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中国本土化する香港の姿

先週香港へ行ってきた。

今回の香港訪問を通じて、ニュートラルな立場として、ここは中華人民共和国の一部なのだと強く感じた。今回はそれを記したい。

香港の独自性とは

香港は、中華人民共和国の一国二制度という制度のもとで、中国の特別行政区として、本土とは異なる法律・行政管理が実現されている。
これは香港がイギリスから復帰した1997年に、イギリスと中国の統治システムに乖離が大きすぎることから、スムーズな移行を目指して、双方の協議により実現した体制である。

このシステムを知っている日本人は多くはないと思うが、日本人の感覚として、何か台湾に近い印象(中国に近接し、中華文化の国ではあるが、民主化されている地域)を持っているのではないだろうか。
またシンガポールにも似ていると思う日本人もいると思う。中華民族が暮らしつつも、英語が通用し、アジアの金融都市という意味では共通しているからだ。

ただ、こういったイメージは、自分の中では、完全に覆された。それは香港が想像以上に中国本土の雰囲気を纏っていたからである。

最近では、2019年の民主化デモを発端に、香港から移民する香港人が増えている一方で、大陸から香港に流入している。人口で圧倒すれば、事実上アイデンティティも中国寄りになっていくだろう、とは考えていたものの、ここまで大陸人が多いのかと驚きを隠せなかった。

なので、昔は香港では普通話(標準中国語)は通じないと言われていたが、今では普通に通じる。こちらが英語を話していても、私がアジア人の見た目をしているので、普通話に切り替えられる。

最も違和感を覚えたのは、香港歴史博物館である。
なぜなら、香港歴史博物館という名前とは裏腹に共産主義プロパガンダを宣伝する施設でしかなかったからだ。

驚きの香港歴史博物館展示

展示エリアに入ると、まず目に入るのは、中華人民共和国の国旗と共に、共産党の指針や彼らが目指す「中華民族の偉大なる復興」について説明がある。

中国の五星红旗が出迎える。BGMは国歌。
共産党の歴史にふれる。


その後は、民主化デモの引き金となった国家安全法条例について、いかにこの条例が合理的で治安維持に有効であるかを、くどいほど説明してくる。

法律を詳細に説明する。

国家安全法条例とは、平たく言えば、香港特別行政区の中国からの分裂、転覆活動、デモ活動の一切を禁じ、違反者には重刑を課すと取り決める法律である。
香港ではこれ反発するデモ活動が繰り広げられたものの、2020年に施行された。

当時の民主化デモに関する展示もある。民主化推進派が、いかに残酷で暴力的であったことを映す。

実際にデモで使われた防具

ここを訪れるのは外国人も多いと思うが、大陸人を除けば、衝撃を受けるだろう。
香港アイデンティティなど触れられることもなく、画一的な中国共産主義の優位性を説かれても、訪問者が香港歴史博物館に期待しているものと、かけ離れているからである。

出口にもメッセージがある。

元々は、香港の歴史について学びたかったので、ここを訪れた。
その期待は大きく裏切られるとともに、その展示内容は、かなり異様に映るモノであった。

現在の情勢を踏まえれば、香港の中国本土化は避けられないものであり、加速していくように思う。
香港の中国復帰後50年となる2047年は、香港の独自性を守ってきた一国二制度は終わりを迎える。
共産党政府は、このデッドラインを念頭に、着々と本土化を進めていくのだろう。

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