なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか

民主主義社会におけるアイデンティティの分断は、
選挙のマーケティング技術の発展によってもたらされている。
アイデンティティの分断が政治的動員に利用されることで、
本来は多様であるはずの人々のアイデンティティは、画一的で単純なものに押し込められていく。

他者によって発見され押し付けられたアイデンティティは他の
アイデンティティを食いつぶす可能性もある。

暴力を伴わない社会的な戦争行為である選挙において、
政治家は自らにによって都合がよい動員を強いるために、
画一的で単純化されたアイデンティティを有権者与えようとする。
所得による格差等が典型的。

日本国内で旧来の政治家に求められるのは、主に人柄などのパーソナリティであり、政策的に何を言っているのかは二の次である。
近年は主に都市部において、候補者が直接面談できない有権者が増加し、その属性や性質を踏まえたマーケティング対応が求められている。

知識人がアイデンティティの分断を発見し、メディアが分断の存在を社会の隅々まで拡散し、選挙に利用される。
知識人は分断の解消を望み問題提起するが、拡散され利用されてしまう。

アイデンティティの分断圧力にさらされる現代人は大きなストーリーの文脈から考えれば一体感よりも疎外感を感じることが増えているといえる。逆に自分のアイデンティティにかぶる層と出会いやすくなる。

アメリカの場合、東西海岸は民主党、内陸部は共和党支持者が多い

アメリカ人がアメリカじんたるには人種や属性ではなく、共通の価値観を共有している事が条件となる。

移民が排斥されるのは、アメリカにいながら理念に共感し同質化する事がないため。

中国などで行われる信用スコアの運用
何が正しい事かの価値観を人々に共有、強制し、アイデンティティの画一化を進めるため施策。
スコアの低下で営業許可がなくなったのは2000万社いる。

批判的に相手の立場に立つことで一見矛盾したように見える事象からその背後の真意に気付くことが出来る。

アメリカは元来の独善性を加速させている。

自発的にアイデンティティを形成する事のない人々は楽だが、
分断を食い物にする人々に一生踊らされることとなる。

香港で大規模なデモとなった逃亡犯条例という統制によって、
逆に若者を中心に香港人としてのアイデンティティを確立させる結果となっている。

イスラム国に参加する人々も動機が多様にあり、純粋にイスラム教義への傾倒だけでなく、アイデンティティの分断による行動ととれる場合もある。

新宿の成人の2人に1人が外国籍となる中、
出生地主義に基づくナショナリズムが台頭し、日本人としてのアイデンティティの画一化・多様化を求める政治勢力も現れるだろう。

国家の重要なアイデンティティである通貨も変化を迎えている。
第二次世界大戦後に多くの国家の独立に伴う法定通貨体制が整備された。

ビットコインやリブラ、デジタル人民元の越境性は確実に民主主義の在り方をかえ、人々のアイデンティティを不可逆的に変える。既存の政治の枠組みやマーケティングの対象を変えうる。

不安定な通貨体系の国ほど仮想通貨を選択する蓋然性は高い。

仮想通貨つぶしの保守勢力と促進させる勢力が生まれる。

アイデンティティの分断から逃れるためには自ら取捨選択する必要性がある。
前近代的なアイデンティティや押し付けには読書が有効。

相対的に未開な環境で育ってしまった場合、自らの頭で思考する能力が奪われてしまいがち。単純に知識不足で物事を考える視座が不足しているだけなのである。

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