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気付いたら家族、みたいな感じの父娘 その2

今時それほど特殊でもないけれども、少しだけ、世の中の定型とは違う「再婚した父と家族になる」という経験をしたことについて、書き残しておきたいと思います。

1番良い盛りつけのお皿はお父さんに

「お互いに結婚失敗してるし、結婚することはないから」

確かに母がそう言っていたのを覚えています。
それがなんで再婚することになったのか、経緯はあまり覚えていません。

ただ、弓道部に入り週3で塾にも通う高校生の私と私立の中学に通う弟を1人で養う母の家計は火の車状態。ストレスからさまざまな体調不良に見舞われるところも見てきました。

結婚したいと思ってる、と言われた時に、これで母が少しでも楽になるなら、私も大人になるまでの何年かその結婚に寄り添ってもいいかなと思いました。

「2人の教育費は私が払う。だけどこれからは生活費はお父さんが払ってくれるって。」

母は父に金銭的負担をかけるのが申し訳ないようで、お金についてそんなふうに話していました。

思えばよくこんなにお金のかかりそうな子ども2人のいる母と結婚したいと思ったものです。

ありがたいことなんだ、応援しなくちゃと自分に言い聞かせました。

ただ、それがどういうことなのか、よくわかっていなかったとは思います。

結婚すると何が起きるのか。

住む家も、苗字も、変わります。

慣れ親しんだ家族以外の人と一緒に暮らすことになります。

親戚が増えます。

血の繋がりのない人をお父さんと呼ぶことになります。

それがどういうことなのか。

「1番良い盛りつけのお皿はお父さんにあげてね」

一緒に暮らし始めて最初に驚いたのはそんな日常でのプライオリティの変化でした。

それまでは私たち子どもが好きそうなものが作られていたのに、父が好きなものを中心とした献立に食卓が変わりました。

豪華になったということでもあるのだけど、薬味を使った上品な味付けのものや、季節のフルーツをカットしたデザートなどが現れるようになりました。

盛りつけが丁寧になり、よく盛れた器を父の前に最初に持って行くことを指示されます。

帰宅した父を玄関まで「おかえりなさい」と出迎えます。

むしろ血のつながりがあったら、ここまでのことをする必要はないのかもしれません。

でも、生活費を出してもらってるから、その程度のことなら受け入れなければと思いました。

その程度のことなら。

生理的に無理、を乗り越える

いくら何回も旅行に行っていたとはいえ、私にとっては父は他人です。少し太っただらしない身体に、薄くなり始めた頭髪で、面白いことはちっとも話さない、正直に言うと、当初、生理的に無理、と思うようなおじさんでした。

もしこれを父が読むことになったら申し訳ないと思うけれど、女子高生の私は特に男性の、男性的な部分に潔癖で、そうとしか思えなかったんだから仕方ないのです。

そんなわけで、一緒に暮らすうえで、これは耐えられないかもしれないと思うこともたくさんありました。

父が入った後のトイレにも浴室にもすぐ入りたくない(なのにトイレで新聞を読むから朝、トイレにこもりきりになる)。

お風呂に入った後にパンツ一丁でリビングを歩き回るのに目を覆いたくなる(弟がマネするようになって余計にイライラ)。

洗濯物を干すのに自分の下着と父のパンツが触れ合うのは耐えられない(間に必ずタオルを挟んでました)。

気持ち悪い。無理。

この生理的に無理、を乗り越えることにはとても時間がかかりました。1年とかその程度で済む話ではありません。

きっと父は父で、金銭的な負担はもちろんのこと、初めて子どもが家にいる環境で暮らすことへのストレスを抱えていたはずです。

母はそれまで激務だった仕事が急に楽になるわけではなく、そこに「ちゃんとした結婚生活」が求められて、物理的にも精神的にも苦しかっただろうと思います。

結婚したら、めでたしめでたしなんて、昔のプリンセスストーリーは本当に安易でした。

この結婚はちゃんと続くんだろうか。

私は耐えられるんだろうか。

私たちは本当の意味で家族になれるんだろうか。

身勝手な不安の全てを誰かに話すこともできず、ただ、もやもやと時は過ぎていきました。

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