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帰属感がないことを受け入れる

面接で、「周りの人はあなたをどのように形容しますか?」と聞かれたことがあって、いい質問だなと思った。その時は当たり障りのない回答をしたが、家に帰り改めて振り返った。ひねくれ者のイギリス人の友人が放った一言が浮かんで、かなりお気に入りの形容だなと思った。彼いわく、すごい誉め言葉、らしい。

You definitely don't belong to Japan. Not really someone European either. I think you just belong to the globe.

思えば子供のころから、家族を含めて集団に対して強烈な帰属感を覚えたことがない。適応力はそれなりに高いので、接触がある集団に合わせて器用にキャラ調整をして取り繕うことはそんなに難しくはなかった。でも、やっぱり染まりきれないところがあることは、いつも自分でわかっていた。何だかんだで、ずっとそれをコンプレックスに感じていた。

そんな自分を受け入れられるようになってきたのは、社会人になってからだった。欧州系金融機関の東京オフィスに就職した私の同期や会社の友人には、日系人が何人かいた。名前も日本人、見た目も(スーツ着てれば)日本人、けれど日本語や日本式マナーが完璧じゃない彼らに、日本の社会は冷たかったようだ。彼らから、色々な苦労話を聞いていた。

私が仲良くしていた何人かは、そんな環境に耐えられず、結局は日本を去る決断をした。そのうちの一人が、「東京での生活は色々つらかったけど、あなたみたいな素敵な日本人もいてくれて良かった」と言ってくれた。その時に、私はどこの集団にもキレイに所属できないのかもしれないけど、その分色々な人との障壁が低いのかもしれない、とふと思って嬉しくなった。

去年、そんな日系人のひとりの友人の結婚式が香港であった。座席につくと、友人のお母様がわざわざ挨拶に来てくれた、ちなみに初対面である。お母様は仰った、「あなたが来られるって聞いたから、ぜひ直接お礼を言いたいと思っていたんです。息子が東京にいたとき、メールの書き方とか、日本語での試験対策とか、色々と助けてくださったでしょう。よく息子も話してくれていたんですよ。」

友人は結構やんちゃ系で、お母様にそんな事を話していたのを想像すると、少しウケた。でも改めて当時を思い出してみると、日本の銀行出身のTHE日本人オジサマに囲まれていた友人は、結構しんどそうな時があった。他の外人顔のアメリカ人同期たちは、こんなプレッシャー感じないのに、とボヤいていたこともあった。

10年前のことで、具体的にどんな手伝いをしてあげたか覚えていないが、多分彼が困っているポイントを察して細々と手伝ってたのであろう。私自身常に、うまく馴染めないとか距離が埋まらない状況を経験してきたので、彼らの辛さも理解できるし、何とか出来る限り助けてあげたいと思っていた。

お母様は少し興奮気味で、本当に感謝してくださっていることが伝わってきた。友人は2代目で、ご両親は日本生まれ日本育ち。息子が就職で初めて日本に行って、労働環境のために日本を嫌いになりそうになっていて、悲しい気持ちになられたのではなかろうか。私がそんな状況の改善に貢献できていたのなら、こんな嬉しいことはない。

中国で生活して5年、もちろん中国人にはなり切れないし、日本人のコミュニティでもどこか浮いている。パートナーのヨーロッパコミュニティでも、完全に馴染んでいるわけではない。たまに、ガッツリと集団で行動している人を見ると、帰属感のなさに寂しい気持ちになることもある。そんなとき、冒頭のイギリス人の友人の形容を唱えてみる。そうして、こんな自分だからこそ出来ることをしていこうと、少し前向きになるのである。

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