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「kiræi」

静かに揺れる部屋のカーテンが
季節の別れを告げるように
懐かしい匂いを運ぶ

隙間から漏れる優しい光が
少しばかりあなたに似ていて
私はつい顔が綻ぶ

あなたの読んでいた本の名前を
私はまだ知らない

あなたの好きなものに触れ
あなたが愛したものに触れ
あなたの嫌いなものに触れて
あなたの人生に触れる

それはこの世の綺麗なもの全てを
凝縮したような感覚
時間と時間の隙間に入り込んだようで
世界がギュッと圧縮されて
そして最後にあなたが残る

こんな感情を教えてくれた
そんなあなたはきれいだ
この感情を教えてくれなかった
そんなあなたはきれいだ

風が吹いて、並木が青く揺れる
光が差して、キラキラと雲が浮かぶ
風が吹いて、ふと上を見上げる
空が凪いで、そっと君の名を呟く


長い間降り積もった感情が
一度に溶けて流れてしまったようで
私はつい天を仰いだ

あなたの読んでいた本の名前を
私はまだ知らない

あなたの好きなものに触れ
あなたが愛したものに触れ
あなたの嫌いなものに触れて
あなたの人生に触れる

それは自由という言葉そのものを
体現したような感覚
空と空の境界に入り込んだようで
世界が一気に発散されて
そして最後にあなたは消える

こんな感情を教えてくれた
そんなあなたはきらいだ
この感情を教えてくれなかった
そんなあなたはきらいだ

風が吹いて並木が青く揺れる
光が差してキラキラと雲が浮かぶ
風が吹いてふと上を見上げる
空が凪いでそっと君の名を呟く


静かに揺れる部屋のカーテンが
季節の別れを告げるように
懐かしい匂いを運ぶ

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