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読書日記#11 埴輪に異世界転生に下北沢に。思いがけない出逢いたち。

5月◎日

最近の夜更かしがたたって、朝はとにかく眠くて起きられず予想より1時間後ろ倒しで出発。

世はゴールデンウィーク真っ只中。「そうだ、古墳へ行こう」と思い立ったから。

どこかに出かけたい。でも誰かを誘うにも、家族がいる人ばかり。そうでない人もきっと出かけたいと思う人は普通既に予定を入れている。
1人で出かけてもいいけど、人が多いと疲れるだけだ。
そんな気持ちで気付けばゴールデンウィークの1/3が過ぎていた。

そこで思いついたのが古墳。ゴールデンウィークにわざわざ古墳に行く人はそう多くはないはず。古墳のあるエリアにはきっと緑があるはずだし、古墳時代の悠久の時を同時に感じられるんだから、私にとってこんなうってつけの場所はなかった。

実は前から古墳に興味があってちびちびと関連書籍を取り寄せて読んでいた。

特にこの「都心から行ける日帰り古墳」は、ライターの人がガイドさんに教えてもらうかたちで、都心から日帰りで行ける古墳がテーマパークかのような熱量でたくさんの写真と共に綴られていて良質な本
ただこれだけだと電車がないと行けないのかがわからず、友人にアクセスの良い穴場な古墳も聞いてあった。そうしたにわか知識を結集して、ひとまず熊野神社古墳という府中にある古墳に行くことにする。

行きの電車でも眠くてほとんど寝ていたけど、少しだけ埴輪の本を読んで予習する。

冒頭ちょっぴりしか読めなかったけど、埴輪の種類とつくられた年代を表にまとめたものが出ていて、私たちが埴輪と聞いてイメージする人物型の古墳は5世紀以降、割と後半に登場することを知る。そしてそうした埴輪たちは埋められた人の権威を対外的に訴えるため古墳の外側に配置されていたのだという。私はてっきり、豪族のお世話をする者として一緒に墓に入れられたのかと思っていたので、勘違いを正すことができてよかった。当時の人が古墳をつくり、そして日々埴輪や古墳を眺めることをどう受け止めていたのか想像すると興味深い。

そしてこれから行く古墳は飛鳥時代、7世紀中頃のもので、人物埴輪のカケラも出土しているらしい。古墳をつくる文化の盛衰の中でかなり後ろの方だ。

実は古墳について知ろうと思って最初に読みはじめたのは「縄文人の死生観」という、初心者向けとして定評のある角川ソフィア文庫の本だった。Kindle Unlimitedで無料だったから。
これは縄文時代の貝塚で、人々の埋葬の慣習などを調査によって明らかにしていく軌跡を説明する、古墳よりも前の頃のものだった。そう、古墳の存在した時代や埴輪と土偶の違いもよくわかっていなかった。

でもこの本はこの本で太古の昔に生きた人々の死生観が、私たちとどのように違っているのか、はたまた近しいのかを考えさせられる本ですごくいい。なぜ考古学や発掘に人生をささげることになったのか、筆者の人生の転機に関することもかいてあって、まだ読みかけだけどちゃんと最後まで読み切りたいと思っている。

私ももともとの専攻の社会学から入り、メディア論や神話学に興味が広がり、最近は人類学、考古学の視点が面白い。知識のインプットは全然追いついていないけれど。

駅から古墳までは徒歩8分。古墳がある以外は生活感しかないのっぺりしつつものどかな道を歩いてたどりつく。この古墳、整備されたのは2000年代でまだピカピカにも見える石が敷き詰められていて、古さはそれほど感じられない。けれど神社に守られている感じが町の宝物感があって良かった。
そりゃあそうなのだけど、ここにいたのがどんな人だったのか、全然わかっていなくて、古墳というのはだいたいそんな感じでみんなミステリアス。でも確実にそこで亡くなった人とその死を悼む人々がいたんだと思うと不思議な気持ちになる。

そういう意味ではもっと古墳を感じられる大きいところにも行ってみたいなと思った。中に入ったり、のぼったり、発掘されたものをもっと一気にみたい。できればガイドも受けたい。

古墳見学後、せっかくならこのエリアにある素敵なカフェに行こうと、府中本町まで出た。全然知らなかったけれど、府中で最も有名な大國魂神社があり、そのすぐ近くにある、和洋折衷なしつらえが趣深いカフェでランチ。

気楽に読める本で今の状況にしっくりくる本を、と思って、1人できている私に似つかわしい、大好きなゲーム実況者さんの1人鉄塔さん(小説家としては賽助さん)のエッセイ「今日もぼっちです。」を読む。

なんというか、身につまされる。仲良くなったと思ったら勘違いだったことにショックを受けつつも、自分自身もその友達の影響力をあてにしていて、友達との向き合い方がわからなかった少年時代の賽助さん。よりにもよって演劇をしていたせいで友達の量が人の良し悪しを決める世界で苦しみ、ぼっちとしての陰影を増していく大学時代以降の賽助さん。私とは違うけど、私自身が感じてきた孤独も思い起こされて。

特にこの日の府中本町はお祭りで、縁日を楽しむ家族でごった返していて、立ち寄ったおしゃれカフェもなんだか人のおうちのごはんを食べに来ている気分というか、自分が余所者だという感覚が強かった。カフェっていうのは街を象徴するメディアだと思っているので、街に受け入れられているかどうかというのが、空気として感じられてしまう。

家の最寄りに帰ってきた昼下がり。ここが自分の街なんだと感じたくて、地元のカフェに入る。コーヒーはもう飲んだので自家製ジンジャエールを頼む。

ブックカフェなので、ぱらぱらと展示される本を読む。

HONZのオススメ本紹介の本を見て、また読みたい本が増える。困る。

そしてやっぱりこの街の空気は落ち着く。ほどよい落ち着き。1人が悪目立ちせず、古いものと新しいものが交わる場所。手の届くところに必要なものがたいたいある安心感。

他の街に住むことを考えるたびに、でもこの居心地の良さは代え難いなーと思う。

5月★日

朝起きて今日はシェアオフィスにでも行こうかなと一瞬思うものの、もう少しお出かけしたいなという欲が出る。
とはいえ、家を出る気になれなくてお昼過ぎまで布団の中でもぞもぞ。

そうだ。友人が下北沢のイベントでコーヒーを販売してると言ってたなーと思い、コーヒーのためなら家を出られる私はなんとか支度して出発。

行きはAudibleでわくわく重すぎない話を、と検索して、なろう系ライトノベルで評価の高い「リアデイルの大地にて」を聴く。

本好きの下剋上もそうだけど、戦闘要素や恋愛要素はそこそこに主人公が前世の知識とチートスキルを活かして、周りをハッピーにしながら自己実現していく話はすごく好き。

紆余曲折ありすぎるのは(特に戦闘シーンが多いのは)、特にこういう本を選んでいるときの私の気持ちがついていけない。その点、本書は苦労するシーンがほぼなくとてもほのぼのしていて、とても癒される。我ながら、自分のニーズに合う本を見つけてくるのうまいなと思う。

そうして電車に揺られ、下北沢で友人のお店を訪問。単にカフェだけでなく幅広い人の生活を豊かにするような取り組みを紹介していただき、行かないと聞けないことだったし、活気づいた下北沢の街も見れて大満足。

せっかく下北沢に行くならばと、下北沢に住んでいるもう1人の友人にごはんでもどう?と私にしては勇気を出して連絡してみたところ、ごはんに行くことに。

友人を待つ間、下北沢を散歩しようと思ったのだけど、せっかく下北沢にきたならB&Bを覗こうと思ったのが、よくなかった
一棚一棚にすばらしいキュレーションが発揮されていて、それでもしばらくは、これはAmazonでも買えるから保留にしよう、とみるだけにとどめていたのに、電子書籍がなく、しかも既にAmazonでは新刊販売してないものを見つけてからタガが外れる。

その罪深き本がこの「動物絵本をめぐる冒険」。
日頃から動物とそれをめぐるコンテンツの在り方には注目して、それをテーマにした図版の豊富な本、というのがもうマニアックでツボすぎて。しかもこの読書日記執筆時点でAmazonでは古本のみで23,150円もする!
これはもう今ここで買わないといつか出会えなくなると思った次第。

その本の近くに置いてあった「博物館の世界」は、学芸員の立場から博物館の在り方の可能性を語る本で、博物館は単に、収集品を展示するだけの場所ではない!ではどういう場所なのか?を問題提起をする序章がそうなんだよね!と頷けることが多すぎて、Kindleにもなってないことを確認して購入。

あとはこちら「羊の物語」。かねてより、文学に羊が足りない問題を提起していた私には必読かつAmazonですぐに見つからない入手困難さに今しかないと購入。表紙の雰囲気からも伝わると思うけど、本全体を通して、装飾性の非常に高い本で、所有欲も存分にそそられる。

書店で購入したわけではないけれど、この「仕事に『好き』を混ぜていく。」はもとからKindleほしいものリストに入れていたのだけど、実物の序章を読んで、今の私の境遇にピッタリと思って、Amazonで調べたらKindleで期間限定セール中、半額だったので買ってしまった。

もうここまでにしよう、と踏みとどまろうとした私の決意を軽く崩してきたのがジブリ。この「禅とジブリ」は、鈴木プロデューサーが禅とジブリについていろいろな方と対談していく内容で、私が大好きすぎるコンテンツと禅の関係に着目した本なんて、永久保存版すぎる、と思って我慢できなかった。実はKindleでも販売していたけれど、こちらも白黒ながら禅やジブリに関する図版が豊富なのが、購入の決め手に。

というわけで友達を待つ1時間超の間に5冊も購入してしまった。ただ、この3倍くらい欲しい本はあったけれど随分我慢はしたのだ。購入を断念した本はすべてAmazoznほしい本リスト行き。こんなところにいたら、お金使いすぎてダメになる。B&Bおそるべし。

B&Bは本当に棚の作り方が良い意味で常軌を逸している
そして今日気付いて驚いたのは到底手が届かない高いところでもこの写真のようにしっかり表紙を見せたい本を展示しているところ。これは少し遠くからの視点を意識しているのか、それともここまで見上げてくれる前提なのか。ただ気になるから上の方を携帯で撮影して、何が並んでいるのかを確認してしまった。とにかく本好きな人に本を魅せることにかけて、ここを上回る本屋はないのではと思う。

友人と合流後は、進化する下北沢にできた新しいショップなどを紹介していただき、九州料理を楽しめる小料理屋さんにいく。2人でごはんに行ったのは初めてだったけれど、業界が近いことや仕事への想いなど、近い部分もあって話すのがすごく楽しい。彼女が合わせてくれているだけじゃないことを祈る。

気付けば思ったよりゴールデンウィークらしい1日を過ごすことができた。

今日買ってしまった本以外にもゴールデンウィークはKindleでもハードでも何冊か本を買ってしまった。
興味の幅が浅く広くすぎる(しかもやりきってから次にいかずに食指動くままに本を買いあさる)のもこの習慣が助長される一因があるのかも。
インプットできる量に対して完全にキャパオーバーと思うけれど反省する気はないので改善できる自信はない。

ああでもたくさん読みたい本と思いがけず出逢えてなんて良い休日。

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