけである。
2点目・3点目はどうだろうか。直前の「知識の着実な普及等」の条の項数は変わらない。「相談体制の整備等」や「民間の団体等の自発的な活動の促進」は消えたのか。否である。よく中身を見ると、やはりちゃっかり直前の「知識の着実な普及等」に組み込まれているのである。。

国及び地方公共団体は、前条の調査研究の進捗状況を踏まえつつ、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて、国民が、性的指向及び性自認の多様性に関する理解を深めることができるよう、心身の発達に応じた教育及び学習の振興並びに広報活動等を通じた性的指向及び性自認の多様性に関する知識の着実な普及のために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

立憲民主党・共産党・社民党法案第11条第1項

国及び地方公共団体は、前条の研究の進捗状況を踏まえつつ、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて、国民が、性的指向及び性同一性の多様性に関する理解を深めることができるよう、心身の発達に応じた教育及び学習の振興並びに広報活動等を通じた性的指向及び性同一性の多様性に関する知識の着実な普及、各般の問題に対応するための相談体制の整備、民間の団体等の自発的な活動の促進その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

自民党・公明党法案第10条第1項

「性自認」が「性同一性」になったり、「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されない」が「性的指向及び性同一性を理由とする不当な差別はあってはならない」になったり報道されているように多少の違いはあるが、ほぼ変わっていない。。むしろ「~のために必要な施策」だったのが「その他の必要な施策」になって、具体的に何を行うのかを示す形になったようにも見える。

ちなみに、公明党の記事では御丁寧にこんなことも書いてある。

一方、党「性的指向と性自認に関するプロジェクトチーム」座長の谷合正明参院幹事長は、超党派の議員連盟が2021年にまとめた法案から修正された文言などについて説明し、いずれも法制上の意味は変わらないことを衆院法制局に確認したと報告した。

また、同法案を基に進めていく施策についても「一切変わっていない。政府に連絡会議を設け、担当の省庁や大臣を明確化させていくことや、学術研究、相談窓口の体制整備を進めていく」と述べた。

公明党HP「“LGBT法案” 幅広い合意形成が重要」(令和5年5月18日)同5月21日22時閲覧

「保守」の立場に配慮したという与党も、逆行する動きだ非難する野党も言葉遊びかよ。


・・・大分げんなりしてきたが、長くもなってきたので、一旦この辺で。気が向いたら続きを書くか。

(上記で紹介しなかった参考ページ)



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