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障害のある親への育児支援


もしあなたに今、大切な家族がいるとしたら
あなたは家族を守れますか?

障害のある人の育児と聞くと
「障害があるのに子どもを作るなんて!」
という考えをお持ちの方や、自分には関係ないと考える方もおられるのでは無いでしょうか?

しかし家庭を築いたそのあとに
病や事故などで障害を負うことをあなたは考えたことがありますか?


私たちウィルチェアファミリーでは実際に、
妊娠中に夫が事故で障害をもった方、
出産時の事故で障害を持った方、
子育て真っ只中に事故や病気にかかり障害を持った方など
様々な方々に出会いました。

ではそういった方々がどうやって育児をすることになるのか
皆さんはご存知でしょうか?

急激な環境の変化に右も左も分からぬまま、
障害を持った体で途方に暮れ、
それでも子どもの世話は待ったなしです。
頼れる家族がいる方はまだ何とかなるでしょう。
しかし皆がそうではありません。

そして、これはいつ誰の身に起こるかは分かりません。
そんな時あなたならどうしますか?

障害のある親の分の洗濯や掃除、食事の準備などが
ホームヘルパーの利用により賄えることはご存知の方も多いことでしょう。
しかし、一般的なホームヘルプサービスでは家族の分は制度の対象外となります。
本来、親が自分の手足で担っていたはずの子どもの分の家事や育児は
担うことができませんでした。

これまで、こうした制度の狭間に落ち
ヤングケアラーにならざるを得ない子どもたちもたくさんいました。

このような制度があることは、ご存知でしょうか?



障害者総合支援法の居宅介護(家事援助)に含まれる育児支援

令和3年7月12日、厚生労働省は、「障害者総合支援法上の居宅介護(家事援助)等の業務に含まれる「育児支援」の取扱いについて」の事務連絡を、各都道府県・市町村の障害保健福祉主管部(局)に発出しました。

この制度は平成21年に障害者自立支援法上に組み込まれ、厚生労働省より事務連絡が各自治体に通達されましたが、
行政が知らずに拒否されるケースも多かったために
2021年夏に再度事務連絡が通達されました。
(それに伴い、平成21年7月1日付けの旧事務連絡は廃止となりました。)

この事務連絡では、居宅介護等における「育児支援」では
利用者が子どもの保護者として本来家庭内で行うべき養育を代替するものとして、直接のサービス提供者が利用者ではなく子どもとなります。

①利用者(親)が障害によって家事や付き添いが困難な場合
②利用者(親)の子どもが一人では対応できない場合
③他の家族等による支援が受けられない場合の全て該当する場合に、個々の利用者、子ども、家族等の状況を勘案し、必要に応じて居宅介護等の対象範囲に含まれるもの
とされました。

利用者が子どもの保護者として本来家庭内で行う養育を代替し、必要な支援を行うという趣旨です。ヘルパーが親の障害のある手足の物理的な代わりとなり育児をするということです。


居宅介護等における「育児支援」の具体例は以下のとおりです。

○育児支援の観点から行う沐浴や授乳
○ 乳児の健康把握の補助
○児童の健康な発達、特に言語発達を促進する視点からの支援
○保育所・学校等からの連絡帳の手話代読、助言、保育所・学校等への連絡援助
○ 利用者(親)へのサービスと一体的に行う子ども分の掃除、洗濯、調理
○子どもが通院する場合の付き添い
○ 子どもが保育所(場合によっては幼稚園)へ通園する場合の送迎
○ 子どもが利用者(親)に代わって行う上記の家事・育児等



mixiで出会った障害のあるママたちが動かした障害者の育児支援


この『育児支援』の組み込みは、
mixiのコミュニティ『らぶ・はんど障がい者子育て支援の会』から始まりました。

平成21年以前は障害のある親へのホームヘルプサービスはあるのに、本来その親が援助するべき子どもの支援がなく、通園や通院が不可能または困難であったり、
親の分の掃除や洗濯、食事作りはヘルパーさんが担うことができるのに
子どもへの支援はなく、
親が障害を負い家事ができなくなると
これまでは親がしていた子どもの分の掃除、洗濯、食事作りを
ヘルパーさんにはお願いできないという制度体制となっていました。

子どもをお風呂に入れてあげたいのに、抱き上げることが出来ないから入れてあげられない。
自分の分はヘルパーさんに食事を用意してもらえるのに、子どもの分はコンビニで買ってくるしかできない。

そのような現状があったのでした。

そんな中、障害を持つママが苦しい思いをmixi上に投稿し、
それに賛同した障害を持つママたちが

障害のある手足の代わりとしてヘルパーさんに指示を出し、育児のサポートを制度に組み込んで欲しい!子育てに関わる人たちの環境を格差の無いものにしたい!誰もが安心して子育て出来る社会の実現を目指したい!

という切実な思いから、障害者自立支援法に障害者の子育て支援の枠を組み込もう!とNPO法人を立ち上げ、厚生労働省に要望をだし、署名活動をされたことで実現しました。

平成21年7月のことです。
あれから15年近くがたち、現状はどうなっているでしょうか?


現状は?

育児支援が受けれると知ったから出産に踏み切れたという声や、保育園の送迎をヘルパーさんとしているよという声も聞かれるようになり、障害を持ちながら育児をする人たちの間では、ここ数年で随分認知が進んだと感じるようになりました。

ですがいまだに行政に断られたというケースや、窓口で再三お願いしてようやく認められるケース、育児は24時間待ったなしなのに週に1回数時間のみという支給で困っているというケース、
「障害があるのが母親なら使えるが父親はダメ」と言われるケースなども
後を絶ちません。
中には、「前例がなく受け入れ可能なヘルパー事業所が見つからない」と言われて使えないケースも耳にします。

そして聞こえてくるのは、ヘルパーの人手不足という声です。
居宅支援に必要なヘルパーさんの数が圧倒的に不足していることに加え、
全てのヘルパーが育児のノウハウを持っているわけではないため、
事業者側も不安に感じ、受けられない場合もあるようです。

令和3年7月に再度事務連絡通達がありました。
前回の事務連絡が行政に浸透せず、
却下されるケースや受けてくれる事業所がなかったケースも多くあったことから
再度、具体例を添えて通達されました。

障害のある人の育児支援は、全ての子育て世帯の安心のための仕組みです。

まだまだ行政がこの仕組みを認知していないケースや、理解が追いついておらず使えないケースも聞かれますが
正しく認知されて必要な親子に支援が届くよう、私たちもこの制度について今後も伝えていくと同時に
子どもたちの福祉を最優先できる制度であってほしいと願っています。


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