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消えたポムの樹はいかにして出現するか

 消えたと思っていたポムの樹が県をまたいで出現した。本当の事を言えば神戸在住時代よく通っていたポムが潰れ、愛知に引越したら近所にポムが開店したというただそれだけの話である。





 神戸を離れてしばらく経つ。もう5年ほどになるだろうか、転職してから全国転勤になり、縁もゆかりもない土地、愛知に辿り着いた。愛知県民には失礼な話だが、この土地には何もない。都会かと思いきやまあまあの田舎で、うるさいバイクが大通りを走り抜ける。


 神戸を離れると同時に何もかもを捨ててきてしまった。実家とも疎遠になったし友達はほとんどが関西に残った。彼氏も捨ててきたし前職の仲間は今も変わらずそこで働いている。何もない街、愛知で私は何を手に入れたのか?

 
 新しい人々との出会い。新しい仕事。同僚と食べる一風堂。知らない喫茶店。モーニングに茶碗蒸しまで付いてくる。一方通行な恋愛。朝活と称した個人事業主らとの名刺交換。時間の無駄。ラブホテル街に刺す一筋の光の中で眠る猫。幸せの象徴。幸せの象徴。





 消えたポムは新天地に突然発生するのか、地中をもぐって湧いて出るのか、はたまた全く新しいポムに生まれ変わるのか。生まれ変わったポムは何を手に入れられるのだろうか。

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