男の子のスクールライフはブラックボックス化しがち
うちには子供が4人いるということは何度も書いた。順番に、長女セリ、長男ギン、次男レン、三男バク、というラインナップになっておる。
長女のセリは、帰宅すると毎日のように、学校であったことをあれこれ面白おかしく身振り手振りを交えて話してくれた。その内容は学校の授業の内容やら、友達のこと、そして弟たちのことも含まれていた。
彼女は頭の回転が速く、そして表現も描写も的確だったので、彼女の話を聞いているだけで情景が目に浮かぶようであった。特に弟たちが学校やスクールバス内でやらかしたことについて、時には彼らの友人の談話を交えて正確に伝えてくれていたので、3人のボーイズの学校でのことについても、自分の目で見てきたかのように、状況が良くわかった。
が。
そんな長女のセリが大学進学のために家を離れた後、残された3人の男の子が、今まで通り学校に行き、自宅に帰ってきても.......
彼らが学校でどうやって過ごしているかについての情報が、いきなりゼロになってしまったのだ.......orz
いわばそれまでは、敏腕スパイの長女セリがいたから色々と見えていたことも、全く見えなくなってしまったのだ。なぜなら彼らは何も話さないからだ(汗)。
そんな当時。
私「ギンくん、今日はどうだった?学校は面白かった?」
ギン「まぁ、フツーかな。」
私「なんか、おもろいことの一つや二つ、あったやろ。」
ギン「いや、特には。」
そうですか。はいそうですか。キミに聞いた私がアホやった.......orz
絶賛思春期反抗期の次男レンは、全身から「オレに話しかけたらぶっ○す」オーラを出していた。それでもツッコんでみたい大阪人魂を必死で抑える。その「ぶっ○す」というワードを言わせてみたい気もするが、火傷したくない。とりあえず黙っとくわ、ママ。
おやつあるよー、と話しかけるのもためらわれるので、そんな無粋なことはしない。一応、テーブルの上にサンドイッチなどを大量に作っておいてあるのだが、それも食べないかもしれない。我が家には「おやつ専用の棚」があり、そこにはコストコで購入した大袋のスナック菓子や、個包装のスイーツ、カップ麺などが大量に置かれているのをみんな知っている。
夜中にゴソゴソと取り出して食べている子もいるのは知ってる。そのために置いてるんだもーん。そうじゃないと、思春期の子が餓死しちゃう(汗)。
そういう静かな毎日を過ごしていると、突然学校の先生からメールが飛んできて呼び出されちゃったりする。
いきなりサビ、やめていただけませんかーっ???心臓に悪いからーっ!
うちの子、何やらかしましたかぁ????
セリちゃんがいたら、何で呼び出されたかの想像くらいはついたかもしれないけれど、何も言わないギンとレン。すでに彼らのスクールライフはブラックボックス化しちゃって、何もわかんないでーす。何の件でしたか?先生(大汗)。
心臓がいくつあっても、もたない私。早死にしそうであーる。
ところが、その後少し状況が変わってきた。
末っ子のバクは当時10歳であった。
バク「ママさん、今日さ、ギンがぼーっとしててバスに轢かれそうになって、先生にマジで怒られてたよ。」
私「えええええ、何それ。」
バク「ギンってさー、周りを一切見てないじゃん?そしたら隣のスクールバスが動き出して。先生激怒。」
私「うっげー、先生にちょっとメール書いといた方がいいかなぁ。以後気をつけさせます的な。」
バク「まぁ、そこまではしなくていいんじゃない?ギン、死ななかったし。」
というように、その後末っ子のバクが、上の二人の兄のことについて諜報活動を開始。これでようやく、彼らのスクールライフの一端が見えるようにはなった。
さて。その後、二人の兄が順次卒業して家を出ていった後、我が家に一人残った子供のバクのスクールライフについて、誰がスパイ活動をしてくれるというのか!状態になった。
彼は帰宅するとすぐに自室にこもりPCゲームを開始し始める。私も仕事が忙しく自室にこもりがちになっていた。夕食だと告げると彼は素直に食卓につくタイプだったが、何を聞いても。
バク「まぁ。いつも通り。」
と何も言わず、立派な思春期反抗期っぽい態度を取り続けていた。
が。
彼は二人の兄とは異なり、めっちゃ知能犯であーる。
当時、学校行事やクラブなどでスクールバスに乗れなくなりそうだと分かると、私に車で迎えに来いというメールを送ってきた。
「ああ、それは大変だね。市バスで帰って来れないこともないけれど、あちこち迂回して時間がかかっちゃうから、私が迎えに行った方が時間短縮にはなるな」とアッサリと納得して、迎えに行ってしまった。
車の助手席に乗り込んだバクは、突然「今日学校であった面白い話」をし始めた。その話に私はまさに抱腹絶倒で、涙を流しながら笑ってしまい、運転が疎かになりそうなほどであった。
すっごく楽しかった。息子のスクールライフの話を聞くのは楽しいね。
以来、時々車でお迎えを所望されるようになってしまった。
仕事があって忙しいのに、あの楽しい話がまた聞けるかと思うと、ホイホイと行ってしまう愚かな私。
その事実を知ったカナメが激怒。
カナメ「あのな。そんなの市バス乗り継いで何時間かかっても自分で帰って来させればええんや。高校生やろ?そんなもんで親を呼びつけるなって思わへんか?お前もホイホイ騙されて行くなよ。あいつ、そういうヤツだから。利用できるもんは、親でも利用するタイプやからな。バクにとっちゃー、お前みたいなヤツを騙すのはわけないがな。次、絶対行くなよ?」
私「わかったー。ちょっとやってみる。」
バクくん。めっちゃ頭が良いヤツである。戦略を変えたらしい。
雨が降っても市バスに乗って帰ってきて、それがどれほど大変だったかということを滔々と私に語る。時間がどれほどかかり、バス停を待っている間の時間、乗ってからも座席に座れずに倒れそうになった云々を語る。そして最後に、こう付け加えるのだ。
バク「ママさんも、オレの話聞きたいよね。楽しそうにしてたやん。話ができるのは車の中くらいだし。迎えに来てくれたら、話したいこといっぱいあるのに。」
なんちゅう、人たらしであろう。我が息子ながら、詐欺グループからヘッドハンティングされてもおかしくない逸材。
上の3人と同じく、高校を卒業したら二度とこの時間は来ないのよね、と思った私は、それから彼の卒業まで、幾度となく呼び出されて、抱腹絶倒なドライブを楽しんだのであーる。
まぁ教育上どうかという問題は確かにあるのだが、親子でゲラゲラ笑いながら話すチャンスもそうそうないから、良かったかな。
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