気まぐれ図書館

散歩中、そういえば近くに図書館があったなと思い、行ってみることにした。
館内は思ったよりも広くて、人もそこそこ入っていた。
特に借りたい本があるわけでもないけれど、室内にいっぱいの本があるのはとてもワクワクする。
ひとつひとつのコーナーをじっくり見てみる。いつも読まないようなジャンルの本を手に取って読むのも楽しい。

歩いているうちに、気がついたら児童書のコーナーに入っていた。
子供の頃、大好きな絵本を何度も読んでいたことを思い出した。
あの絵本のタイトルはなんだっただろうかと探してみると、見慣れた表紙の本が目に入った。
心なしか少しくたびれている状態の本を手に取ると、まさしく子供の頃に読んだ絵本だった。
あまり有名な絵本ではなかった気がしたので、まさかあるとは思わなかった。嬉しくなってページをめくる。小さい頃の記憶がよみがえる。

借りて行こうかと絵本を持って受付へ行こうとした時、近くにいた少年と目が合った。
持っている絵本をジッと見ていたので、もしかしたら読みたいのかも知れない。
ならば今回は諦めよう。そう決心して本を棚に戻すと、母親らしき女性が少年に声をかけた。

「面白そうなの、あった?」
「ない!」

笑顔でそう言うと、二人は図書館を後にした。
棚に戻された本が、なんとなく気まずそうにしている気がした。

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