アメリカとカナダ

 初めて来た外国がカナダで広い国だとは思ったけれど、バンクーバー、トロント、カルガリー、バンフ、ケベックと色々見て、トロントでは国境を渡ってアメリカに行ったときに思ったのが、カナダはアメリカと比べると経済的に豊かな国ではないと瞬時で思った。食べるものやお店などが、国境を越えると一気に華やかになったことに驚いた。その頃は、他に比較することもできなかったけれども、その後アメリカで最初に生活した土地がバンクーバーの近くだったこともあり、たまに遊びに行った時も同じ感想を抱いた。

 それから日本から逃げ出してカナダにきたけれど、カナダで実際に生活して見て思ったことは、アメリカで生活していた時のカナダと変わらなかった。そして、中に入って生活して見ていて思うのは、私の認識よりもかなり自由がなく保守的な国だと思った。徹底的に無駄が省かれている上に、よく分からないルールが多いと思った。

 それに、若かったら気にならないことや、英語が出来なかったら気にならない(わからない)嫌なことが、英語が出来る今来てみるとあっという間に分かるのが結構辛い。分からない感じを楽しむ感じがないのだ。自分に向けられている言語のような雰囲気を察することができるのはいいことだけれども、悪いことでもある。

 数年前、国際学会の時にもビクトリアに行って数日過ごし、その後はほとんどシアトルで過ごしたけれど、かつてよりもかなり豊かになった印象があったけれど、その時もやっぱり同じように思った。アメリカはやっぱり経済大国なのだなと思った。それがいいか悪いかはおいておいて。そして、帰りの飛行機の中で、たまたま隣に座ったシンガポールの人が言っていたことが今でも記憶に残っている。

「カナダの景気はシェールガスのお陰ですごく良かったけれど、多分それも時間の問題だ」というようなことを言っていた。「自分は、結構シェールガスで稼がせてもらって、自分のような外国人が多いと言っていた。」こちらにきて、大学に通って学校の先生の感じや学校を見る限り、教育が産業とあまり結びついていないのではないかと思うようになってきた。ここに来て、本当によく言われることは、大学で教えることでは仕事が見つからないという話だった。大学で教える理論やロジックは実社会では役に立たないという話を聞いて、どうなっているのだろうかと思っていた。

 大学のシステムもアメリカと大分異なり、プログラムがきっちり決まっていてそれ以外の授業は取れなかったり、そもそも学校でオファーされている様々な授業の中から好きなものをとって覗きに行くなんてこともできなくて驚いた。カナダの教育は高水準で素晴らしいという話を聞いていたので、アメリカの大学みたいに自由かと思っていたけれど、違っていた。きっちり決まっている。それ以外は認めない感じだった。そして学校の数が圧倒的に少ないことに驚いた。

 こちらに来る前は、幼児教育の専門家、サービス業、レストランなどのシェフやベーカリーなどの職業でもビザが出たり、永住権が出る地域もあり、多くの移民が集まっているというような情報も見た。そして、その時はそれに対して何も深く考えたことがなかったけれど、実はカナダには産業がないのではないかという気持ちになってきた。隣のアメリカでは普通に手に入るものが入らないのも何故だろうと思っていたけれど、アメリカの豊かさとまともに競争すると、国として負けるから規制しているのではないかと思ってきた。実際に物価がとても高い割りに質が悪いものが多く、配達や郵便などのサービスも値段がとても高い。日本から送っても大した値段にならなくても、こちらから送ると飛んでもない値段になることが多い。

 物価を上げて最低賃金をあげて、世界でも割といいお金になる国には違いないと思うけれど、それは構造的にそういう風に作ったもので、ごく一部の人はそれらの恩恵で暮らせる人はいいけれど、そうではないとここはとても住みにくい気がししてきている。実際にダブルワーク、トリプルワークの人もたくさんいるし、一人暮らしをするためにはかなりの家賃がかかったりするし、ホームレスの人も沢山いて、夜になると普通に店前で寝ている。

 私が住んでいるこの街は、中東の人が街の不動産をほぼ所持していて、あるビルあるビルのオーナーが同じ人なので、それ故同じ看板がずっとならなんでいる。そして、そのオーナーがどれくらいの家賃でどれくらい貸し出すと効率的に儲かるかというのを計算して貸し出しているので、空のテナントがやたら多いまま、レントが高い状態を常に保っている。そうしてそういう、海外から来た資産家が街を攻略している感じになっている。どんなにいい感じの場所でも、ホームレスの人が集まるようになったからレストランなどを追い出して閉めてしまい、その後お店もなくすっからかんという建物が沢山ある。その閉鎖的な感じがカナダなのかなと思う。


 

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