妊娠することは人生のもう一つの道を歩くこと

前回の記事の続きになります。


今回はきっかけとなった一人目のママをご紹介します。



「赤ちゃんかわいくない」



助産師として勤務をはじめて病棟勤務に慣れてきた頃入院していた

ママの言葉でした。


初めてのお産を終え、2日目の赤ちゃんとの生活。

そんななかでママの口からポロっと出てきたその言葉は

とても衝撃的で信じられませんでした。


10か月間、お腹の中で大切に育てて出産を乗り越えて。

誰もが幸せ絶頂な時期だと思い込んでいた私は、このママに対して悲しいというかかわいそうというか、何を言っているんだと思っていました。

まったく赤ちゃんのお世話をしないわけではないし、最低限のことはしていましたが明らかに赤ちゃんへの接し方が違いました。

じーっと顔をのぞき込んだり、笑顔で見守る様子だったり、

そういうのはなかったのです。

赤ちゃんに対してあんまり興味ないのかなって感じるくらいでした。


赤ちゃんに対して愛着があまりなさそうということで

病棟のスタッフの中でもこのママについては注意してみていて

関わるスタッフはゆっくり話を聞いたりして

ママの想いを吐き出せるようにしていました。


その中でわかったこと。

「すっごい赤ちゃんが欲しかったわけではない。

 赤ちゃんの顔が義母さんに似ているからかわいいと思えない。

 義母さんとは折り合いが悪くて、面会も来てほしくないけど断れない。

 出産も大変で、思っていたのと違った。授乳もうまくいかない。

 こんなに大変だと思わなかった。」


なるほど、顔かぁ。

ただお顔は意図してどうにかできるものではないので

私たちは赤ちゃんのひとつひとつのしぐさを赤ちゃんの気持ちをのせて

言葉にすることでプラスにみてもらえるようにしてみたり。


出産や授乳に関する情報を妊娠中からお伝えすることで

もう少し心構えができたら違うかもしれないと両親学級の内容を考え直してみたり。


ひとりひとりの出産は違うからこそ、出産の振り返りをして

ママの認識と事実が異なっていないか、出産体験がママにとって成功体験、達成体験として認識できているかを確認したり。


わたしたちにできることは結局その程度で

退院したらたくさんの親子はわたしたちの目の届かないところで生きていかなければならない。


だからわたしたちができることはどんなに小さくてもやらなければと思うようになったのです。


そして、ママとなる女性が自分の人生を選択できるように。


固定観念や周りの意見、プレッシャー、社会からの目。

とても気になりますよね。

批判されたくないし、置いていかれたくない。


でもそれって本当に自分が望むことなの?

自分はどうしたいんだろう?


そのことを考えられる力を

妊娠する前から、妊娠してから、出産してからも発揮できるようにしていけたらなと考えるのでした。


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