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切り取る、とじこめる、すくう:光ー呼吸 時をすくう5人

こんばんは。
昨日に続きはじめての連続更新。
というのも、アウトプット大事なんだな~と最近気づいたのと、継続できない性格も改善したいなと思ったので。笑

さて、話は変わって。
少し前に美術館ファン(?)からするとかなり衝撃…というか悲しいニュースがあった。
東京・品川にある原美術館の閉館だ。おとといの成人の日をもって、41年の歴史に幕を閉じた。

箱根駅伝の中継で聞いたことがある新八ツ山橋を左にみながら、
御殿山の高台に向かって坂を登ると、閑静な住宅街の中にそれはある。

白を基調とした本館にオブジェが並ぶ入口と中庭。決して広くはないけれど洗練されていておしゃれ。行くたびに、かっこいいなあと思っていた。

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春先の自粛もあり、予定より閉館は後ろ倒しに。
しかし、最後の展覧会は11月ごろから土日の空き予約がないほどの争奪戦で、行けるタイミングがクリスマスしかなかった
(密を避けるため、原美術館ではHPでの日時完全予約制をとっていた)。

光ー呼吸 時をすくう5人
会期:2020年9月19日~2021年1月11日
会場:原美術館
写真撮影:中庭を含め館内の撮影不可

ただでさえあっという間に流れていく日常。
だが、2020年はたくさんの人と出会うことはおろか、出来事や記憶をつむぐ機会、空間もはるかに少ないまま終わった。

ならば、いつもは見過ごしてしまう何気ない風景やモノ・ことに、
目を向ければいいのかもしれないー
この展覧会はまさに、日常がちりばめられていた。

参加した5人のアーティストは
今井智己、佐藤時啓、城戸保、佐藤雅晴、リー・キット。展示方法は写真、映像、インスタレーションなどさまざまだった。

以下、特に印象に残った作品を。

佐藤雅晴《東京尾行》
実際に撮影した映像の一部に、実物を忠実になぞるイラストを織り交ぜた9つの映像作品。
東京で撮影したというそれは、国会議事堂前の交差点から工事現場、犬を散歩する人、どこかの厨房からその場にいる人の姿まで。
その時にしか切り取れない瞬間をとじこめた作品。

ちなみに作品は映像だけでなく、自動演奏ピアノも設置されており、音までなぞるってすごい発想…と思ってしまった。
ピアノはしっとり系の切なげな曲で思わず立ち止まって全部聴いた(あとで調べたらドビュッシーの『月の光』という曲だった)。
作者は2019年春に45歳の若さで逝去。もう新しいものが見れないのは惜しい。

東京尾行、と検索をかけたら作者ご本人様のYouTubeチャンネルで作品が公開されていた。
ちなみに映像もBGMも会場でかかっていたものと同じなのでぜひ。
(ここに載せようか迷ったが、記憶にとどめてほしいからこそ撮影不可、という決まりもあったから、それはなんか違うな…と思い掲載はやめた。)

今井智己《Semicircle Law》
2011年3月11日に発生した東日本大震災。未曾有という言葉が飛び交うほどの大きな災害から今年で10年。
この作品は、福島第一原発から30km圏内にあるいくつかの山頂から、原発の方角に見える景色を24枚の写真と映像に収めたもの。
展示室では、すべての作品が原発の方角に展示されていた。

映像の中には原美術館の風景も。
震災から年月を感じつつも、それは私たちの歴史の一部として確実に刻まれたものであり、今にすべてつながっていると感じさせられた。

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そのほかにも目に見えている景色をそのまま収めたスナップや、美術館のコレクション作品などが展示されていた。
また、原美術館の館内には常設で展示されている作品やオブジェが多くあるので、それも最後に見てきた。

中庭を囲むように弧を描く白い洋風の本館、カフェのテラス席にもなっている中庭、
所狭しとグッズが並ぶショップ、ちりばめられた常設のオブジェ、ピンクのダイヤル電話、1階奥の展示室から見える紅葉。

なんかもう全部最後なのか…と思うと寂しかったけれど、お疲れさまでしたの一言に尽きる(誰やねん感すごいけど)。

今後、原美術館の活動は今まで別館だった群馬・渋川のハラミュージックアークに拠点が一本化し、新たなスタートを切るという。

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この展覧会を見て一番感じたのは
時間は取り戻せないけれど、記録することや心に留めておくことはできるということ。もちろん、時間も大切。

無意識のうちにこぼれた瞬間を、作品におこすことで掬う。
視線を向けられることのなかった光景を、活かすために救う。

掬う、救う…
「時をすくう」という表現に、いいことばだ。としみじみ。

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