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曖昧すぎる日本のかかりつけ医 実現に必要な「公」の視点|【WEDGE REPORT】

「かかりつけ医」の制度化を国として初めて打ち出した岸田政権。実現にはまず、医師と患者との間に医療とは「公」のものであるという意識が必要だ。

文・浅川澄一(Sumikazu Asakawa)
福祉ジャーナリスト
1948年、東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。71年、日本経済新聞社に入社。西部支社を経て、東京本社で流通業、サービス業などを担当。87年11月に生活情報誌『日経トレンディ』を創刊し、初代編集長に。93年に流通経済部長、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化やNPO活動など、社会保障全般を担当。2011年2月に定年退社。公益社団法人長寿社会文化協会理事。


 コロナ禍の2021年初春からワクチン接種が始まった。「接種は住民が通い慣れた地域のかかりつけ医で」と日本医師会(以下、日医)は主張した。主張が通り、自治体が地元医師会を通じて診療所での接種をスタートさせた。だが、トラブルが多発する。

 「かかりつけ医のはずなのに、接種できないと言われた。おかしいわね」

 住民は時々受診する近くの診療所から、「定期的に受診しないのは、かかりつけ患者ではない」と断られたという。

 そこで、住民は一度も受診したことのない遠方の診療所にいくつかあたり、やっと接種できた。その診療所が「かかりつけ」であるはずがない。かかりつけ医とは何か。各地で疑問の声が上がった。

 発熱患者が新型コロナの診療を受けようと、かかりつけ医と思っていた医師に連絡を取ると、門前払いされることもあった。

コロナ禍では診療所が独自の判断で診療を断る事例が散見された (THE MAINICHI NEWSPAPERS/AFLO)

 通院しないで済むオンライン診療を巡る議論でも、かかりつけ医問題が起きた。コロナ対策として20年春から全面解禁された時に当時の田村憲久厚生労働相は「オンライン診療はかかりつけ医に限定する」と釘を刺した。

 その時、かかりつけ医とは、「受診回数が何回以上なのか」「3年前の受診以降通っていないが、どうか」など意見が百出した。

 実は、かかりつけ医という用語には法律や制度上の裏付けは一切ない。医師の一方的な思い込みで「私はあなたのかかりつけ医です」と決められてしまう。

 コロナ禍で多くの日本の医療制度の歪みが露呈した。責任をもって住民を診察する医師が明確でないことが明らかになった。「受診の自由」(フリーアクセス)を否定され、診察を受けられない患者が続出した。医療制度の根底が揺らいでいる。

 欧米ではどのような仕組みになっているのだろうか。

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