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「足る」を知る。
隣の芝生は青いものである。
私自身だって、「全然そんなこと気になりません!」なんてはずもない。
やっぱり、隣の人が気にもなるし、我が家のことが不安にもなる。
「うちの子、いつも朝起こさないと起きてこないけど、大丈夫?」
「勉強、ちゃんとできてるの?」
コツコツと真面目に貯金し、スーパーでは節約お買い物。
将来の教育資金の不安に、年金の不安。
多くの人と同じように、私も日々、あまたの不安にまみれている。
そんななか、最近ネットで知った方がガンで亡くなった。
最後の発信は、一言「すごくつらい」だった。
30代半ば、まだまだこれからじゃないか。
きっと思い残すこと、たくさんあったはずに違いない。
どんな思いを胸に、この世を去ったのか。
実際にお会いしたことはなかったのだけれど、
亡くなってからしばらく経ちはしたものの、
その人のことをいまだによく思い起こす。
数学者の藤原正彦氏は、上阪徹氏とのインタビューでこう話したという。
僕の家族は、誰ひとり戦争で欠けずに帰ってきました。それだけで幸運だった。人生を振り返ってみても、あの頃がもっとも幸せだった時期のひとつです。お昼になるとNHKの『のど自慢』をラジオで聞き、みんなで声を会わせて笑って、大笑いして
実は日本人は何千年もの間、みんな貧しい時代を過ごしていたんです。それでもみんな笑い合って生きていた。『足る』を知っていたからです
人はついつい、欠けた部分ばかりに目がいき、
満たされないとばかりに、心はどんどん貧しくなる。
けれど、健康な体があって、家族がいる。
おいしくご飯が食べられて、あたたかい布団で眠れる毎日。
なにが欠けているのだろうか。
なにに不満を感じることがあるだろうか。
人の命は有限である。
目の前にある有難い日々に感謝をし、
笑いあいながら、みんなとつつがなく過ごす。
『足る』を知る。
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