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【詩】師の面影

 眠り落ちて朧げに 僕はあいつと喋ってる
 忌憚無く話しかけ 無遠慮に答えてる

 いつも夢を語るあいつ まるで苦悩が無いかの如く
 ずっとずっと喋ってる

 思い出される師の言葉 反芻しては腑に落ちて
 繰り返される彼の夢 虚空に見えては ただ朽ちて

 できやしないと思いながら ただひたすらに突き返す
 他人の気持ちは過ぎたもの? 他人の行い怠惰だと?
 誰もがそんな生きられない お前のようには歩めない
 周りを壊して進むのか それは誰の為なのか
 誰に負けない為なのか

 お前はひたすら追いかける そして淫らに撒き散らす
 お前への信仰 女たち—愛とは何かと問いたくなる
 「なぜできない?」が口癖か ならばこうして聞いてやろう
 「黙って話を聞けぬか」と

 師の頑ななあの言葉 本当に信じる強さについて
 学んできたからわかるのだ 容易く語ることではない

 けれどもそこへやって来た 師の面影が首をもたげて
 襟をひっぱりこう言った
 「口をついては、お前さん 否と言うこと そればかり。
 信じ向かう者を思うため 学びは誰を思う故かを
 決して忘れるなお前さん 彼を潰すためじゃない」
 僕はひたすら、ぎょっとした!

 夢から覚めた午前の涼しさ 無風の部屋の中一人
 沈殿した冷気が 枕の上まで達していた
 夢とも思えぬ確かさが 心臓を確かに動かしていた

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