出産終わったから今までどおり はちょっと違う

今回はきっかけとなった二人目の患者さん、Iさん(仮)。

一人目の患者さんについてはこちら↓


Iさんはもともと持病をもっていました。
てんかん発作です。

助産師として働き始めて数年目、
てんかんの治療をしながら妊娠・出産する方をみてきた私は
Iさんにおいても注意をしながら関わっていました。

妊娠においても順調で
出産もスムーズ。
育児に関しても初めは不慣れさがみえましたが
手技も徐々に体得し退院の日の前日を迎えました。

わたしは退院に向けてのお話をする担当だったので
ご主人の面会時間に合わせて訪室しました。

なぜなら育児はママ一人で行っていくことではないから。
そしてママの身体を守れるのは

ママ自身とパパとの協力が必要不可欠と考えたからでした。

パパも同席の上、一般的なママの産後の身体・精神的部分の変化、
赤ちゃんのことなどを説明し
加えて、てんかん発作との付き合いかたについてもお話しました。

個人差はありますが、わたしが関わったことのある現病歴にてんかんをもつ方は、大多数が”疲労・ストレス・睡眠不足”などからてんかん発作を起こす可能性が高いという方でした。


Iさんも上記のようにおっしゃっていたので、なるべく休めるようにしていくには周囲の方の力も必要であることやとにかく無理をしないこと、内服をしっかりすることなどを再度お伝えしました。

Iさん自身、ご主人は理解し、納得されたようにみえました。

その話をしている中、Iさんのご両親も面会にいらっしゃったため、
このようなお話をさせていただきましたと伝えると
衝撃的な言葉をお話しされました。

「わたしたちは今までずっとこの子の発作などもみてきました。
 本人もわかっていると思います。なのでそんなに心配しなくても大丈夫です。」

この言葉を聞いて、そうですか・・・としか答えられなかったわたし。
産後はただでさえ疲れているのにそこに未体験な育児も追加され、
そんな中でストレスなく疲労なく過ごせるとは思えないので
みんなで育児してほしいなぁと心の中で思いながら退院を見送りました。


その5か月後。
ICUに当院で出産された方がいると聞き、詳しく情報収集をすると
なんと、そのIさんでした。

てんかん発作の治療も継続しており、症状が落ち着いていたため薬の減量をしたところだったようです。
夕方、ご主人から119に連絡があり搬送となりました。
家にいるIさんからご主人に電話があり、他愛もない話をしている最中に突如倒れた音がし、反応がないため救急車を呼んだとのこと。
Iさんはてんかん発作で倒れていました。

一命はとりとめたものの、なかなか意識は戻らず。

そこから7日後。
ICUのベッドでご主人と5か月の息子さんに寄り添われ、亡くなりました。

実際のところ、疲労がとてもたまっていたとこ、睡眠不足が続いていたとか、
てんかん発作の誘因となることがあったのかどうかはわかりません。

ご両親も協力的でみんなで育児できていたのかもしれません。

でも、私の中ではあの言葉がとても心に残っていて

何の合併症がない出産・育児でもさまざまなリスクがあるのに
合併症があるならなおさら周囲の理解、協力が必要であると感じたのです。

だから出産を終えて、また今まで通りで大丈夫。
ではなく、
本人も、周囲の人も今まで以上に気を付けるという姿勢でいてほしいと強く感じた患者さんでした。



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