家電量販店の炊飯器推しがすごい

 我が家から炊飯器がなくなって久しい。

 日本から一升炊きの炊飯器を持って海外に行ったのだが、それから2回買い替えて、最終的には廃棄した。

 炊飯器自体が壊れることはなかったのだが、酷使しすぎた結果、内鍋の表面加工が剥げてくることが多かった。購入した国と住んでいる国が違うことが多く、内鍋だけを交換する術もなく。買い直すしか選択肢はなかった。

 最終的に廃棄した時も同じ状況で、その一年ほど前からシラルガンの圧力鍋で玄米を炊くようになっていた。シラルガンで炊いたお米は玄米でも白米でも美味しく、保温せずにすぐにラップして冷凍庫に入れた方が、保温したご飯よりも美味しいこともわかっていた。

 保温をする必要性がないならば、炊飯器は不要だ。タイマーと火加減さえきちんと設定しておけば、失敗することもなかった。

一昨年にホットクックを購入し、昨年に電気圧力鍋を購入した。ホットクックでご飯を炊いてみたらフツーに炊けたし、電気圧力鍋で玄米を炊いたら美味しかった。

 現在のところは、これで全く問題がなく、今後も炊飯器を買う計画は一切ない。そして炭水化物が悪者になって久しく、かつ私たちは成人病を警戒せねばならない歳である。暖かい炊き立て白米をたらふく食べられる環境が、即ちリスクMAXである。炊飯器など買うわけがない。

なのに。

3月末に某家電量販店に定点観測に行ったときのことだ。

新生活応援セール決算セールが同時に開催されていた。

私は、さぞかしホットクックなどの自動電気調理器などがずらーっと並ぶのかと思っていたのだが、そもそもこのジャンルの製品数は多くないため、実に狭いエリアに申し訳程度にあっただけだった。

が。

炊飯器売り場がすごかった(汗)。

実に、自動調理器のエリアの10倍以上のスペースを割いていた。

私が必要性を感じない電気製品に、それほどまでのバリエーションがあることに衝撃を受けて、色々と見て回った。

まず、IH圧力炊飯器の価格が、びっくりするほど高いことに驚いた。

ホットクックなんかよりも更に高い。ご飯を炊くだけなのに、なぜにこんなに高いのか?

昔から不思議だったのだが、炊飯器は機能自体がなぜか経年劣化する。どこかに故障があるというレベルではないのに、なぜか新品の時に感じた感動を感じなくなってきて、それが単なる感覚だけではないことを知る。変色が早くなったり、鍋縁の部分のご飯がパリパリになったり。次第に保温するよりも、炊きあがってから冷凍保存して、それをレンチンした方が美味しいということに気づき、それを実践するようになる。つまり早々に保温機能を使わなくなるのだ。

かつては一日2回一升のご飯を炊いていたから、その状況なら炊飯器はありがたいものであった。が、今は違う。狭いキッチンには、電気調理器が並んでおり、ご飯を炊くという単機能のマシンを置くスペースも必要性もない

でね。

考えたのだ。

今後求められるのはどういう製品なのかなって。

炊飯機能に強みのある電気(自動)調理機」ですよ。

電気圧力鍋や電気調理器は、ご飯も炊けるが、それに強みはない。どうしても従来型の炊飯器の方が美味しく炊けるはずである。

だから、電気調理器だけれども、ご飯もすっごく美味しく炊けるという製品があれば、最初から炊飯器を買おうとは思わず、その炊飯強化型電気調理器を買う人も多いと思う。

なぜ炊飯器を作っているメーカーがそれをやらないかというと、それをすると炊飯器が売れなくなるからである。

でもさ。

炊飯器のスペースがなくなれば、新しく電気調理器を置くスペースが生まれるわけで。逆に言えば、炊飯器を買わせてしまっているから、電気調理器を推しきれていないとも言えるのだ。

この状況なら、既存ユーザーに生活を変えてもらおうと思わず、今後長くユーザーになってくれるはずの若者ユーザーを育てるのである。

ひとり暮らしを始める若者に対して、無条件に炊飯器とレンジ・オーブンと冷蔵庫を買わせるのではなく、最初から「これからは炊飯器ではなく、炊飯もできる電気調理器を買うのがお得」というプロモーションを業界全体でやればいい。

電気圧力鍋なら、1万円台でも玄米を圧力調理できるのであーる。IH圧力炊飯器の価格見たらビビるで。

ちなみに、ご飯を炊くだけなら、こういうツールでも簡単に炊ける。

一人暮らしなら、レンチンご飯を購入している人も多いと思う。

日本のメーカーが、キッチン家電のイノベーションの方向ではなく、炊飯器の開発に力を入れすぎているということは、ユーザー目線から離れていっているということ。最後には、ユーザーも失うよ。


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