リテイルセラピー気味のカナメ

 カナメは昔からショッピング好きである。休みになると家でじっとしていることはなく、どこかに行きたいと言っては、実際に出かける。もちろん私もデフォでついていかねばならない。
 車があった時には、100%運転は私で、カナメがナビ役である。理由は私がナビゲーションミスをするとカナメは烈火のごとくブチ切れて運転が危なくなるのだが、私がドライバーだとカナメのナビミスに私は怒らないから、まぁこういう役割分担になってしまった。

 「バンリちゃん。オレの言うとおりのところに行ってね♡」と彼が言うと私は若干身構える。

「どこ行くの?」
「いや、言う通りに行ってくれればいいから」
「まさかゴルフ用品店じゃないよね?」
「ええええ?なんで分かるの?オマエはエスパーか」

というのを毎週やっていた(汗)。誰でも予想つくわ、そんなん。

 残念ならが、私にゴルフの趣味はない。そしてショッピング全般にも関心がない。ファッションにもお化粧にも関心がない。欲しいのはKindle書籍と珈琲とITガジェットくらいなもんだ。だいたいネットで買える。

 たとえばだ。私が「ショッピング大好きな女性」だったとしよう。そして毎週ダンナにおねだりするのだ。

「『ねぇねぇ、今度の週末はプラダのバッグ買いに行きたいんだけど、いい?』とか言う奥さんだったらどーするの?お金かかっちゃうよーっ!!」

と聞いてみた。

「わー、いいねー。行く行く!!オレ、そういうのやってみたかってん!!毎週でも『お前、好きなもん買うてええぞ』って言うて、ブランドの紙バッグとか両手に持たされてるの、やってみたかったわー。オマエがそういう趣味ないからつまらへんねん!」

などとのたまう。

今度、新型iMacの全部盛りおねだりしてみたろか。

 そんなカナメなので、ショッピング誘導がものすごい。

掃除機の吸い取りが少し悪いかもなぁ、ちょっとクリーニングしないといけないかなぁ、などと私が言うが早いか、

「買う?新しいの買う?」

と即座に反応し、ネット検索し、最も高レビューでかつコスパの良い機種を探し出し、それがどこで手に入るかの店舗検索もして、今度の週末に行こうか、いや何なら明日の会社の帰りに待ち合わせして(=私が車で迎えに行って)買いに行こうか?とか言い出す。

は?まだ使えるのに?多分クリーニングすれば問題なく動きそうなのに?なんで新しいの買うの?趣味なの?買いたいの?

「うん。買いたい」

よくわからない……

 カナメの最も食いつきがいいのは、こういった家電系のモノの話題が出た時である。

「うちの母がブラーバ使っててね、あれ便利そうだよね」などと言うと

「お、じゃぁ買うか♡」になる。

これがいわゆる普通名詞にある「リテールセラピー」ってやつなのかも。


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