#30 牛乳瓶のフタを集めていた
牛乳瓶のフタを集めていた。
それはもう狂ったように集めていた。
時はやんちゃよろしく小学生時代。
うちの学校の男子共はドッヂボールよりもハンドベースよりもSケンよりも牛乳瓶のフタに全ての熱量を注いでいた。
牛乳瓶のフタを多く持つことこそ富・名声・力であると信じていた。
そこには個々人の様々な思想・謀略・競走が介在し、小学生ながらに初めて経験した資本主義社会の縮図でもあった。
そんな思い出を語ろうと思う。
読者にはただのゴミに見えるかもしれない。
ただこの牛乳瓶のフタは言わばポケモンなのだ。
私達は休み時間も放課後もこの牛乳瓶のフタを集め、交換し、戦わせていた。
ここではより一般的なスタンダードレギュレーションに沿って話を進めさせてもらう。
スタンダードレギュレーション
・参加人数は4名
・互いの持ちフタを1枚ずつ表向きでバトル場中央にセットする
・ジャンケンで手番を決める
・順番に手をパンッと叩き、風圧で牛乳瓶のフタをひっくり返していく
・全ての牛乳瓶のフタが裏向きになったとき、最後の手番のプレイヤーが勝利となりフタを総取りする
このようにしてフタを戦わせ、収集していた。
さらにフタによってレートが異なり、そのレートについても学年を超えての共通認識であった。
例えば給食に出てくる『ミルクン』は最もレートが低く、初心者達は『ミルクン』をどれだけ集められるかに精を出していた。
毎日1枚は入手出来るためログインボーナスのような存在でもあった。
レートを語る上で欠かせないのは『森永』であろう。
『森永』は最も多くの家庭で購入されており、流通量も課金フタの中ではダントツであった。
全ての課金フタは「森永何枚分か」で評価されていた。
『共振牛乳』シリーズは約3森永。
共振シリーズは種類によらずレートが一律なため、共振シリーズのみを収集するコレクターもよくいた。
『チチヤス』は中々スーパーには売っていないが何故か高額通貨としてある程度出回っていた。
レートは約5森永。
噂によるとチチヤスを家庭で頼んでいる上級生がいるらしく、そこから下級生に少しづつ流通していたとのこと。
消しゴムを借りる時や宿題を見せてもらう時に「チチヤス1枚なw」という冗談が流行った。
宿題を見せてもらう適正レートは森永1枚だ。
ああ、懐かしき思い出。
語りつくせないほどの魅力があるが長くなってしまうため割愛する。
私の小学生時代一番の思い出はレアなフタを集めるためにわざわざ岡山まで家族で旅行したことだ。
私の相棒『蒜山ジャージーバター飴』は今どこにあるのだろう。
ちなみにこの遊びは小学校4年生の頃、
給食が牛乳パックになり一気に廃れた。
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週刊ウィークリーついに10周目。
今周のテーマは「幼少期/子供時代」でした。
なぜか流行っていた謎の遊び。
皆様の地域にはありますでしょうか。
よかったらお聞かせください。
来週もお楽しみに。
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