付加価値を生み出すのは「人」 外国人高度人材が輝く現場|【特集】日本を目指す外国人労働者 これ以上便利使いするな[Part5]
“人手不足”に喘ぐ日本で、頻繁に取り上げられるフレーズがある。
「外国人労働者がいなければ日本(社会)は成り立たない」というものだ。
しかし、外国人労働者に依存し続けることで、日本の本当の課題から目を背けていないか?
ご都合主義の外国人労働者受け入れに終止符を打たなければ、将来に大きな禍根を残すことになる。
文・編集部(友森敏雄)
航空自衛隊入間基地からほど近い工業団地に、金属の超精密加工で世界に名を馳せる企業がある。小金井精機製作所(埼玉県入間市)だ。工場内には、F1マシンや航空機に使用された部材が誇らしげに飾られている。
「最先端の技術になるほど、機械が行うと勘違いされることが多いが、実は最先端の技術はいつも人が生み出している」
鴨下祐介社長は、こう力説する。同社ではエンジニア270人中40人がベトナム人だ。「こうして取材を受けたりしなければ、日本人、ベトナム人と区別して意識することはもうなくなった」という。新たな付加価値を生み出すのは「人」だから、そこに人種は関係ないという発想だ。
同社が最初に外国人高度人材を採用したのは2000年のこと。労働人口の減少が目前に迫る中で、先手を打って4人のインド人学生を採用した。しかし、日本語の壁が大きく立ちはだかり、コミュニケーションに苦労した。結局、4年のうちに全員退社した。後になって日本での転職目的で入社したことも分かり、課題は言語だけではないことを知った。
再チャレンジしたのは06年。ベトナムの大学に出向き、会社説明会を行い、まずは「日本語を習得してもらう必要があること」を強調した。07年の新卒入社として8人を採用した。退職者が出ることを織り込んだ数だった。その後、東日本大震災で東京電力福島第一原子力発電所の事故が起き、親から帰国を望まれたり、家庭の事情などで退職せざるを得なかった人を除き、現在も4人が在職している。
ベトナム人の1期生が入社した際は、半年間、午前中に日本語学校に通ってもらうことにした。もちろん、費用は会社持ち。インド人を採用したときに立ちはだかったコミュニケーションの壁を壊すのが狙いだ。
日本人社員のサポートも大きかった。
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