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経産省と東証のタッグで選定される 「健康経営銘柄」はESG投資の指標に

前回の記事では「令和3年健康経営度調査」のフィードバックシートを活用して健康経営に関する取組内容を検証するお話をいたしました。
今回は、健康経営度調査の結果を踏まえて行われるもうひとつの重要な取組みのひとつ、「健康経営銘柄」の選定についてみていきましょう。

健康経営銘柄とは

「健康経営銘柄」は、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定し、発表するもので、健康経営度調査の結果を踏まえ、東京証券取引所に上場している企業の中から健康経営の取組みが特に優れた企業が公表されます。

経産省と東証が与える「お墨付き」

健康経営は、従業員など働き手を人的資本として捉え、健康保持・増進の取組みを企業の収益性を高める長期的投資であるとして、戦略的に健康管理を進める経営方針・施策です。
健康経営の優れた取組みを実践する企業は長期的な視点から企業価値の向上を重視する投資家にとって魅力ある投資対象といえます。投資にふさわしい企業を経済産業省と東京証券取引所が共同で選定し「健康経営銘柄」としてお墨付きを与えているわけです。

健康経営銘柄はESG投資の評価指標を牽引する

健康経営は、ESG投資でいうS(Social)に位置づけられます。
一般的に「S」の評価は定量化が難しいとされるのですが、健康経営度調査では具体的な指標が定められ、ランク付けされて評価・選定されています。このことから、健康経営銘柄は、中長期的な視点で魅力ある投資対象として注目が集まっています。

健康経営銘柄はこうして決まる

では、健康経営銘柄は、具体的にどのようにして選定されるのでしょうか。
具体的な選定の要件と流れをみていきましょう。

健康経営銘柄の評価ポイント・選定要件

健康経営度の評価モデルは、経済産業省の健康経営基準検討委員会のなかで検討され、評価項目や重み付けが設定されています。

健康経営の実践の度合いは、次の5つの枠組みに整理されます。
それぞれに健康経営の取り組み度合いに関する社会的な現状を踏まえた配点の重み付けが行われ、最終評価が算出されます。

  1. 経営理念・方針(3)

  2. 組織体制(2)

  3. 制度・施策実行(2)

  4. 評価・改善(3)

  5. 法令遵守・リスクマネジメント(-)

健康経営銘柄の評価モデルとウエイト(2021健康経営銘柄 選定企業紹介レポートより)

現在は、経営理念や方針とPDCAサイクルでの評価・改善に高いウエイトが置かれています。

健康経営銘柄の選定にあたっては、5つの枠組みに関し、さらに具体的な実施項目が整理された評価項目があり、重要な項目は必須の要件として設定されています。

健康経営銘柄の選定要件(赤枠はWellGoにて追記)

2022年度の選定要件としては、次の点が変更されています。
1.経営理念・方針:
⇒小項目が明確に示された
2.組織体制:
⇒前年に制度・施策の中にあった「取組の質の確保(専門資格者の関与)」が移動し、「実施体制(産業医・保健師の関与)」として追加された
3.制度・施策実行:
⇒小項目「対策の検討(評価項目「具体的な目標の設定」)」が「具体的な目標の設定(評価項目「健康経営の具体的な推進計画」)」に変更された
⇒評価項目に「喫煙率低下に向けた取り組み」が追加された
⇒評価項目15項目中12項目以上の実施が、13項目以上の実施に増加した

健康経営銘柄の選定ステップ

健康経営銘柄は、経済産業省が行う健康経営度調査の結果を踏まえ、東京証券取引所の上場企業のうち財務指標のスクリーニングを経て認定されます。※今年度の具体的な選定方法は発表されていませんので、前年度の健康経営銘柄を選定したときの流れで説明します。

まず、健康経営度調査で回答のあった企業について、評価基準に基づき評価を行います。
回答した企業のうち次の要件をすべて満たす企業を「健康経営に優れた企業」として絞り込み、選定候補として選出します。

  • 東京証券取引所上場会社(TOKYO PRO Matket上場会社を除く)

  • 評価結果が上位20%

  • 認定要件の必須項目をすべて満たしている

  • 重大な法令違反がない

次に、東京証券取引所にて財務指標スクリーニングを行います。
ROE(自己資本利益率)の直近3年間平均が0%以上の企業を対象として、ROEが高い企業に加点します。前年度の調査回答企業についても一定の加点を行うほか、社外への情報開示状況についても評価します。

そして、経済産業省と東京証券取引所が共同で、評価結果が業種内で最高順位の企業および各業種最高順位企業の平均より優れている企業を「健康経営銘柄」として選定します。
原則として、33業種ごとに1社を選定します。該当企業がない場合は選定なしになります。

健康経営銘柄の選定の流れ(経済産業省「健康経営優良法人の申請について」より)

まもなく選定結果公表

2022年度の健康経営の最先端をチェック!

健康経営銘柄は、2月に内定、3月に発表されます。
2021年度は回答企業数 2,523社(上場企業970社)のうち、48社が選定されました。

2022年度の発表はまもなく。どの企業が選定されるのか、注目です。



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