「注意報・警報の発表基準の暫定的な引き下げ」について

 主にインターネットで話題になったものを取り上げつつ、エンターテインメントなど幅広い内容を扱っている「ねとらぼ」で、こんな記事が掲載されていました。

 梅雨期の集中豪雨・ゲリラ豪雨・台風・大雪など、災害の恐れがある天気・気象に関する記事は各種ニュースサイトでよく見かけますが、注意報・警報の発表基準の引き下げが記事になるのは珍しく感じます。

 この「注意報・警報の発表基準の暫定的な引き下げ」ですが、実は年に数回行われることがあります。

そもそも、特別警報・警報・注意報とは

 特別警報・警報・注意報は『大雨や暴風などによって発生する災害の防止・軽減』を目的として、市区町村ごとに発表されます。この情報などを加味して各自治体は避難準備命令・勧告・指示を発表しますし、関係機関(河川やダムの管理局など)もアクションを起こす訳です。

 また、発表には降水量・降雪量・風速などの基準があり、各市区町村の過去の災害との関係を調査した上で、
 ・災害の発生するおそれのある値 → 注意報
 ・重大な災害の発生するおそれのある値 → 警報
と設定されています。つまり、「災害発生に繋がる恐れがあるか否か?」が重要になってきます。
 例えば、東京都の基準値は下記サイトにまとめられています。

 基本的には実測値では無く、これらの値を満たすような気象現象が概ね3~6時間先に予想される時に発表されます。まあ観測してから発表しても遅いですからね…。
 なお、特別警報「数十年に一度という極めて希で異常な現象」の発生が予想される場合に発表されます。「50年に一度」というフレーズでよく使われていますね。

「注意報・警報の発表基準の暫定的な引き下げ」が行われるケース

 「災害発生に繋がる恐れがあるか否か?」を元に発表基準が定められる特別警報・警報・注意報。では、これらの基準が引き下げられるのはどんな時でしょうか。
 大まかに言うと、「従来の発表基準に満たない場合でも、災害発生の恐れがある時」です。冒頭の記事でも取り上げられている今回のケースでは、気象庁は下記のように述べています。

 令和元年台風第19号による大雨により、多くの中小河川で堤防が決壊するなど、甚大な被害が発生しました。これらの河川では、河川施設が復旧するまでの間、比較的少ない降雨でも災害が発生する可能性があります。
 このため、気象台が発表する洪水警報・注意報の発表基準(流域雨量指数基準)について、警戒を高めるため、通常基準より引き下げた暫定基準を設けて運用します。

 そして「年に数回行われることがある」と書きましたが、最近では下記の事例があります。主に大地震発生後に、大雨警報・注意報の基準が引き下げられることが多いです。これは大雨警報・注意報の中に「土砂災害」に対する警戒も含まれるためです。
 例えば、令和元年6月18日に発生した山形県沖の地震では、直後より下記の通り暫定運用を行っています。

令和元年6月18日22時22分頃の山形県沖の地震により、新潟県で最大震度6強、山形県で最大震度6弱を観測しました。
新潟県及び山形県の揺れの大きかった地域では、地盤が脆弱になっている可能性が高いため、雨による土砂災害の危険性が通常より高まっていると考えられます。
このため、震度6強を観測した新潟県村上市及び震度6弱を観測した山形県鶴岡市については、通常よりも警戒を高めるため、当分の間、大雨警報・注意報の発表基準(土壌雨量指数基準)を、通常基準より引き下げた暫定基準を設けて運用します。

 同様の暫定運用は、最近起きた下記の地震でも行われています。

 ・平成31年1月3日 熊本県熊本地方の地震
 ・平成30年9月6日 北海道胆振地方中東部の地震
 ・平成30年6月18日 大阪府北部の地震
 ・平成30年5月25日 長野県北部の地震
 ・平成30年4月9日 島根県西部の地震

※リンク先は報道資料のページです。
※なお、大雨警報・注意報の発表基準のうち「土壌雨量指数」の基準が引き下げられています。これは「降った雨が土壌中に水分量としてどれだけ溜まっているか」を数値化したものです。

 激しい自然災害は地域の耐災害性を弱くさせ、二次災害の発生も誘発させます。本当に恐ろしいものです。

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 今週末は河川の決壊が相次いだ地域でも広い範囲で雨の予想が並んでいます。山間部から平野まで、流域に降った雨は少なからず川に流れ込む訳ですから、特に決壊した河川周辺での浸水の拡大や復旧への影響が心配です。

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※以下、本文の引用元&参考元のサイトです。いずれも2019/10/18(金)23:00~24:15時点の内容を参照しました。本文内のリンクも同様です。


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