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1000年経ても変わらない 「盗賊王朝」中国共産党の本質|【特集】「共産党100年」論に踊らされず 中国にはこう向き合え[PART-1]

 中国共産党が今年7月で結党100年を迎える。第1回の党大会時は50人程度だった共産党員も、2019年には9200万人にまで増加。党は軍事パレードこそ行わないものの、祝賀大会を盛大に開催すると表明している。
 もう一つの100年(建国)を見据え、中国共産党は「中華民族の偉大なる復興」実現への動きを内外に強調するだろう。だがこうした一連の中国共産党による喧伝は、あくまで中国自身の歴史観や統治の考え方に基づくものだ。共産党が言うところの100年のレンズを通して見ていては、彼らの論理に一方的に引きこまれてしまう。〝表〟の姿にとらわれず、内面に抱えた課題を冷静に捉える必要がある。
 歴史に照らして、今の中国共産党は果たして強固と言えるのだろうか。歴史の中で日本との接触にどんな政治意図を込めていたのか。あるいは今の党内部に揺らぎはないか。そして、中国の動向が世界経済を握る今、日本企業が認識し、果たすべき役割とは何か。
 煌めく100年の看板に隠れた、彼らの本質を読み解く。

岡本隆司(京都府立大学文学部教授)

国内外への強硬姿勢際立つ習政権が立ち向かう課題とは――。対立構造解消の鍵は歴史を繙くにある。

 先般、中国文学者の高島俊男氏が亡くなった。享年84。平易軽妙な文章で、複雑難解な漢語漢文と中国事情を、世に広めてくれた文筆家である。

 数ある代表作のうち、歴史屋のイチオシといえば『中国の大盗賊』(講談社現代新書)。版を重ねて、ベストセラーにもなった。

「盗賊」といっても、ドロボーの話ではない。そもそも中国と日本では、スケールも中身もちがう。日本の「盗賊」はやはりドロボー、いかめしい漢語でいうくらいだから、大がかりな窃盗団・強盗団をイメージするのがおそらく正しい。

 それに対し中国で「盗賊」というと、規模の大小にかかわらず、もっとありふれた、永続的な組織を指す。広域暴力団や武装マフィアを想起したほうが、むしろ実態に近い。

 もちろん暴力団ともマフィアとも異質、高島氏も日本にはないものなので、原語で「盗賊」と呼ぶしかないという。というのも、「盗賊」でありながら、それが拡大成長をとげれば、天下をとって君臨することもあるからで、中国史とは「盗賊」の興亡がつくってきた歴史でもあった。

 そんな歴史を描く『中国の大盗賊』の白眉は、毛沢東の中国共産党・中華人民共和国を歴代「盗賊王朝」の掉尾に配したくだりにある。それなら「盗賊王朝」とは何か、毛沢東政権がなぜそうなのか、について説明がなくてはならない。

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中国共産党の結党100周年という節目の日を中国の国民はどのような思いで迎えるのだろうか(REUTERS/AFLO)

「一統」を尊ぶ中国
西側諸国の常識と前提が異なる

 中国は厖大な大陸であり、そこには多種多様な言語・習俗の人々が混淆し、せめぎあって暮らしてきた。そうした世界を治めるため、発明されたのが中国の王朝体制である。独尊独裁の天子を戴くエリート官僚制が、各地の多種多様な社会をとりまとめるというシステムであり、少なく数えても1000年以上にわたり続いてきた。社会が多元的なために、政体はかえって、何よりも一統を尊ぶ、というありようなのである。

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