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『私にとって話すことは"痛み"を和らげること、そして過去を忘れないこと。』日本に暮らす難民当事者が、アンバサダーとして伝えたいこと

以前ウェルジーマガジンで紹介をした、難民申請者(以下、難民)のキャシーさん(仮)は、WELgeeが企業や学校、自治体などに提供する研修や講演にて、「アンバサダー」(講師)として何度も登壇しています。

難民としての背景を持つ彼女が、自身のストーリーを通して、日本の人たちに何を伝えたいのか、そしてなぜ「伝える」ということを続けるのか?
今回は、WELgeeアンバサダー(講師)の中でもカリスマ的な存在であるキャシーさんにインタビューをしました。

私たちの講師『アンバサダー』

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「アンバサダー」とは、難民の背景を持ち、様々な困難な状況を乗り越えてきた強い精神の持ち主で、ともにこれからの日本社会の可能性を切り開いていくパートナーです。「アンバサダー」は日本に暮らす難民の人たちの中でも、リーダー気質があり、社会をより良くすることに情熱を注いでいます。

WELgeeが実施する講演と研修

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WELgeeでは、様々な教育機関や団体で講演を行っています。講演では様々なテーマを扱い、グローバルな社会課題をできるだけ身近に感じられるように設定しています。

また、研修では「アンバサダー」の祖国や日本での経験にまつわる「生の声」をもとに、変化の目まぐるしい現代社会において「自らの手で可能性を切り拓いていく力」について考えていきます。

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▲ 2019年12月に行われたコニカミノルタ社向けの次世代リーダー育成『アクセス』では19名の社員が現場のフィールドワークを3ヶ月間行い、難民の活躍施策を提案。事業部長とWELgeeの渡部・玉利が評価をする様子。

各企業や組織それぞれの課題や思いに合わせ、柔軟に研修の形を変えてきました。研修を始める前に、依頼者様と共に組織の課題を発掘するところから始め、その組織にとって効果の高い研修を提案します。

今回お話を聞いた、キャシーさんの紹介

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東アフリカ出身。大卒、経営管理専攻。40代前半女性。
中東や中国からアフリカに商品を仕入れ販売する小売業を個人で営み、一方ではケニアやタンザニアにて、グローバルカンパニーの市場調査を経験。
スワヒリ語、英語が堪能。日本語は学習中。WELgeeセミナー事業部の開催する研修や講演で「アンバサダー」として登壇をすでに何度も経験。研修/講演参加者との対話を通し、自分の国から逃れてきた過去、そして日本での難民申請者としての生活を「アンバサダー」として日本社会へ伝えている。彼女の力強いメッセージは多くの参加者の心を動かしている。

ーー  WELgeeセミナー事業部では、研修や講演で登壇してくださる難民の方を「アンバサダー」と呼んでいます。キャシーさんは、その「アンバサダー」をどのような存在だと捉えていますか?

私にとっては、「アンバサダー」とは、国、組織、難民であること、ステータス、文化、経験、そしてその人自身を表現する者です。「アンバサダー」は外の世界へ一歩踏み出したことがない日本の人たちに、祖国や日本で経験したことを伝えることができる存在だと思います。

ーー 研修や講演で特にキャシーさんが意識していること、大事にしていることなどはありますか?

私たちアンバサダーは、私たちの大変な状況を伝えるためだけに、研修や講演に参加しているわけではありません。私たちにはほかにも日本のみなさんに伝えられることがあるんです。

よく私が思うのは、自分に自信が少なかったり、あまりオープンでなかったりする日本の人たちが多いということ。もしかしたら、研修/講演の参加者の中には、過去の私のように、家族の問題、LGBTとしての悩みや、人にはなかなか相談できない悩みを抱えている方もいるかもしれません。

そんな人たちに、私が大勢の前で自信をもって、力強く話しているのを聞いてもらえたら、彼らにも私の持ってる自信やパワー、勇気をシェアできると思うんです。研修や講演は新しいことを知る教育的な機会でもありますが、自分自身について学び、足りないこと(自信、強さなど)を手に入れる機会でもあります。

ーー キャシーさん目線で、研修や講演にアンバサダーとして参加するメリットは何ですか?今振り返って、よかったなと思うことなどがあれば教えてください。

もちろん、私も最初から人前で話すことが得意で自信があったわけではありません。

研修や講演のためアンバサダーになるためのトレーニングプログラムで、人前で話す経験を積んで、アイコンタクトやボディランゲージの仕方を学んだことで、大勢の前でも自信を持って、恥ずかしいと思わずに話すことができるようになりました。

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▲ 2019年12月に行われたソーシャルヘルスケア経営塾でご自身のライフストーリーを語り、グループワークを実施したキャシーさん。

正直、大勢の人の前で自分の過去について語ることは簡単なことではありません。ストレスフルです。なぜなら、たくさんの辛かったことを思い出すことになるからです。

難民当事者の中には、自分の過去について話せない人も大勢います。
でも、自分の過去について話さないと、自分の中にある「痛み」はずっとそこにあるまま、なんです。もちろん自分の過去について話すことは「痛い」です。だけど、私にとって、話すことはその「痛み」を少しずつ和らげる方法でもあります。話せば話すほど、その「痛み」は薄れていく感覚です。

自分の過去について話すことは、忘れないためでもあります。
もしかしたら、今、話すことをやめたら4年後、5年後に正しく思い出せるかわかりません。もし、入国管理局で自分の過去について正しく話せなかったら、、、。

彼らは私がなぜ日本に来たのか質問するでしょう。その時に自分の過去を正しく伝えることで彼らに私が難民だと理解してもらう必要があります。私の過去、それ自体が証拠の一つになるわけです。

どんなに些細なことでも覚えておかないといけないんです。例えば、飛行機のチケットがいくらだったか。そういうことって4年後、5年後にはきっと忘れてしまっていますよね?

だからこそ、自分の過去について語り続けることが大事なんです。

少し前に、日本で仕事の面接を受けたときに、私がなぜ日本に来たのか話さないといけない機会がありました。自分のことを上手く説明できないと、相手にちゃんと理解してもらえない。研修や講演で自分のことについて伝えていた経験が、その時、直接役に立ったと感じています。

研修参加者の声

研修事業

最後に、過去にキャシーさんの講演に参加してくださった参加者の方たちの声をいくつか紹介させていただきます。


「キャシーさんのスピーチ、勇気をもってお話してくださったと思います。感謝です!」

「彼女は多くの大変な事を経験したにも関わらず、それでも人を信じ続ける姿勢が印象的でした。」

「自分の経験を話すことはとても勇気のいることです。聞いたことで聞くだけで終わりにしてはいけない。何か責任のようなものが芽生えました。」
「当事者の生の声がとても響きました。そして難民当事者が語ることはその身の危険、家族の危険、また自分自身の体験を振り返る事の困難さも含めて、決して易しい事ではないと実感しました。」
「キャシーさんのストーリーには実体験としての迫力がありました。壮絶な人生経験をお持ちで、これからの自分の人生を見つめ直すきっかけとなりました。」
「どれだけ自分を偽っても、ありのままの自分は花のように咲いて周りに見られてしまうという言葉がとても心に刺さった。ありのままの自分が花のように咲いても自信が持てる、自分を偽らなくてもいい世界にもっと近づいていければなと思う。」
「生まれ育つ環境のなかで、さまざまな気持ちと葛藤と、こんな苦しい思いをされている方がいること、まだまだ理解が足りないこと、自分を貫き通す信念の強さから、自分が今後何をしたいかを気づくことができました。」

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▲ 2019年7月に行われたNPO World in Tohoku(WIT)での研修でワークショップを行ったキャシーさん。

おわりに

今回のインタビューいかがだったでしょうか?

今回紹介させていただいたキャシーさんの他にも、現在、様々な背景を持ったアンバサダーが活躍しています。

講演は、企業、教育機関、各種団体様向けに幅広くテーマも様々で、現在はオンラインで行っております。

「アンバサダーのことをもっと詳しく知りたい!」
「WELgeeの研修/講演についてもっと詳しく知りたい!」

と思った方は以下からお気軽にご連絡ください!

そして、2020年9月20日に山梨英和大学 Good Samaritans様が主催する難民とともに考える私たちにできること〜現状、そしてこれから〜というイベントにWELgeeが「アンバサダー」と共に登壇します!下記がイベントの詳細となっております。皆さまの参加をお待ちしております!

紫 世界自閉症啓発 Facebookイベントカバー

日程:2020年9月20日
時間:14:00-16:00
料金:無料(どなたでもご参加いただけます。お気軽にお申込みください。)

ご参加方法:Zoom
お申し込み方法:下記のURLもしくはQRコードからお申込みください。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeZRPiYgLPVT_CB4Fy4iBHhJI2i_FuAsB7PhrkzN5dBDZ9rlg/viewform

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