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忙しい人のための『洋書和訳&超訳』 シリーズ⑨ 原題:『The Hidden Brain』 by Shankar Vedantam

おはようございます!今日は、忙しい人のための『洋書和訳&超訳』シリーズ⑨ということでnoteを書いていきたいと思います!
なお、今回は<心理学>の中でも脳と無意識をテーマに扱っている洋書をチョイスしました!内容は有益で面白いので、是非最後まで読んで楽しんでいただけたら幸いです!どうぞよろしくお願いいたします😊

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原題:The Hidden Brain: How Our Unconscious Minds Elect Presidents, Control Markets, Wage Wars, and Save Our Lives
by Shankar Vedantam
(直訳:隠れた脳:私たちの無意識の心はどのように大統領を選び、市場をコントロールし、戦争を起こし、私たちの命を救うのか?/シャンカル・ヴェダンタム)

①イントロダクション:無意識の力をコントロールしよう!

私たちは知識とそれに基づく意識に従って行動していると信じています。しかし、多くの場合、私たちは無意識の自動操縦によって支配されています。私たちは無意識の認知メカニズムによってスムーズに世界を航行できるようになりましたが、これには副作用もあるのです。この書籍では、著者が「隠れた脳」と呼ぶ無意識の偏見とエラーについて学びます。たとえば、万引き犯が必ずしも悪い人であるとは限らないこと、若い子供たちに人種差別反対を教える方法、刑事司法制度が無意識の偏見の影響を考慮すべき理由などが述べられています。

② 「隠れた脳」が影響を及ぼす証拠

最近では、科学的な研究により、私たちの無意識の心が私たちの行動に大きな影響を与えていることが分かっています。たとえば、人々は普段は意識していない周辺にある画像によっても影響を受けることがわかっています。ある研究者は、オフィスのドリンクステーションで行われた実験(周囲に人はおらず、支払いの金額は自分で決められる状況にしているそうです)で、周囲に目の画像を置くことによって、花ばかりの画像にした時と比べるとユーザーの支払いが3倍になったことがわかりました。また、オランダのレストランでの調査では、ウェイトレスが注文を端的に繰り返すことで、チップの額が平均して140%増加することがわかりました。私たちは何度も繰り返されると他人との同調を感じ、他人と同調を感じるとポジティブな反応を示すことがわかったのです。このように、私たちが気づかないでいる「隠れた脳」が私たちの行動を形作っているのです。

③ 「隠れた脳」が私たちの社会行動の基盤である

私たちは日常生活の中で隠れた脳についてほとんど気づいていませんが、それは私たちの認知機能の不具合以上のものなのです。実際には、私たちの無意識が私たちの世界を案内し、社会的な相互作用を調整しているのです。また、無意識の認知メカニズムの正確な理解はまだありませんが、それらを制御していると考えられる脳の部位に影響を与える疾患に苦しむ患者の観察から、その機能を理解する手がかりが得られています。たとえば、脳の前頭葉と側頭葉に障害がある前頭側頭型認知症や統合失調症の患者が示す行動変化は、「隠れた脳」が私たちの社会行動の基盤であることを示唆しています。

④ 「隠れた脳」は、子供たちに無意識の人種的偏見を形成する

私たちは顔を認識するための能力を持っていて、自分と同じ民族の顔を認識する能力を身につけます。しかし、このような無意識の進化は、異なる民族の顔を識別する能力を低下させてしまうのです。これは無意識に植え付けられた人種差別を生み出し、「隠れた脳」の無意識のバイアスが影響しているのです。カナダの心理学者フランシス・アバウドは、モントリオールで行われた未就学児を対象とした研究で、80人の白人の子供たちに白人または黒人の写真に対して「意地悪」「汚い」「良い」「親切」などの形容詞を割り当てるように指示しました。その結果、70%の子供たちは白人に対しては肯定的な形容詞を、黒人に対しては否定的な形容詞を割り当て関連づける傾向がありました。これをアバウド博士は、子供たちが白人の世界で育っていることが原因であると考えています。白人が主流であるテレビ番組や絵本、周囲の環境に触れることで、無意識に白人は良く、黒人は異なるという連想をしてしまっているのです。研究によると、このような「隠れた脳」による無意識の人種差別を減らすには、親が明示的に人種的寛容を育むように努めることが重要なのです。

⑤ 無意識の偏見が政治選挙に与える影響

私たちは誰もが人種差別主義者ではないと思っていますが、大人も子供と同じく、周りの世界での連想パターンに基づいて無意識の人種的偏見を持つことがわかっています。実際に、数百万人に対して実施した潜在連合テスト(英: Implicit Association Test、略称:IAT)(※注1)の結果から、無意識の偏見が政治選挙に影響を与えていることが明らかになっています。また、白人が福祉制度を享受することが明らかであっても、黒人が福祉制度を受けることを知ると、白人は福祉に対して敵対的な見方をすることが分かっています。また、バラク・オバマがより黒い肌の色であった場合、またはより明確に人種問題について言及した場合、アメリカ合衆国の初の黒人大統領には選ばれていなかった可能性が高いと専門家らは指摘しています。

※注1 IATとは、Implicit Association Testの略称であり、日本語では潜在連合テストと呼ばれている。課題を実施している際の反応時間を測定することで、潜在的な態度を測定する手法。この手法を用いて、実験参加者の潜在的態度を計測することが可能とされている。
<参考>
https://neu-brains.co.jp/glossary/a/047.html

⑥ 「隠れた脳が」刑事司法制度に人種格差を生む

アメリカの刑事司法制度において、人種的な偏見が影響を与えていることは明らかであるといえるかもしれません。これに対して、判決に影響を与えた人種差別的なバイアスを研究するため、スタンフォード大学のジェニファー・エバーハート教授らは、死刑を課すに十分な重罪の犯罪事件600件以上を分析しました。その中から、白人を殺害した罪で有罪判決を受けた黒人の写真をボランティアに見せ、その写真に写っている人物が「ステレオタイプなアフリカ人」に見えるかどうかを判断してもらいました。この研究は、人種的にステレオタイプな「黒人らしい特徴」を持つ被告は、より「白人らしい特徴」を持つ被告に比べ、死刑判決を受ける可能性が2倍以上高いことを示しました。この研究は、「隠れた脳」が刑事司法制度の人種的格差を生み出すというメッセージを伝えてます。

⑦ 無意識の偏見が女性の立場を弱くしている

女性は男性同僚よりもキャリアを評価されていないと感じることが多く、研究によると、フルタイムで働く女性の給与は男性の労働者の収入1ドルに対して77セントであることが分かっています。しかし、給与は通常は不透明であるため、個人的な経験が抽象的すぎるのもあって性差別の根拠にするには難しいことが多いのです。しかし、リリー・レッドベターの事例のように、不当な差別が発覚した場合、不当な差別を受けた被害者が公正な審議を受けるための法的措置をとることができます。また、無意識の偏見がリーダーシップについての先入観などを引き起こすことがあるため、職場で女性についてのイメージを変えるためには、無意識の偏見について話し合う必要があります。

⑧ 自爆テロは狂信ではなく「隠れた脳」と集団規範に突き動かされている

「隠れた脳の」適合性傾向によって、テロリストの心理も明らかにされています。大多数の人は、自爆テロの動機はただ一つ、宗教的狂信であると考えますが、テロリストの研究者は、自爆テロを理解する上で、宗教的狂信は十分な説明にはならないことを発見しました。実際、レバノンの自爆テロの3分の2は、世俗的な組織によって組織されたものだったのです。では、何がテロリストを動かすのでしょうか。実は、彼らは宗教的な狂信というよりも、自分たちが社会集団の重要な一部であるとみなされたいという欲求に突き動かされていることがわかったのです。このように、テロリストも私たちと同じように、「隠れた脳」の無意識の力に影響されているのです

⑨最終的なまとめ

私たちの「隠れた脳」による無意識の力は、人間関係を促進し、社会行動を調整するのに役立っています。しかし、多くの人々は、バイアスやエラーに影響されることに気づいていません。私たちは、この「隠れた脳」について学ぶことで、無意識のバイアスを認識し、より効果的な社会・経済制度の設計に役立てることができるのです。

本日のnoteの内容は以上になります!ここまでお読みいただきありがとうございました🥳✨

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