3.12 リノベの最重要ポイントはキッチンだ

 ミズキさんは言う。

「カナメくん、キッチンだけはバンリさんの言う通りにした方がいいよ。いらんこと言わないでね。一番長い時間使うのは彼女でしょ?ボクは色々な家を建ててきたけど、一番いろいろと注文があって、お金もかかるのがキッチン。それはそれは奥様方は色々理想を語ってくれるよ。この前建てた家なんて、キッチン周りだけで◯百万円。床の素材も独特だったね。ボクなんか、え、その素材だったらお茶碗落としたらすぐ割れるよとか思って、一応言ってみたけど、それでもいいんだってさ。

まぁキッチンさえ決まれば、あとは残りのスペースをどう区切るかだけだし。位置さえ決めて、設備はこれでって指定してくれれば。うちは工務店だからメーカーから◯掛けで買えるから、型番だけ教えてくれれば注文かけるよ。届くまで2週間くらいかかるから早めに教えてね。でも、ぶっちゃけネットで注文した方が安いから、そっちで用意しておいてくれればOK。給排水の工事の時にはモノはあったほうがいいからね。到着が間に合わないようなら、サイズだけ計っといて。」

要するに、壁から何センチのところに排水口が来るのか、水栓の取り付け位置は床から何センチの位置にあるのか。それさえ分かれば基礎工事はできるらしい。

いきなり話が一気に具体的になってきた。早くキッチンのオーダーをかけなければ。

 この日から、理想のキッチンを求める旅にでることになる。各メーカーのショールームめぐりをするのだ。が、いかんせん田舎なので、私の実家がある大阪のように「梅田に行けば、主要メーカーのショールームのほぼ全てにアクセスできる」なんてことは一切ない。文字通り「旅」である。長距離バスに乗って一泊二日でショールーム周りというのも複数回したなぁ.......

最初のうちは、キャッキャとステキなキッチン回りで大騒ぎしていた私も、現実に引き戻される瞬間がある。

実際に見積もりを取るとどうなるのかなと思い、お姉さんに相談して作って頂いたキッチンの見積書は、どれも軽々100万円超えになる。

高すぎるだろ、おい......orz

実は。実家の6階に義母が住んでいた時に一度、システムキッチンの総入れ替えをしたことがある。その時のコストが90万円程度だった。そして、その「フルシステムキッチン」を、今は誰も使っていない。いざとなれば別フロアではあっても、キッチンは、あるにはある。

カナメは言う。

「キッチンは6階使えばええやん。既にあるんだし。確かにフロアが別で玄関を出入りしないといけないから、普通の戸建ての二階に行くのとは違うから、5階にキッチンが欲しいと言う気持ちもわからないではないけど。」

キミ、ミズキさんのありがたいお話、じぇんじぇん聞いてなかったのね!キッチンについては、私の言うこと聞いたほうがいいよって言う話ねっ!

 長年自宅SOHOである私にとって、すべてのエリアへのアクセスがシームレスであることが望ましい。そのための自宅オフィスだ。煮物ができたら仕事の手を止めて味見をして粗熱をとるとか、お手洗いに行ったついでにチャチャっと掃除するとか。洗濯機の終了ブザーを聞いて、洗濯物を干しに行くとか。隙間時間を有効活用することで、逆に仕事の時間を最大化することだってできる。このスタイルで長年やってきた。今さらリノベして不便な方に突き進むとか、わけがわからへんがな。

っていうか。ぶっちゃけ水が流せるシンクがあれば、もうそれだけでいいような気もしてきた。レンジやホットクック調理だけなら、大型の換気扇など必要ないかも.....

 そんな時に、Sanwa Companyのショールームに出かけていった。

本腰を入れてキッチンを決める気で来たのだが、ここに来るのは2回目。前回、たまたま立ち寄った時に、あまりにも私好みの設備だらけで、私がワーワーギャーギャー大騒ぎしてスタッフさんに色々と質問したかったのだけど、即日は無理で、詳細については専門スタッフさんとのアポを取って相談することになった。

この時は、五分五分の確率で、ここのキッチンにしようと考えていたのだが、いかんせんそんなミニキッチンに食洗機をつけるのが難しいということがわかった。そして、シンプルな割には強気の価格設定なのである。まぁデザイン性重視だからね。

 そしてガラス張りのシャワールームにも目が止まった。

海外生活が長かったので、そのスタイルにはなじみがある。広くとれない水まわりもガラスで囲えば広く感じるかも知れないと思ったのがその理由だったのだが、想像よりも高額であり、我が家のリノベの制限上、2面をガラスにできるような場所もなく断念した。いろいろと制限事項がボディーブローの様に効いてきていることを感じたりもした。「いいな!」と思っても、それが実現できないとなると、また振り出しに戻って再考せねばならず、日々気分的なアップダウンを繰り返しているうちに、どんどんと疲れてきた。

お金さえ出せば、システムキッチンがジャーンとできるなら、もうお金で解決したろか........とさえ思い始めていた。誰かが「これにしなさい」と決めてくれるなら、もうそれでいいかもとも思った。

 世の中のリノベをチャキチャキと進めている人たちを思うと、彼らが天才に見えてきた。こういう葛藤をすべて解決してきたのかなと思うと尊敬してしまう。

キッチンが決まらなければ、それ以外の部分のデザインも決まらず.......。そんなプレッシャーを感じながら無情にも時間だけが過ぎていった。


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