#04 コーチングに不可欠なのは客観性と共感、「今」を意識すること
~過去投稿はマガジンから~
具体的なコーチング手法についてお話ししておきましょう。
コーチングを行う際、コーチにもっとも求められるのは、相手の話に意識を集中し、傾聴することです。これを集中的傾聴といいます。
コーチは相手が話している言葉を繰り返しながら聴き、表情や態度、声のトーンや抑揚など「非語」を感じ取りながら聴きます。
と同時に、目の前で起こっている事象だけでなく、なぜ相手がそのような状況になっているのか、その「阻害要因」を感じ取りながら聴きます。
コーチが話す時は、相手に発言の許可をもらってから話すのが基本です。
例えば「今、感じたことをお伝えしてもいいですか?」「一つ情報があるのですが、お話ししてもよろしいですか?」という具合です。
これを行う理由は、相手の自発性を損なわないためです。
コーチングの相手が、特に折れやすい世代、怒りやすい世代の場合には、客観性を持つことが重要です。
相手が抱えている問題は「相手のもの」ですから、コーチも一緒になって背負う必要はありません。
相手の話を聴きながら、「わー、それはしんどい」「大変だぁ」「辛いね、それは無理だね」などといってしまう人がいます。
これはくるくる回っている洗濯機の中に投げ込まれたハンカチのようなもので、同情であり、コーチングではありません。
相手に同情するのではなく、「今、そういう状態なんだね」と共感すればよいのです。
共感を示す時に大事なポイントは、「今」という言葉を添えることです。
ちょっと先の未来は、その時の状態とは違った何かが起こっている可能性があるからです。
私がコーチングをする時、「今、私がこの人のためにできることは何か?」という具合に、私自身も「今」を意識した自己質問をしつつコーチングをしています。
もう一つ私が心がけているのは、「相手の中に答えがあることを、相手以上に信じる」ということです。
これは、まだ私がコーチングを学んでいる時に出会った言葉ですが、今でもこの言葉を念仏のように唱えながら相手に向き合っています。
コーチングとは、相手の話を傾聴し、感じたことを伝えて承認し、質問することで、相手に自発的な行動を促すコミュニケーションスキルですから、ゴールへの答えは相手の中にあると、相手以上に信じなければ成立しないのです。
※本コンテンツはCOCORO 36号をもとに再構成しています
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著者プロフィール
小野仁美(おの ひとみ)
群馬県沼田市出身。株式会社リクルートに入社、就職情報誌の編集を担当。
株式会社東京ストレスマネジメントに転職し、ストレスマネジメントセミナーやコミュニケーションセミナー等を担当。
その後、新規事業部を立ち上げ事業部長として営業と運営に従事。
1999年、株式会社コーチ・トゥエンティワン設立に伴い取締役就任。
アメリカのコーチユニバーシティのマスターコーチに師事。
米国ICF認定のプロフェッショナルコーチの資格を取得後、2000年に独立。
株式会社ビューティアンドサポートを創業し代表取締役社長に就任。
経営者や管理職、起業家、医療従事者、各種専門家など個人向けのコーチングを多数実施。
企業内研修、企業内コーチの育成やエグゼクティブコーチング、ビジネスコーチングをはじめ、現在も多数担当。著書に『自分は自分で変えられる』(PHP研究所)、共著に『周りの人をハッピーにする!はげまし言葉ハンドブック』『コーチング一日一話 今日から始める「気づき」の365項目』(以上、PHP研究所)などがある。
株式会社ビューティアンドサポート取締役社長プロフェッショナルコーチ