見出し画像

人間失格大学生、旅に出た。⑤【金沢の観光地めぐり】

金沢の海鮮に舌鼓をうった後、我々はバスで兼六園に向かった。日本三名園の一つに数えられる言わずと知れた、金沢の最強観光地の一つである。

兼六園近くのバス停で降り、向かっている途中で神社があったので立ち寄ってみた。あまりこういったものは信じておらず、神頼みもしない方ではあるのだが、その場のノリでお参りし、おみくじを引いた。

結果なんと思いがけず大吉が出た。まあ、だから何だという話である。そんなものは気休めのようなものである。中には「腕時計を逆の腕につけるとよい」と書いていた。私はおみくじをそっと閉じ、腕時計を外した。誰だって幸運になれるならなりたいもんね。

そこから兼六園に入る前に金沢城の庭を無料で通ることができた。その豪華さと広大な敷地に、え、ここが兼六園でいいじゃんと思ってしまった。とにかく広く、途中で息が切れてしまうほどだった。

城の庭の印象が強かったせいか、心なしか兼六園が弱く見えた。結局一番覚えているのは、友人が園内にあったヤマトタケルの銅像を見てはなった、「剣の持ち方アサシンやん」という言葉である。兼六園の中でアサシンという言葉を発した人間は史上初めてではないだろうか。

その後ひがし茶屋街へ向かった。こちらも金沢では有名な観光地で、和の情緒を感じられる茶屋街で、お茶やお菓子だけでなく、工芸品や陶磁器などの店も並んでいる。非常にフォトジェニックな空間で、女性などは着物を着て見物していた。

私たちはその中でもあまり人のいない店に入ろうと思い、外の看板にフルーツ大福と書かれていた小さな古民家兼茶室のような店に入った。

店内には客は一人もおらず、着物を着た若い女性の店員が厳かに接客してくれた。おずおずとローテーブルとローチェアのローな座席につくと、私たちはお茶とフルーツ大福のセットを注文した。1300円だった。

すると店員は、「あちらの棚からお茶碗をお選びください」と入り口付近の棚に案内してくれた。そこには9つほどの茶碗が並んでおり、どれも模様や大きさ、形などが様々だった。まさかこんなところでセンスが問われるなんて思わなかった。ここで選択を間違えたら退店させられてしまうのだろうか。たじろいだが少し考えて、線の上に紅葉が乗っているようなものを選んだ。すると、それは茶屋街近くを流れる川に紅葉が落ちる様子を表していると教えてくれた。どうやら試験は合格したようで再び無事に席に着くことができた。

狭い空間に店員一人と、客は所作も何も知らぬ私たちのみ。店員は私たちに見える場所で何やら茶器を掃除しているようである。どうにも落ち着くことができず、私たちは異常なスピードで大福とお茶を平らげた。お茶に関しては一気飲みだった気がする。

謎に緊張して味もしっかり覚えていないが店員がかわいかったことだけははっきりしている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?