3.19 ショールームをハシゴしてIKEAにたどり着く

 リノベの計画を立て始めてすぐにミズキさんに手渡されたものがある。フローリングの素材見本だ。もともとリノベを行うフロアは、すべてフローリング材が敷き詰められていたので、カナメはぎりぎりまで「フローリングの張り替えはいらないんじゃない?」とブツブツ言っていた。実際のところ、畳をはいでみたら下から「え?新築?」と思うほど状態の良いフローリングが出現したから、彼の気持ちは分からないでもない。

 コストを下げたいと言う気持ちは私も同じだったのだが、そのフローリングの柄は「40年前に流行ったであろう、いかにも」な柄であった。日本の学校の教室を彷彿とさせるその柄が、私はあまり好きではなかったので、フローリングだけはすべて交換したいと思っていた。

 ミズキさんからは、フローリングもピンキリで、クッションフロアにすると安くなるし、最近はデザインも豊富に出ていて、それほど悪いもんではないと聞いていた。カナメは半信半疑だったようだが、私は昔風の柄が消せるならクッションフロアでも何でもいい!と思うほどだった。

 カナメは意外と繊細なところもあって、見かけの美しさよりも、ホンモノの質感がもたらす重厚で深いテクスチャーを好むところがある。と同時に、古いものに息吹を吹き込む系も大好き。私は、とにかく都会的で合理的なものが好き。古くて汚れが目立つなら一気に隠してしまいたい方だ。状態はよかったのだが、なぜか部屋によって色味が異なっていたのも気になる点だった。

そのため、設備だけではなく、壁紙や床材のショールームにも何度も足を運んだ。

 確かに、今の床材というのはバリエーションが豊富で機能性も抜群だった。そして素材によって価格も大きく違う。施工するフロアの面積を敷き詰めるといくらになるのか計算したりもした。サンプルもその場で持ち帰ることができる。それにしても壁紙や床材のショールームは若いカップルが多くて、新築か中古か分からないが、内装に手を加えられる物件を、すでに彼らが持っていることに「若いのに偉いなぁ~」と感心したりもした。

 それだけではなく、ネット通販にもサンプルを請求できるサイトがあるので、色々な素材を取り寄せておいた。私たちが考えているカフェ的オフィス空間の素材として考えられるものを、色々と手元に集めておいて、結論は少し後にしようということになった。ミズキさんの言う通り、実際に作業を始めてみないとわからないものもあると思ったからだ。実際に床や壁に置いてみて、その時の直感で選べばいい。

 次に個別の設備をそろえていく。これは注文してすぐ来るわけではないから結論を急がなければならない。

 海外暮らしが長かったので、各国のIKEAにはお世話になった。特に大好きというわけではなかったのだが、数年住むだけの家に配置するには、コストも含めて合理的な選択肢だった。だから思い入れは一切なかった。もう日本に帰ってきてまで、IKEAに頼ろうとは一切思っていなかった。

ところが。

Pinterestに出てくるイメージは英語圏のものが多く、どれもこれも日本では手に入らないものが多かった。

 家具については、ニトリは意外とオシャレな商品を廉価で出していて競争力あるなという印象だった。逆にMUJIは高価格でハイセンスに見える割には、家具の作りが頑丈ではなさそうに見えた。以前は大好きだったのに悲しい。我が家のダイニングテーブルは20年以上前に大塚家具で買ったものなんだけど。この20年の間に、家具業界も色々とあったね......

 なかなか自分のテイストにドンピシャ!とはまるものがない中、IKEAに行くと、「そうそう、それそれ。探してたものがここにあるやん!」と思う。自分にとって見慣れているものがIKEAのそれであった。そしてIKEAは合理性を具現化したようなブランドだ。

 日本に戻ってきて初めて、IKEAっぽさが日本では異質な側であり、配送や組み立てなどのオペレーションに至るまで、日本とは異なるカルチャーなのだと気付いた。そして、その価格設定が非常にシンプルでわかりやすい。スタッフさんもプロフェッショナルだ。こちらが好きでもないものを強引に勧めるられることなど一切ないが、どんなイレギュラーな質問でも、その場でテキパキと答えてくださる。めっちゃカッコいい!!

 そしてこの感動は、キッチン選びに決定打を打つことになる。つまり、キッチンも日本っぽくなくてユニークであったのだ。今までずっと、海外でも当然、賃貸暮らしだったので、IKEAのシステムキッチンを興味をもって見たことなどなかった。ところがいざキッチンを自らデザインする必要があって改めて見てみると、それは非常に魅力的な選択肢に見えた。

たとえば、国産メーカーのキッチンは(最近は3段階くらいの高さのオプションがあるが)、164センチの身長の私には低いと感じることが多い。低いなと感じるだけなら良いのだが、実際は腰を曲げる必要があって、腰痛持ちの私には苦痛でしかない。IKEAのキッチンの高さは、私にはパーフェクトだし、何より個性的。

 ちなみにシステムキッチンをIKEAで注文するには、必ず有料の下見(スタッフによる測量)をお願いする必要がある。そして、そのサービスは指定エリア内に限る。それ以外のエリアの場合は、IKEAキッチンの設置実績のある地元の工務店さんにお願いする必要がある。

と言っても、私たちがIKEAのシステムキッチンをオーダーする気は元からなかった。やはり色々とオプションをつけると高額になるし、アイデアだけを盗ませていただいて、いやもっと言うとシンクだけ買っておいて、大工さんにキッチン台を作っていただこうかと思ったりもしていた。

が、見つけてしまったのだーっ!!!

私が考える、最小限の機能性を備えるミニキッチンで、センス良くて、かつ「安いやつ」が!!!!

IKEAにあった!これだっ!

SUNNERSTA ミニキッチン

なんと、2万円台だぜっ!!!

これなら自分で作る必要もない。実際に見てみると、写真で見るよりもシッカリしていて、ガタガタすることもなく、意外とちゃっちく見えないのよ。

これに好みの水栓をつければOK。

シンク横のステンレス台は、普段は作業台として使うのだが、熱源が必要な場合のみ、ポータブルのIHコンロをおけば調理も問題はない。横に棚を設置して、ホットクックとヘルシオを置けば完璧だ!

そしてポイントは、シンク下の空間がまるまる使えることだ。これだけの大きさがあれば、食洗機を後から設置することなど簡単だろう。

ここにたどり着くまで長かったよーん。でもやっと見つけた。

 キッチンが決まれば、方針が決まったも同然。このサイズならキッチンエリアのスペースもさらに有意義に広く使える。

作業が始まるまでに一気に設備を注文しないと!

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