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平成の財政政策で残された課題 岸田政権はこう向き合え|【特集】破裂寸前の国家財政 それでもバラマキ続けるのか[PART3]

日本の借金膨張が止まらない。世界一の「債務大国」であるにもかかわらず、新型コロナ対策を理由にした国債発行、予算増額はとどまるところを知らない。だが、際限なく天から降ってくるお金は、日本企業や国民一人ひとりが本来持つ自立の精神を奪い、思考停止へといざなう。このまま突き進めば、将来どのような危機が起こりうるのか。その未来を避ける方策とは。〝打ち出の小槌〟など、現実の世界には存在しない。

「経済回復への後押し」と「財政健全化」の両立に向け、新政権はどう舵取りをすべきか。平成の歴代政権の営みを振り返り、財政再建への道筋を探る。

 10月31日投開票の第49回衆議院総選挙では、与党も野党も財源の議論なく現金給付や減税を公約に掲げた。

 政策の舵を取る岸田文雄首相自身も、新首相就任直後の10月8日の所信表明演説で「経済あっての財政であり、順番を間違えてはならない」との発言があった。確かに、政権発足直後で、政府の資金繰りに窮しているわけでもないから、直ちに国民に増税を含む負担増を訴える局面ではないかもしれない。しかし、安定した財政基盤なくしては、経済はおろか、国家の存立そのものが危うくなる。

 コロナ禍からの回復に向けた当面の財政出動を実施することと、将来の財政健全化への道筋を示すことは、必ずしも矛盾しない。それらを同時に進め、両立させることこそ、岸田新政権に求められる政策運営である。

 経済回復を後押しする財政支援は、今後の回復とともに不要となることから、一過性のものである。当然ながら、これら支援を永続させる必要はなく、もし永続させれば国民に不健全な財政依存を引き起こしかねない。だから、経済回復とともに財政出動を店じまいすることで、財政支出が抑えられて財政収支が改善する。これが、財政健全化につながるのだ。

 コロナ禍だからといって、国民は税金の無駄遣いを望んでいるわけではない。無駄遣いをなくす取り組みは、新型コロナウイルス対策と並行して実行できる。

小泉・菅・安倍内閣……
浮かんでは消えたPB黒字化

 新型コロナの感染第5波もほぼ収束し、衆院選を終えた今、11月10日に発足した第2次岸田内閣は「財政再建」という日本の本丸的課題に向き合うべきである。岸田首相が範とした「田園都市国家構想」を掲げた大平正芳元首相は、政権を賭して財政再建に挑戦したのだ。

 新政権が採るべき道を探るにはまず、これまでの政権がどのような財政政策を採り、その結果どのような課題が残されたかを見ていくことが重要だ。

 21世紀に入ってからのわが国の歴代政権は、財政運営において、「財政健全化」と「デフレ脱却」というトレードオフ(二律背反)に直面してきた。しかし、どちらも貫徹できず、二兎を追うものは一兎も得ないまま今日に至っている。

 端緒は、2001年に発足した小泉純一郎内閣だった。

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