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SNSは現代の投石 〜Z世代はなぜ多様性を重視するのか〜


はじめに

進化心理学や歴史を通して、現代の人の心や習慣について理由を考えるのが好きです。生成AIなど、新しいテクノロジーが次々に出てくる現代では、既存の知識はどんどん陳腐化していき、教育や学習の意味が問われる状況です。しかし、人の心が進化するには時間がかかるため、進化心理学や歴史を通して、人の心や習慣について学ぶことは、いつまでも重要な教養として残るのかもしれません。

最近、人の権力闘争や平等、多様性について考えていて、これまで別々に考えていたことが一本につながるような感覚があったので、考えを整理した結果を共有したいと思います。私は、学者ではないので、きっちりファクトを抑えた文章は書けない(書けなくはないが、時間がない)ので、下記の文章は、一種のポエムかもしれないですが、少しでも誰かのアイデアのヒントになれば幸いです。

人類史上最も平等かもしれない現代

たぶん人類(正確にはホモ・サピエンス)は、二足歩行になって、投擲能力が進化したおかげで、最底辺のオスでも石や槍を投げたらアルファオスを簡単に殺せるようになったことで、平等な社会を実現したのだと思われる。

しかし、社会が進歩し、集団の規模が大きくなるにつれ、底辺オスは真の支配者に石をぶつけられる距離まで近づくことが出来なくなった。秦の始皇帝を直接目にした平民は少ないだろう。どんなに悪政に不満があっても、一平民が支配者を殺すことは出来なくなり、格差は拡大した。

その後、権力者が支配する時代が続くが、再び社会が平等に向かうきっかけとなったのは、銃の発明である。幼少から軍事訓練を受けたエリート騎士がどんなに鎧で身を固め、俊敏な馬に乗っても、そのへんの素人兵が放った銃弾で簡単に殺せるようになった。

貧しい民衆でも、戦力になるようになったことで、民衆も戦争に巻き込まないと他国との戦争で負ける社会が実現した。民衆の意見を無視した政治をしたら、軍事的劣勢になるので結果的に、世界各国で民主主義が実現するようになった。いろいろな理由はあろうが、フランス革命のような民主主義革命がおこるようになったのは、このような力学は働いていたからではないか。

その後、さらに平等を加速させたのは、核兵器の登場である。核の相互確証破壊で、核保有国同士で戦争をしたら、一方が核ミサイルを打つと、もう一方も報復で核ミサイルを打つので、両方の国家が破滅するという状況になった。核非保有国も、核保有国と同盟を結ぶようになり、侵略戦争を行うことがとても難しくなった。結果的に国家間の戦争は減少した。

さらにグローバル化によって、国を超えた人の移動が当たり前になり、9.11のようなテロリズムのリスクが増大した。貧困国を放置しとくと世界が不安定化するので先進国は貧困国への援助を増やすようになっていく。国家間の経済格差がどんどん縮小していった。

その間、マスメディアも社会の平等に貢献した。権力者の不正をメディアが民衆に知らしめることで、大衆が権力者を社会的に殺せるようになった。ただ、次第にメディアは権力と癒着し、メディア自体が一つの権力となった。

その状況を変えたのはITだった。インターネットの登場、その後のWeb2.0、SNSの普及によって、一個人の勝手な投稿で、権力者、セレブリティを簡単に社会的に抹殺出来るようになった。SNS内の"炎上"が、Me Too運動やBLM運動を巻き起こし、男女平等、人種平等と社会の平等性を引き上げていった。最近では、社会的には、かなりのマイノリティであるLGBTの権利さえ、社会的に注目を集めるようになってきている。

長々と書いたが、要は、現代のインターネット、SNSは、石器時代の投石や投げ槍なのではないか。人々に他人を社会的に殺す武器が与えられたことで、自分より恵まれた者を羨み、殺そうとする本能が特定の者が他者に優越することを阻止し、現代の驚くべき平等を実現している。

Z世代を表すキーワードは多様性と言われるが、要はあらゆる価値観、性癖を持った人間に平等な権利を与えよということだといえる。石器時代の投石や投げ槍は目の届く範囲の人間しか殺せなかったが、現代のSNS投稿は、地球上のどこからでも人を(社会的に)殺せる。人を差別する言論は、どんどん淘汰されていった。

経済学では測れない豊かさ

現代社会が平等というのは、読者の直感に反するかもしれない。確かに、円換算、ドル換算で見た資産は、一般人と金持ちでどんどん格差が広がっている。しかし、経済学の常識を取っ払い、実質的価値に注目すれば、現代は経済格差がどんどん縮小しているとみることができるのではないか。

現代の一般大衆は、中世の王族より豪勢な食事を楽しむことができる。多くの国で国民が餓死するようなことは、ほとんど無くなっている。服装も一般人と金持ちで、ほとんど見分けがつかなくなっており、差はどこかの高級ブランドのロゴマークが付いてるかどうかぐらいの差しか無くなっている。

金持ちは、たくさん消費しているが、その金のほとんどが他人とのマウンティング競争のために使われているだけで、本質的な価値はない。冷静に世の中を眺めれば、社会はどんどん平等になっている。

恋愛格差拡大で絶滅する人類

一方で、格差が拡大している領域もある。それは恋愛である。石器時代、人類は少数の部族で暮らしていたので、不倫してる男や女がいたら、見つけて集団リンチで文字通り殺すことが出来た。

しかし、現代は都会の匿名性で、お互いに知らない者同士が狭い地域に集まっており、ヤリチンがバレずに何股もかけたり、ワンナイトを繰り返したりしても、それが地域住民にバレてリンチに遭うということはなくなった。何人もの女性から愛される強者男性と誰からも愛されない弱者男性に二極化した。

さらに、SNSやマッチングアプリの登場が恋愛格差をさらに拡大させた。これまで、女性は職場などの身近なコミュニティの中で優れた男から彼氏や夫を選ぶことが多かったが、SNSやアプリによってコミュニティ外のモテ男と簡単に繋がれるようになった。結果的に、強者男性はさらにモテ、弱者男性はさらにモテなくなった。

一方で、結婚市場は1対1が守られているので、たくさんの弱者男性が売れ残っている一方で、強者男性に群がった女性のうち、選ばれなかった女性も売れ残るという歪な状況が生まれた。その中には普通な男性を選べば結婚できていたような美人な女性も多い。さらに言うと、強者男性に選ばれた女性も幸せとは限らない。強者男性はモテるので、すぐに目移りするため、強者男性と結婚した女性はすぐに離婚し、十分に子孫を残すことができない。強者男性は強者男性で、結婚して子どもが増えると、恋愛に割くお金とエネルギーが減ってしまうので、結婚自体に消極的であり、結婚しても子なし、子一人のようなケースが多い。

結果的に、都市拡大とインターネット環境の整備が進む先進国では、どんどん少子化が加速し、人々が絶滅の危機に瀕している。子作りに消極的な個体が淘汰されたら、子作りに積極的なメンタルが進化し、どこかで状況が反転するのかもしれないが、恋愛格差の拡大などの社会変化のほうが急速なら、人の心が進化して社会に適合する前に、そのまま絶滅してしまうのかもしれない。人類が絶命する理由は、地球温暖化でも、ロボットとの戦争でもなく、恋愛較差拡大かもしれないのだ。

AIが作り出す新たな格差

僕が、今興味を持っているのは、現代の生成AIの隆盛が社会の平等にどう影響を与えるかだ。AIが大衆の武器となり、エリートを抹殺する能力を高め、平等が拡大するのか。それとも、エリートの武器となり、格差を拡大させるのか。

生成AIは、プロンプトによって自然言語で操れるため、AI利用の敷居を大幅に下げた。一方で、APIなどを利用してAIの能力を拡散するには、一定のリテラシーが必要となる。また、AIは人間のようにロジカルに考えているわけではないため、ハルシネーションと呼ばれる間違いを犯す。AIの答えを鵜呑みにする大衆と、AIの間違いを見分け、”上司”としてAIをマネジメント出来る知的エリートでは、格差がさらに拡大するかもしれない。

さらに、SNSでセレブを社会的に抹殺出来るようになった大衆だが、生成AIが簡単にフェイク画像、フェイク動画を生成出来る社会では、セレブが差別発言をしたとか、不倫をしたとかの確かな証拠を掴むのは、どんどん難しくなるだろう。何が真実か分からなくなり、結果的に、エリート層のAIを使った世論操作によって、権力側を利する形になるかもしれない。

終わりに

最近、筋肉隆々で明らかに僕より喧嘩が強い後輩が、ぺこぺこしてくることとか、金持ちイケメンの同僚が子供作らないで、遊び回ってることとかが、突然とても不思議なことのように思えて、いろいろ考えていたら、上記のような妄想が思い浮かんできました。

私自身は、AIは専門分野なので、生成AIブームは非常にワクワクしながら眺めているし、日本の少子化を解決できるよう、まずは自分自身の子供を作ることに頑張りたいと思っています。

私の駄文を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
(この記事の画像はMidjourneyで「スマホを持つダビデ像」のようなキーワードで作成しました。)

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