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誰かに「吉原炎上」を観てもらいたい

趣味は映画鑑賞と答えると、流れでおすすめの映画を聞かれることが多い。
基本その人が好きなジャンルを聞いて、パッと思いついたものを言っているが、
ジャンルはなんでも良いという人には五社英雄監督の「吉原炎上」をおすすめしている。
が、これまで誰一人として観たよ~!と言ってくれた人はいない。

話の流れで聞いただけで、別に映画には興味ないという人もいただろうが、
もし、その時私のプレゼン力が神がかっていたら、興味が無かった人でも観たいという気持ちにさせることができただろう。
テレビショッピングだって、はなからその商品に興味があって買うわけではない。

なので、次回プレゼン時に神が降臨するように、自分の感想をまとめておく。


吉原炎上は1987年に作られた映画である。まず初めに昔の映画に関する固定概念は捨ててほしい。
昔の映画=つまらないという概念。
今の映画だって面白いものもあればつまらないものもあるだろう。昔の映画だってそうだ。
しかしその中で私たちが今観ることができているということは、現代まで残ることができた選りすぐりの作品ということだ。
内容の合う、合わないはあるにしろ、一定の基準はクリアされているのだから、まだ寿命が決められていない最新映画をみるよりも、後悔する確率は少ないだろう。

昔の映画を見るというハードルを下げてもらい、吉原炎上について。

この映画は明治の終わりごろ、吉原遊郭に生きた女性、花魁達をとりあげた映画である。
なんとなく知っている人も多いと思うが、地方の成人式で一部の人が花魁スタイルで出席している姿に見覚えないだろうか、あれだ。
その花魁の世界の内実を美しく、刺々しく表現した作品だ。
主演の名取裕子が吉原遊郭に入るところから去るところまでが描かれているので、遊郭とは、花魁とは、ということを知ることができる。
ただ花魁一人一人が抱える心の重みが表現されているため、何の気なしに見るのは要注意だ。
花魁という特殊な環境が特殊な感情を産み、私たちが日常では感じないようなことまで意識させられるので、見る覚悟はいる。


と怖がらせることを書いてしまったが、絶対見て欲しい。
映像のとんでもないハイセンスさを体感してほしい。
園子温好き、私立探偵濱マイク好き、君たちは絶対みよう。

一番有名なのは布団のシーンだと思われるが、本当に衝撃的だ。
一面に敷き詰められた赤い布団のうえで、狂ったように叫ぶ女性。
なにかの映画のキャッチコピーで「劇薬エンタテインメント」という言葉があったが、これにつきる。
いけないものを見てしまった。なのに目が離せない。魅了される。
鬼のセンスと女優さんの圧倒的演技力で、置かれた環境によって狂わされた1人の女性の生を、これでもかというくらいぶつけられる。
この映画が普通に映画館で上映されていた昭和の日本はカオスだ。



やっぱり映画の感想って難しい。
その時の感情に合った言葉を見つけるのが難しい。

神が降りてくることを祈ろう。
降りてこなかったら「Yahoo映画のスコア見て」で押し通すことにする。


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