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"Wee for a Wii " に学ぼう!

台風が来ている影響で、スーパーやホームセンターからものが消えてきている。
水は全く売っていないし、カップ麺やパンがなくなっていて今日のお昼は「ふんわり名人きなこ餅」になった。美味しいけど。
台風はまだまだ遠くにいるが、風も出てきており今日は涼しいくらいだった。もう秋はそこまで来ているのだろうか。

今年の夏は「水中毒」のニュースを割とみかけた。
元々は精神科領域で気をつけるべき症状であったが、最近では患者さんから聞かれることも増えた。

以前MR(製薬メーカーの営業)をしていた頃、とある精神科病院を訪問中に、入院患者さんがふらっと出てきて外の自販機で500mLの缶コーラを2本一気飲みして帰っていくのをみたことがある。
先生にその話をすると「よくあるよねー」と意に介さない様子だった。1LくらいならOKという判断だったのだろう。

意図せず水中毒になる原因はいくつかある。

○不安・幻覚・妄想・焦燥などの精神症状から、多飲傾向になる。
○向精神薬による副作用で口渇が生じる。
○精神薬を長期的に服用すると、視床下部の口渇中枢を刺激して、さらに抗利尿ホルモンの分泌が促され、水分貯留を起こす。
○ストレスなどにより、多量の水分を摂取する

精神症状から水中毒になることもあれば、副作用として現れることもある。
例えば、ジプレキサ(統合失調症・双極性障害・うつ状態治療薬)の副作用には0.1-1%に現れる副作用として記載がある。

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水中毒の症状はなぜ生じるのだろう?
前段が長くなったが、今日は尿のお勉強である。


◼️尿量を計算する

尿量はどのように決まるのか?
飲水量によって影響を受けるが、厳密には摂取した「溶質の量」と「尿浸透圧」によって調節されている。その結果、通常は、水分摂取量に応じた尿量になる。

[尿量]L = [摂取した溶質の量]mOsm / [尿浸透圧]mOsm/L

(単位は気にしなくて良いが、Osmはオスモルと読み、物質が水に溶けたときの分子やイオンの物質量を表す)

◼️腎による水分調整

腎は「尿浸透圧」を調節することで、体内の水分量を調節している。尿浸透圧は尿の濃さとイメージして良いだろう。尿浸透圧が高いと濃い尿になる。
正常に腎機能が働けば、尿浸透圧は50〜1200という幅を持って尿量を調節する。
腎機能が低下してくるとこの幅が狭まってくる。

通常、1日の摂取溶質量は約600である。
つまり、尿量は0.5L〜12Lで調節できる。これをもって400mL/日以下で欠尿とされている。

◼️偏食になると?

摂取溶質量が減るとどうなるだろう。
200まで下がったとする。
尿浸透圧50とすると、尿量は4Lである。通常時12Lまで調節可能であった水分量が減ってしまっている。
4Lを超えて水分摂取した場合、体内にオーバーした水が貯留することになる。
体内の水分量が増えると低ナトリウム血症になるリスクが高い。
ダイエット中や忙しくて食事が偏っている人は注意が必要だ。

◼️Wee for a Wii事件

タイトルで水中毒のことだとピンとくるだろうか?(私は知りませんでした)
2007年にアメリカのラジオ地方局で水飲みコンテストが行われた。優勝商品は当時大人気であったWii。
子供のためにと参加したとある女性が7Lの水を飲み干し優勝したが、その後死亡してしまった。

通常であれば7Lは許容摂取量だ。
だが、あまりに短期間で摂取したため、腎での排泄が追いつかなかった。

水中毒は急性の低ナトリウム血症だ。
軽症だと、めまいや浮腫、下痢、頭痛、頻尿がみられる。
重症になると脳にも浮腫がみられ、錯乱、意識障害といった中枢神経症状があらわれてくる。


夏場の水分摂取は大事だが、一気にとらず、こまめに少しずつが良いようだ。気をつけよう!


ところで1つ思い出したことがある。
小学6年生の頃、放課後校庭で遊び喉が渇いて近くの駄菓子屋に飲み物を買いに行った。すると、いつもは定価のアクエリアス2Lが100円で売っており、その安さに感動して2本買って喉の渇きに任せてグイグイ飲み干した。
その後校庭で遊んでいたが、帰り際ものすごい腹痛に見舞われトイレで瀉下した。吐き気もあり、あれはきつかった。

私はアクエリアスが傷んでいたと思い、そのことを吹聴してまわった。「あの店あかんで!」と。
思えばあれは水中毒の軽ーいものだったのだろう。
あの駄菓子屋には申し訳ないことをした。

ほんとに。


蛇足でした。


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