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男の料理とは決定的に違う「父の料理」、それを極める三ヶ条

「男の料理」と聞くと、ついブロック肉を思い浮かべてしまう。ブロック肉にはロマンがある。タコ糸で縛って、オーブンでじっくり焼き上げて..まるで己の資本力を誇示するかのように時間とお金をふんだんに投入し、渾身の作品を仕上げていくその過程は抜群に男前だ。魚介類のオールスターを呼び寄せて抽出した地中海風のスープや、七色のスパイスを揃えて煮込んだカレーにも似たようなことが言える。

しかし、これはあくまで「男の料理」の理想型。小さい子どもがいる家庭で、忙しいお母さんの負担軽減のためにキッチンに立つ「父の料理」とは求められる要素が決定的に違うということは、これでもかというほど十分に理解しておきたい。
では「父の料理」の理想型とは何か。今日はそれを極めるための三ヶ条を伝えるためにここへやって来たわけだが、その前に最も重要なコツを伝授しておいたい。それは「勝手なことをしない」ということ。我が家のようにルーティンになっているなら話は別だが、この週末にでも新たに炊事にトライしようという意欲をお持ちなのであれば、まず「ごはんを作ってもいいか」を聞くこと。勝手に買い物に行って、勝手にキッチンに立って、勝手に冷蔵庫にあるものを使って「今日はオレがごはん作ってあげるよ」と勝手に思いやりを押し売りしてはいけない。勝手のゲシュタルト崩壊。
奥さんの迷惑にならないよう、都合にも気を配った上でスタートする。これが家族みんな笑顔でおいしく食卓を囲む一番の秘訣。さもないと「せっかく作ったのに何で喜んでくれないの」みたいなバッドエンドを迎える恐れだってある。想像しただけで最悪。

それを踏まえた上で、「父の料理」をマスターする極意にグイグイと迫っていきたい。大事なポイントは三つ。

まずは時間をかけないこと。準備から後かたづけまで、できるだけスピーディに。だって他にもやることヤマほどあるからね。品数はメイン+汁物でとりあえずは十分。使う具材だってレシピから一品くらい欠けてても大丈夫バレやしない。そうすることで下ごしらえに要する時間も削れるし、何より調理道具や食器の数を減らせるのがありがたい。
ついでに、お母さん特有の「ちょっと来て!ティッシュ取って!!」という稲妻オファーにも速やかに応えられる体制を整えておきたい。特に子どもが乳児期の間は、手が粉まみれ油まみれになるのは避けておいた方がいいですね。

次に、作り置きができること。週末のメニューに保存がきくものを少し多めに作っておけば、お母さんが週明けの炊事からしばし開放される。炒め物・煮物・和え物、アンドモア。冷蔵庫を開けたらすぐ食べられるおかずがたっぷり入ってると、めちゃくちゃありがたく感じてもらえるはず。もしかしたら仏壇みたいに拝んでくれるかもしれない。

そして最後に、栄養に配慮すること。恐らく日頃のお母さんは冷凍食品とかカップ麺とかで、瞬時に腹ごしらえをするような食生活を余儀なくされているはず。そこに助け舟を出すのであれば「はい、うどん茹でましたよ~」ではないサムシングを提供したい。具体的には野菜。食生活が簡素になるにつれ最も縁が遠くなってしまうのが野菜。そこを補いたい。ビタミンがどうだカロチンがどうだ、みたいなレベルまで突き詰める必要はないと思う。心がけとして。

以上が「父の料理」を極めるための三ヶ条。シンプルな中にも共通するのは、「相手の状況を思いやること」。これらを大切にすることは、奥さんを家族を大切に思う証であるということを、軽く胸に刻んでおこう。
どうせ誰に見せるものでもないのだから、無理をする必要などない。初期の段階であれば「野菜炒め+豆腐とワカメのみそ汁」なんかが理想的。炊きたてご飯と一緒にいただけば最高のごちそうだ。地味で飾りっ気のないメニュー。だが、そこからほんのりと温かさが伝わってくるような食卓こそが、まずは「父の料理」の目指す姿ではないだろうか。

そうして修行を重ねていくうちに、いつかブロック肉を手にする日だって来るはずだ。

2017年5月のインスタグラムより。ゴールデンウィークの炊事をひと通り回せるようになってた頃。炊き込みごはん定食とか非常にかわいげがあってよい。

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