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時に不気味で、時に不思議で、時に懐かしくて仕舞いには涙が溢れて来てしまう。素晴らしい作品

今日丁度読み終えた辻村深月さんの

「ふちなしのかがみ」

ホラー作品だと聞かされていたので、ドキドキワクワクしてページをめくっていましたね!
学校の怪談に始まり、コックリさん等の都市伝説
王道ホラーものかと思いきや、最後まで読んでも結末がわからず変な胸のシコリだけが残る
ある意味不気味で怖い作品まで。

短編ホラーが全部で4話収録されていた
この「ふちなしのかがみ」でしたが
最後の作品、「8月の天変地異」は涙が出てきてしまって。

というのも、僕は過去に2度転校を経験しているんです。1度目は小学校1年の中頃。
2度目は、小学校2、3年頃かな?
その度に友達と離れ離れにならないといけない辛さは計り知れなくて。
折角仲良くなれた友人の顔を眺めるのが辛かった思い出があります。

その中で特に仲が良かった親友M君は
ガキ大将で活発でスポーツが出来る人気者でしたが、実は物凄くナイーブな子供だったんです。
彼の両親は彼が幼い頃に離婚をし、離婚した夫は何とバツ2で友人の兄はその前の連れ子だったんです。
だけど彼は本当の母でなくても、一緒になることを望み、血の繋がらない弟が出来た後も仲良くし面倒を見てくれたそう。
その事もあったのか?彼は僕と遊ぶまで中々友人ができなかったといいます。

僕と彼が遊んでいると、はたから見れば僕が彼に付いていく様に見えるらしいですが、実は彼が僕についていっているそんな関係でした。

僕と二人のときだけ見せる隙のある表情。
普段誰にも見せない弱々しい表情が僕の中で一番良く覚えている顔でした。

僕が去る日
殆んどその記憶がなく、どんな会話をしたのか?
全く覚えていないんですよ。
ただ一つ覚えているのは、彼の顔が物凄く辛そうだった事だけです。

その後僕は新たな出会いをすることになりました。
新たな地で生きることに不安がありましたが
もうその頃には転校を2度経験していたので、大きな不安もなく割りとすんなりと事を受け入れていました。
詳しいことはあまり覚えてませんが、確か家が近所だということとたまたま彼に学校を案内される様に先生に言われ、僕と話が合い意気投合した
友人のK君と言う子がいました。

新天地での生活は慣れたのですが、やはり不安もあり、家が近いという理由で登下校を共に出来る友達が何と初日で出来てしまったという喜びで
今回も上手くいくと思った矢先。

僕に辛い現実が待ち構えていました

「今までに経験したことがない、イジメ」

初めは無視という形から入り、次第にはバイキンタッチというくだらないものにエスカレートしていきました。
その絶望的なピンチから救ってくれたのは友人K君でした。
彼がすかさず先生に報告してくれなければ、ずっと長いこと僕は苦しんでいたのかもしれないと思うとゾッとします。

その後僕たちはお互いを親友だと認識するようになり、更にお互いの仲が強くなっていったのです

親友のM君と、親友のK君には大きな共通点がありました。
お互いガキ大将で、活発で、友人が多いように見えて、実は僕と出会うまでは友人が出来なかったということ。
お互いの母親は、僕ともし出会わなければこの子はどうなってたんだろうねと話していました。

まさか僕がそんなキッカケを作っていたとは知らず、いつも通り普通に接していただけなのに
後で聞かされた時は衝撃を受けましたね。

そんなK君ともおよそ6年位仲良くしていました
が、僕が丁度中学を卒業するすぐ後に
僕は大きな決断をすることになりました。
ろくでもなく勉強ができない僕は、地元の最下層の高校へしか行くことが出来ずに、そこでくすぶってしまうならば、自営の仕事の関係上
海外の人間と渡り合えないといけないと言われ
僕は海外へ語学留学をするという選択をしました。

そこで訪れる2度目の親友との別れ。

彼が最後に言った言葉が曖昧ですが覚えています

「海外なんて行かなくても、日本で勉強すればいいのに」

強がっているようで、声はとても寂しそうだった親友。
僕はずっとその言葉がリフレインするかのように頭の中でグルグルと回っていました。


友人というのは不思議で
学生時代に出来た友達なんて言うのは
いつの間にか、顔も名前も忘れてしまう人もいるものです。
ただ当時仲良くしてくれた友人達、時折思い出すんですよ。

「みんな元気にしているのかな?」
「なんにも問題はなく生活してるのかな?」

会社が倒産し、地元を離れ
いよいよ思い出も何も残されているものは全てなくなりました。

最初に住んでいた家も
今じゃ他の家が立ち並ぶ住宅街に。
M君と遊んだ僕の家の敷地も面影すら残ってません。
K君とイツメンの仲間たちが、毎日のようにたむろ場にしていた僕の家も
今ではハリボテの様にそこに立ち尽くすのみ

そんな過去の経験をしていた僕にとって
辻村深月さんの描いた「8月の天変地異」は胸に突き刺さりました。
小さくも儚い蝉の命と架空の親友である「ゆうくん」
活発で時にはナイーブな表情を見せる姿が何となく二人の僕の親友に重なるようで。
読み進めている内に自然と涙が溢れて来ましたね

二人で歩いた夏の木漏れ日の下も
二人で食べた冷たいアイスの味も
一緒に歩いた蒸し暑い通学路も

その全ての思い出がまるで走馬灯の様に
一コマ一コマ鮮明に思い出させてくれました


今ではお互い違う場所で違う環境に身をおいています。
だけどもしあの二人がこの作品を読んだ時に
ふと僕の顔を思い出してくれるのだろうか?
そんな事を考えながら、物語の登場人物を重ね合わせながら読み進めていました。

作品の中でキョウスケが願いを書いたように
もう一度だけ、あの頃に戻ることが出来るのなら
僕はまた二人と今度はどんなに話しをするのだろう?今度は僕はどんな選択をするのだろうと考えています。
きっと僕はM君とK君。ふたりとも呼び出して仲良くなればいいじゃんか!?と考えるのかもねw

全く欲張りな性格だな...


と8月の天変地異の話ばかりになりましたが
どの作品もとても個性的で面白いものばかりでした。

「階段の花子さん」

では相川を徐々に問い詰めていく狂気さがハラハラとしました。終始ほのぼのとした空気から一転
空気がおかしくなりまるで異世界へ誘われる様な感覚に見舞われる。そして衝撃のラストとっても好きな内容です

「ブランコを漕ぐ足」

は子供ながらの視点で描かれた作品でした。
子どもたちに取っては重要なものである「スクールカースト」を上手く題材にし、飽くまで子供の視点から見たホラーを描いています。子供特有の残酷さ、純粋が故の怖さというまた違ったテイストの驚怖がありました。少しもやっとする最後がまた後味が悪いw

「おとうさんしたいがあるよ」

これはもう全てにおいて異質なオーラが凄いです
サイレントヒルで言う所の異次元世界のような驚怖がありました。
祖母の家を片付ける一家、そこで見つかる死体の山。それを覚えている主人公と、忘れているのかとぼけているのかわからない両親。
急に登場する元カレの存在。殺された郵便配達人
その全てのものがなかったようになるラスト
この作品だけはお手上げです。オチが全く読めません…。他の読んだ方もわからないようで
非常にモヤッと来る内容で、いい意味での未完成感が地味に怖いそんな作品でした。

「ふちなしのかがみ」

こちらはとあるサックス奏者の演奏を始めて見た主人公が、その強烈な演奏と彼の存在感に強く感動を覚え次第に恋をするという作品なのですが
彼女はとある都市伝説が流行っているということを耳にします。深夜0時に鏡の前にある一定の条件を満たして佇むと、自分の未来が一瞬だけ見えるというもの。彼に思いを寄せる主人公はその都市伝説を実行してしまいます。
鏡に写る小さな女の子。自分と彼の特徴が合わさったその顔は、まるで自分たちの将来の子供なのだと確信し、彼女の妄想が強くなっていきます
そんな妄想が強くなった時見せられる絶望
そこからどんどん闇に落ちていく主人公
そして衝撃のラスト…
そのラストを見た僕は、思わずえええって声が出そうになりましたw
人間の闇を上手く描いた作品でしたね。

しかし彼女の作品は始めて見たのですが
短編作品でありながらここまで深く内容が濃いストーリーを書けるなんて凄まじい才能がなければ出来ない事ですよね。
そしてホラーでありながらそれぞれ全く色が違います。
決して読んでいマンネリすることがないストーリー展開につい読むスピードが早くなり続きが早く見たいと焦る気持ちが強くなりました

流石本の虫の母だなとつくづく思います。

また面白い作品に出会えたら記事にしていこうと思います!

それではまたっ🫰


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