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眠っている間に雨が降っていたようで、温まったアスファルトから少し生臭い雨の匂いがむっと…
喋る前にお菓子を飲み込み、懐紙ごと机の上に置く。赤羽先輩は食事やお茶の最中に話そうとす…
がちゃ、と誰もいないはずの部室のドアを開けると、赤羽さんがどこから見つけてきたのか薄手…
動悸。息切れ。青い空気の早朝には似つかわしくない灼熱地獄の悪夢から目を覚ますと、隣で寝…
「ままがね、誕生日プレゼントにマンション買ってくれたんだけど」 「最初から最後まで聞きな…
長かった夏休みが終わり、講義はレジュメだけ渡されてすぐ学校祭準備期間に入る。漫研は部誌…
何度も彼女のことを夢に見る。何度も彼女の声を思い出す。片頬で微笑む姿、眠そうなのに鋭い目で射貫くように見つめる顔、柔らかく褒める低い声。魔法のように快楽をもたらす指先、絡めた舌と唇の柔らかさ。近付いた時にだけ感じられるバニラと白檀の重い香り。 何度でも思い出す。何度でも気持ちよくなれる。あの夏の日は夢だったのだろうか? いや、違う。紛れもない現実で、この身体に深く刻み込まれている。刻み込まれた身体は自分で慰めるだけでは満足もできなくなり、気付けば彼女の名前を何度も呼んでい
人の多いところが怖い。既にコミュニティがあったり、自分の知り合いが別の知り合いと仲良く…
父がやっている家庭菜園が今年は妙に豊作だったらしく、誰かお友達にあげるあてがないかと聞…
悪夢からようやく目を覚ます。室内は暗いが、カーテンの隙間から漏れる青白い光だけがやわら…
「やっぱ発行に踏み切ってよかったなあ! 宮野も話上手くなってるし! 赤羽が後押ししてくれ…
柑橘のように爽やかな快晴が視界いっぱいに広がり、まだ温まっていない風を吸い込んだ分全て…
朝目が覚めるとうららはシャワーを浴びていて、月子さんは布団で仰向けのまま眼鏡もかけずに…
祖父の調子が優れないため帰って来いという母親からの連絡と、九月に中学校のクラス会をやるので来ないかという誘いを同時に受けてから二週間、もう大学卒業まで帰って来ないつもりでいた故郷の駅に一人立っている。 駅まで迎えに行こうかという両親からの申し出は断った。いつ帰ってくるかも詳細には伝えなかった。駅から家まではそう遠くないので、寄り道をしながら一人でゆっくり歩こうと思っていた。親の運転でまっすぐ帰りたくなかった、というのももちろんあるが。 岩手の山間に位置する田舎は、夏でも