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ついつい動きたくなってしまう「実践 仕掛学」

はじめに

「人がつい行動するとしたらそれはなぜなのか?」
マーケティングの1トピックとして、たくさんの本が出ており、私もこのテーマの本を何冊か読んできています。

10年以上も前にこの分野に興味を持ち、初めて読んだ「行動デザインの教科書」には、人の行動を促すには5つのコストを下げることが大事。と書かれています

  • 金銭的コスト

  • 肉体的コスト

  • 時間的コスト

  • 頭脳的コスト

  • 精神的コスト

この5つのコストのポイントは、お金だけでも説得だけでも人は動かない。という当たり前のことをちゃんと考えないといけないということにあります。
そのため、これらのコストを全て下げながら、行動を誘発していくためには、行動アクセルと行動ブレーキをうまく使い分けていくことが重要。と書かれています。

では、具体的にどうやればいいのか?
実は、この行動デザインの教科書は、Howの部分を教えてくれなかったんです。「ターゲットをしっかりと設定し、ユーザーを観察すればおのずと浮かび上がる」みたいなことが書かれていて、秘伝のテクニックが開示されないモヤモヤを抱えつつ、続きはすべて読者に任されることになりました。

一方で、そんな方法論と具体例が実際にしっかりと書かれているのが本書「実践 仕掛学」です。

仕掛学の理屈

「仕掛学」というのは、松村真宏教授が研究している分野で、人の行動を変えるきっかけになるものを仕掛けを体系的に理解しようする学問分野です。
前半は理論に触れられていて、まずは仕掛の考え方について触れています。

超簡単なメモ

  • 仕掛けはFAD(Fairness【公平】、Attractiveness【誘因性】、Duality of Purpose【目的の二重性】)を満たす

  • 物理的なトリガーや心理的なトリガーを刺激し、行動の優先順位を高めるように作用する

  • 日常生活に潜むものの中に仕掛けを加え、人の「遊び心」を刺激し、精神的なコストを下げたり、特定の行動への動機づけを与えること
    ※この遊び心を重視するのがポイント

そして、仕掛けを考える際のコツとして

  • 新規性(新しいもの)と親近性(慣れ親しんでいるもの)を組み合わせる

    • 新しすぎるとダメだし、ありきたりすぎてもダメ

  • アイデアをコラージュのように掛け合わせる

  • ユーザーの物理的なトリガー(五感やアナロジー)や内発的な動機づけ(遊びごごろ、承認欲求、社会的文脈)に働きかける

  • これらをトライしながら失敗も糧にしながら、新しいことを試す

ということが挙げられています

圧倒的な量の具体例(なんと45個)

なんといっても本書の特徴はその圧倒的な具体例にあります。
先述した書籍は、秘伝のテクニックは「お前の目で確かめてみろ」と言わんばかりの記載だったのに対して、「例はたくさんあるから自力で考える」という記載になっています。
「仕掛学」の書籍に二種類あり、ここで紹介している「実践 仕掛学」は実例に重きを置いているためです。

いくつか紹介すると

  1. “真実の口” 実は・・・「手指衛生“真実の口”キャンペーン」を開催
    https://www.hosp.med.osaka-u.ac.jp/topics/detail.php?id=325

  2. エスカレーターではなく、つい階段をのぼってしまう。消費者が行動したくなる「仕掛け」
    https://agenda-note.com/retail/detail/id=5501

  3. トイレの長時間利用を減らす仕掛け
    https://www.shikakeya.site/?p=463

    参考「しかけや」https://www.shikakeya.site/?page_id=20

などです。
具体例と効果の考え方があり、「こういう考え方があったのか!」と気づきを得ることができます。
頭の体操的な意味でもすごく勉強になる本でした。

まとめ

つい人が行動するための仕組みとして、コストを下げることが大事で、そのための手段として、人の遊び心に訴える「仕掛け」が有効。という話でした。
ナッジ(行動経済学)やゲーミフィケーションとも相性がよさそうで、もう少し俯瞰して考えてみたいと感じました。
遊び心をうまくつつきつつ、報酬を適切に与えることで特定の行動をしてもらい続けるなど・・・。


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