「狩野川台風 イメージわかず」という記事を読んで:災害の脅威をどう伝えるか

 NHKのWebニュースでこんな記事がありました。内容を引用しつつ、自分が思ったこと、考えたことを書いていこうと思います。

「狩野川台風と言われても…」59%

アンケートでは、台風19号の上陸の前日、気象庁が記者会見で、静岡や関東で1200人以上が犠牲となった「狩野川台風」に匹敵すると危機感を伝えたことについて聞きました。
この表現を聞いた人のうち59%の人が「狩野川台風と言われてもイメージがわかなかった」と答えました。

 「狩野川台風」は昭和33年=1958年に襲来しました。61年前の台風ですから当時を知る方は多数派では無いでしょうし、伊勢湾台風や室戸台風に比べると知名度も低いと思われます。加えて戦後十数年の時代の話なので「建物の強度やインフラの整備状況が今とは違うのでは?」と考えた人もいるのではないでしょうか?また「1200名以上の犠牲」という数字が大きすぎて、逆にイメージが湧かなかったのかもしれません。

「停電が不安」68% 台風15号の被害をイメージか

台風19号のイメージを複数回答で聞いたところ、
▽「停電が不安だった」が68%と最も多く、
▽次いで「雨より暴風に注意が向いていた」が29%でした。
▽また、「そもそも大規模な河川の氾濫が起きるとは考えてもいなかった」が19%で、福島と長野ではそれぞれ30%余りに上りました。

 これは小見出しの通りだと思います。折れ曲がった電柱・鉄塔による停電とその長期化や、他にもゴルフ場の柱が倒れた様子が報道されていましたので…
 記事末尾の専門家のコメントにも「多くの人が停電や『風台風』の被害をイメージし、結果として河川の氾濫や土砂災害への注意が弱くなると言う課題が残った」とありました。
 じゃあ気象庁は大雨に対する警戒も事前に呼び掛けていたのか?という話になりますが、それが「狩野川台風に匹敵」という表現に繋がります。報道発表資料から引用してみます。

台風本体の非常に発達した雨雲がかかるため、広い範囲で記録的な大雨となる見込みです。状況によっては、大雨特別警報を発表する可能性があります。伊豆に加えて関東地方でも土砂災害が多発し、河川の氾濫が相次いだ、昭和33年の狩野川(かのがわ)台風に匹敵する記録的な大雨となるおそれもあります。

 大雨の強さ・量をどう表現するのが良いか?については、NHKが別の大雨の報道(台風19号の後に接近・通過した低気圧)において「半日で1ヶ月分の雨」という分かりやすい表現を使っていました。個人的には、このような伝え方なら定量的かつイメージが湧きやすく参考になるかと思います。

※大雨の表現については、もしよろしければこちらの投稿をご覧いただければと思います…(結局は上のニュース記事に辿り着きます)

 一方、呼び掛けによる効果もあったようです。

「初めて備えをした」台風15号で防災意識も

一方、今回の台風19号の前には、多くの人の防災意識が高まっていたという結果も出ています。アンケートに対し、81%の人が事前に何らかの備えをしたと答え、このうち40%は「今回が初めてだった」と答えました。事前に備えをした理由を複数回答で尋ねると、
「放送で呼びかけていたから」が53%と最も多く、
▽「台風15号による千葉県の停電を思い出した」と答えた人も31%に上りました。

 ニュース記事の見出しはネガティブ気味ですが、事前の呼び掛けが防災意識の高まりに寄与していたことも覗えます。

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 個人的には、河川氾濫への警戒を促す情報として、河川の水位情報がもっと活用出来ないかなあ?と考えています。国土交通省が「川の防災情報」というサイトを運用していて、河川の各観測所ごとの水位変化が10分 or 1時間単位で分かります。これによって「どの位のペースで水位が上がっているのか」が具体的に分かるので、氾濫の危険度の高まりをよりリアルに感じられるかと思います。加えて、定点カメラによる川の様子も確認できます。サイトの作り上、最寄りの観測所のページまで辿り着くのに少し苦労するかもしれませんが…

 こんな感じ↓でビジュアル的に把握できます。

 また、近年は豪雨や氾濫の様子を映像や写真でTwitterなどにアップする人も増えてきました。映像の中には撮影者や近隣の住民の会話が一緒に入っていて、非常に生々しいものもあります。このような映像を見て災害の脅威をリアルに感じた人もいるのではないでしょうか。「災害の脅威を今後に伝える」という観点では、これらのデータをアーカイブ化して保存・活用するのも良いかもしれません。写真や映像はイメージそのものですし、今回のように「イメージが湧かなかった」ことを問題とするなら有効な解決策になり得るかと思います。

 季節はこれから冬に向かっていきます。今年は大雪による犠牲者が出ないことを祈ります…。

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