3.9 DIYリノベという選択肢が気になりはじめる

 壁紙をどうやってはがすのかについては、ネットを調べるとあっという間にソリューションが見つかった。天井を自分で抜いている人たちのブログもたくさんあった。私の場合は全く用意周到ではなく、付け焼き刃で必要な道具類をその都度調達して(多くは実家に転がっていた)、それっぽく作業を進めていったのだが、その中でDIYリノベを題材にしているYouTuberさんもいたので、かなり熱心に見てしまった。彼らはプロ(それを仕事にしている人)ではないにしても、我が家には転がっていない、それなりの工具を持っていて、手際も相当よかったので、そんな彼らと同じレベルでのDIYは無理だなと思っていた。

 解体作業は業者さんにまかせる予定だったし、壁紙もクッションフロアも天井もすべてお願いする予定だった。

 だが現実は、壁紙もはがしてしまったし、天井も全体の三分の二くらいぶち抜いてしまったし、壁紙の専門店でセルフ貼りのざっくりしたプロセスは聞いていたので、壁紙貼りまでは自分でできそうな気がしてきた。っていうか、すでにカナメが工務店さんとの打ち合わせで「壁紙は自分たちで貼ろうかなと思ってるんよね」とか言っちゃってるしー!!

ということで。

残りの三分の一の天井というのは、玄関入ってすぐの部屋、押し入れをこわす予定の部屋の天井のことで、ここの天井のぶち壊しに取り掛かり始めた、まさにその最初の最初の一発目に開けた穴から、なんと紅く染まった和紙のようなものが見えた。それが電気もつけていない部屋の天井に見えた時、私はとっさに

「ぎゃー、ごめんなさい!!!天井開けてゴメンなさーい!!!!!」

と大騒ぎてカナメのいる6階へと階段を駆け上がった。

「ちょ、ちょっと、カナメくん、ちょっと来て、っていうか見て。私ちょっと大変なことしちゃったかもしれない。ご先祖様に怒られるかも。天井開けなきゃ良かった。びぇーん」

ということで、その恐ろしい何らかのお札みたいに見えたものをカナメが覗き込んで見た。カナメは言った。

「ああ、これはアレだな、家建てるときに棟上式で使ったヤツかなんかやろ。別にタタリとか関係ないよ。でもこれ、勝手にとっていいのかなぁ.....」

えっ..........

天井抜くんだよね?

 天井を見上げたら、このお札さんの日の丸みたいなのと目があったらイヤだなぁ。なんかこう、移動させたらダメなのかな?っていうか、これってすべての階に一個ずつあるの?一軒で一つ?それなら、なんでよりによって5階にあるのだっ........

 恐る恐るスマホのライトで中をのぞいてみたら、恨み辛みの呪文みたいなものが書かれているのではないことがわかった。っていうか、義父の名前(一文字)の漢字がチラと見えた。たぶん、棟上式で使うなんちゃらっぽい。タタリはないが、外国暮らしの長かった私にとっては、っていうか集合住宅しかしらない私にとっては棟上式なんて人生に一度もお目にかかったことなどなく。なんとも言えない宗教色を感じてビビりまくりである。

凝視できない。

まぁ「上棟セット」の画像検索してみてくれ(汗)。

上棟セット 画像検索

とりあえず天井を抜く予定だから、残りの天井も壊さなくちゃだ。ヤツのことはしばし忘れよう。きっと誰かがうまいこと移動させてくれるはずだ。

そう信じながら、石膏ボードその他の粉塵を浴びながら(マスクとゴーグル、長袖長ズボン、手ぬぐいで頭巾状態の絶対誰にも見られたくない姿で)、なんとか天井をぶち抜いた。石膏ボードは壊すときには軽いのだが、持ち運びするときにはなぜか重い。大型の資材袋に少しずつ小分けにして(大量に突っ込むと自分で持てない.....)、3階に移動させる。私が移動した動線のあたりには、石膏の粉が落ちまくりで、掃除もせねばだ。

 ここから先は割と楽しかった。石膏ボードを取り付けていた天井の資材、つまり「軽天(けいてん)」を外すのであーる。

 以前ミズキさんとの立ち話の中で、プロに任せると軽天をつぶすのは一瞬で終わるということを聞いていた。業者さんのコストは依頼した作業量ではなく作業日数で計算されるとの話を聞いていたので、それを私が多少でもやっておけばコスト節約になるということは簡単に想像できた。ミズキさんによると、壊すのはめっちゃ簡単らしい。手でガッと引っ張ったら簡単にガシャガシャと壊せるということだった。

しかし。

バキバキと棒状の資材に力を入れてみると、四方八方に留め金があって、それを外さないとうまくいかない。それを無視して全体重をかけたら、天井ごと落っこちてきそうだ(汗)。よくよくみると接合部はシンプルに見えて、意外と構造が複雑で、外すにもどのラインから外すべきか考える必要がありそうだった。しかも電灯は石膏ボードごと残していたので、このあたりの処理をまず最初にする必要があった。

 電気関係は触らないようにしていたのだが、キレイに天井を抜くには通らねばならぬ道だ。とにかく日を改めよう。ブレーカーを落としてライトもない部屋じゃ、今できることは限られている。と同時にケイテンの構造も勉強しなくちゃだ。

天井の解体動画を何本も見たが、みなさん使っている道具がプロ仕様だ。電動ノコギリみたいなので一気にウィーンウィーンってケイテンを切ってる(汗)。こりゃ、素人でできる部分を超えてるかなとチラと思いながらも、構造が気になって仕方がない。

 その日から毎日のように、リアル書店めぐりをして、建築の分厚い本を立ち読みして回った(分厚いから買うと高い.....)。そこでめちゃくちゃケイテン工事のプロセスに詳しくなってしまった。設置の順番がわかれば、解体は逆にすればいい。

来る日も来る日も建築エリアの本を読む私。その時にカナメは何をしていたかというと、DIYリノベと間取りの本を読み漁っていたようだ。DIY工具の特集雑誌を読んでいた時にはちょっと予感はしてたんだけど。そう。カナメは私と逆でカタチから入るタイプ。めっちゃ(高額なプロ仕様の)工具の選定に余念がない様で、時折いろいろと熱弁ふるってくれる。

いや、そっちは任せるから、私に聞かないでどんどん進めてくれい。

間取りの本もそうなのだが、リノベの際に購入した本は、Kindle版ではなく紙の本ばかりだった。個人的には紙の本は一切買わないと決めているのに、である。粉塵や木くずが飛び交う環境でも読みたいものは、デリケートなデジタル機器ではない方がいいと思ったのと、なぜか紙の本をパラパラめくっている時の方がインスパイアされる部分があったからだ。この違いは、あまりうまく説明できない。

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