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デマ情報にサイエンスで打ち勝とう

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID19)流行に伴い、私たちの生活は大きく変化しました。

基本的な石鹸手洗い・手指エタノール消毒やマスク着用といったスタンダードプリコーションに加え、Social Distancingの重要性が指摘され、外出を自粛し社会的な距離をとることが求められています。

結果、経済的な負担や人間関係の変化から強いストレスを感じたり、生活の変化により身体環境の悪化を自覚したりすることがあります。また、「自粛をしない人が許せない」「政府の方針が許せない」といった強い拒否感情に見舞われるケースも見受けられます。

また最近では、どこから来たか分からない情報をSNSやメールを介して拡散する行動がみられるようになってきました。これらの情報は専門家によるチェックを介さず、『負の善意』によって拡散され、インフォデミックを起こします。これは、パンデミックや地震といった自然災害が起こると高確率で発生する事象です。

インフォデミック: ネットで嘘やデマも含めて大量の情報が氾濫し、現実社会に影響を及ぼす現象。

インフォデミックは今回に限らず、多岐にわたり医学(科学)の進歩を侮辱してきました。今COVID19の恐ろしさを目の当たりにしてこそ、集団免疫の概念が一部理解され、ワクチンの開発を求める声が溢れています。しかしつい半年前まで、「俺はインフルエンザワクチンを打ってないけど、かかったことないんだぜ」みたいなことを平気で口にする方が沢山いたのです。これは、1918-1920に流行したスペイン風邪(インフルエンザによるパンデミック)と人類が戦った歴史を完全に軽視していたということです。

また日本において、子宮頸癌ワクチン(HPVワクチン)の接種が全く進んでいないのもインフォデミックの影響です。メディアによる副反応の過大報道は国民に恐怖心を植え付け、国による積極勧奨取り止めにまで至りました。日本での接種率はかつての70%から、0.3%にまで落ち込んでいます。今後日本人女性では、確実に子宮頸癌が増えていくでしょう。

そして今回のCOVID19においても、至る所でインフォデミックが起き始めています。

「胃酸がウイルスを殺すから15分に1度水を飲め」「10秒間息を吸えるかで肺の繊維化の有無がセルフチェックできる」「温かいものを食べればウイルスを倒せる」「イブプロフェンはウイルスを増殖させるので絶対飲んではいけない」

ご自身のところに回ってきたものもあるでしょうか?これらは全て、嘘です。全くエビデンスはありません。このような嘘を拡散してしまうことは、科学に対する侮辱です。

巧妙だなと感じるのは、これらの情報はたいていの場合「〜病院の医師からの情報です」「NYの現地で働く看護師からです」といった、全く信頼に値しない権威づけがなされて提供されているということです。しかし、仮にそれが事実であったとしても、医師や看護師が発言していることは微塵たりとも正当性の担保にはなりません

ここで1つの図をみてみましょう。

ご覧の通り、「専門家の意見」というのはいかなる人を対象とした研究デザインより、信頼度が低いのです。

ましてやCOVID19については、真の専門家などいないというのが現状です。誰もが、いま初めて対峙しているウイルスなのです。だから、「〜病院の医師からです」という情報は、全く科学的根拠がないと思っていいです。

信じるべきは、しっかりと研究がなされ、論文として発表されている情報です。あるいは、その論文に基づいて発言している医師や研究者の情報です。これが、科学に対する敬意です。

このような大変な時期だからこそ、(いかなる権威者や有名人のものだとしても)個人の意見に振り回されるのはやめましょう。また、根拠となるソースが添えられていない情報を盲信するのはやめましょう。これは、コロナに限らず、あらゆる病気から適切に身を守るために非常に大切なスキルです。

情報を取捨選択する「ヘルスリテラシー 」を身につけることこそ、最大の予防なのです。

デマ情報を捨て去り、科学に敬意を示しましょう。自分や周りの人の命を救うために。


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