見出し画像

「作業幇」シリーズEラウンドの資金調達 ー教育の春、再度到来?

要点:
①「作業幇」シリーズEラウンドで7.5億米ドルの資金調達を実施
②教育の春が訪れる中、混戦が続く中国のEdTech市場
③「作業幇」、「猿補導」がEdTech市場をリードする中、注目を浴びるバイトダンス
——

        6月29日、中国のK12(幼稚園から始まり高校を卒業するまで12年間の教育期間)EdTechサービスのトップを走る「作業幇」(Zuoyebang)がシリーズEラウンドで、方源資本(FountainVest Partners)やTiger Globalが主導し、セコイア・キャピタル(中国)、ソフトバンクビジョンファンドなどから7.5億米ドルの資金調達を実施した。
  K12のサービスにおいて、中国をリードするEdTech企業は「作業幇」以外にも、そのライバルである「猿補導」(Yuanfudao)も今年の3月31日にシリーズGラウンドにて、10億米ドルの資金調達を実施し、中国EdTech業界では単一ラウンドにおける最大規模の資金調達となっている。
  BATの一角であるバイドゥよりスピンオフした「作業幇」は、2012年に創業した「猿補導」よりも3年遅れで市場に参入。両社とも、全国模試や中国のセンター試験の過去問などを豊富に取り揃え、オンライン講義の配信や試験問題を画像認識で検索するサービスを提供している。しかし、新参者である「作業幇」はバイドゥのサーチエンジンからも試験問題の検索を実施することができたため、ユーザー数を急激に伸ばし、ライバルである「猿補導」を抑えトップに立つ。
  資金調達後に、「作業幇」の創始者であり、CEOの侯建彬(ホウ・ジェンビン)氏は自社の社員に向けたメールにて、「現在「作業幇」は5,000万のDAUと、130万を超える有料会員を擁し、200を超えるカリキュラムを開発した」と綴った。対する「猿補導」は、3月31日の資金調達後に、小中高向け教育動画配信サービスの有料会員は100万を超え、新規サービスである「斑馬AI課」は50万の有料会員が利用していることを公表したが、依然として「作業幇」がリードしていると市場は予測している。

画像1

「作業幇」の創始者であり、CEOの侯建彬が社員に宛てたメール

  そして上記の二社以外にも、注目を浴びるのが先日の記事でも言及した世界最大のユニコーンであるバイトダンスだ。上記の「猿補導」の新規サービスである「斑馬AI課」に対抗し、開発された英語教育サービス「瓜瓜龍英語」や、中国版TikTokである「抖音」(ドウイン)の教育コンテンツ強化など、教育事業の開拓を積極的に行っている。自社サービス以外にも、バイトダンスはK12 EdTechである「一起作業」や、オンライン英語教育の「Gogokid」に投資し、「清北網校」や「好好学習」といった教育サービスを買収。その勢いは中国国内のみならず、世界最難関大学とも称されるミネルバ大学の運営元、米ミネルバ・プロジェクトにもそれぞれシリーズC、C+ラウンドで投資をしている。
  今年の3月にはバイトダンスのEVPである陳林(チェン・リン)氏も、バイトダンスの教育事業強化を明言し、教育事業部のみで1万人新規採用する計画を公表した。また同月には、新たに北京博学互聯教育科技有限公司を立ち上げ、ソフトウェアのみならず、教育ハードウェアの開発も視野に入れているという。実際、ハードウェアよりもソフトウェアに注目が集まりやすいが、「媽媽再也不用擔心我的学習了」の広告で一世を風靡した「歩歩高」(Bubugao)や、セキュリティソフト大手の「360」が参入する幼児向けのスマートウォッチや、タブレット、プログラミング教育用のロボットを製造する「MakeBlock」や、「DOBOT」なども順調に売り上げを伸ばしている。

スクリーンショット 2020-06-30 17.34.49

スクリーンショット 2020-06-30 17.35.39

「歩歩高」傘下の「小天才」と「360」の幼児向けスマートウォッチ。Simカードを挿入することにより、GPSで子供の位置追跡と通話が可能。また最新型の「小天才」スマートウォッチには前後にカメラが搭載されているため、ビデオ通話をすることも可能。価格は1,598元(約25,000円)。

スクリーンショット 2020-06-30 17.38.58

DOBOTのプログラミング教育用ロボットアーム

  新型コロナウィルスが契機となり、爆発的な成長を遂げている中国のEdTech市場だが、サービスの入れ替わりも激しい。「作業幇」、「猿補導」に加えバイトダンスや列強がひしめく中国のEdTech市場は今後も混戦が続くだろう。

文/夏目 英男

Weekly China
June 30th, 2020

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?