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非常識に挑戦し続けるユニコーン企業強さの秘訣|【特集】現状維持は最大の経営リスク 常識という殻を破ろう[Interview3]
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非常識に挑戦し続けるユニコーン企業強さの秘訣|【特集】現状維持は最大の経営リスク 常識という殻を破ろう[Interview3]

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日本企業の様子がおかしい。バブル崩壊以降、失敗しないことが〝経営の最優先課題〟になりつつあるかのようだ。
しかし、そうこうしているうちに、かつては、追いつけ追い越せまで迫った米国の姿は遠のき、アジアをはじめとした新興国にも追い抜かれようとしている。
今こそ、現状維持は最大の経営リスクと肝に銘じてチャレンジし、常識という殻を破る時だ。

石灰石を主原料に水をほとんど使わず、紙やプラスチックの代替材料になるライメックス。この新素材を武器に世界進出もうかがうのが、ユニコーン企業TBMだ。

 日本でも自給率100%の石灰石(炭酸カルシウム)などの無機物が主原料で、生産時に水をほとんど使わない「LIMEX(ライメックス)」。紙やプラスチックの代替となる新素材として、飲食店のメニュー表や東京マラソンの飲料カップにも採用されるなど、普及が進む。開発したTBM(東京都千代田区)の山﨑敦義社長に話を聞いた。
聞き手・編集部(大城慶吾、友森敏雄) 
写真・井上智幸

山﨑敦義(Nobuyoshi Yamasaki)
TBM代表取締役CEO
1973年大阪府生まれ。中学校卒業後、大工を経て、中古自動車販売会社を起業。2011年にTBM(Times Bridge Management)社を立ち上げる。

何百年も残る仕事が
してみたい

 「私は中学卒業後、15歳で大工になった。みんなが行くから、高校に進学するという感じが、当時の自分には何か違うなと思えたからだ。1日の仕事を終えてへとへとになって帰っているとき、中学時代の同級生たちに出会うと、高校という道もあったんだなと思うことはあった。それでも、後悔はなかった。ただ、大工時代の先輩の中には『自分たちの人生はこんなもの』と、諦めている人もいた。私は逆に、そんなことはないはずだ。ちょっと遠回りしたぐらいで、残りの人生を諦める必要なんてないし、絶対やってやれるんだっていうことを見せてやりたい。それは、自分自身にも、自分の後輩たちに対しても思った。

 20歳になったとき、中古車販売事業で起業した。学歴もないが、変なプライドもない。何も持っていないから、何かを持っている人たちに頭を下げて教えを請うし、教えてくれた人に素直に感謝もできる。『30歳までに日本中の誰もが知っている会社、経営者になる』という思いを持っていた。その後、地元の大阪・岸和田では一定の成果を上げることができた」

 そんな時に、ライメックスにつながる「ストーンペーパー」に出会う。

 「その前に、人生で初めて欧州を旅行する機会があった。ロンドン、ローマ、バルセロナ、パリを巡る中で、何百年前に造られた建物が、今も残っていることに衝撃を受けた。起業してからの10年は、あっという間に過ぎた。自分の人生、これをあと何回か過ごせば、終わりになるのか。だったら、何百年も残る仕事がしてみたいと思った。そんな時に出会ったのが、ストーンペーパーだった」

 石灰石が主原料で、生産するための水はほとんど使用しないストーンペーパーに可能性を感じ、生産を行う台湾企業と日本の代理店契約をした。

 「2008年に、台湾から輸入を開始した。だが、価格が高く、品質が不安定ということから、全く売れなかった。資金も底につくところまで追い込まれた。それでも、この素材の可能性を信じて、10年に独自技術による自社開発を検討した。しかし、リスクはあるし、資金繰りも厳しい。それでも、背中を押してくれたのは、さまざまな所で出会った人たちだった。『君がそこまで思い入れているならやるべきだ』と。

 リスクという意味は、イタリア語の『risicare(リジカーレ)』が語源で、もとの意味は『勇気を持って試みる』ことだと教えてくれる方もいた。そうしているうちに、これは人生に何回かしか訪れないチャンスだと思えるようになった。チャンスに気づかない人もいれば、気づいてもチャレンジしない人もいる。自分は、チャレンジしようと思った。

 11年にはTBMを立ち上げ、ライメックスを開発し、その後、宮城県白石市にプラントを立てた。なぜ宮城なのかというと、21歳のときに阪神淡路大震災を経験したことが影響している。岸和田から神戸に駆け付けたが、何もすることができなかった。もう一度、こんな経験をすることがあれば、必ず何かに貢献しようと思っていた。その後、東日本大震災を経験して、翌日には仲間と支援のために現場に入った。その後、ご縁があって白石市にプラントを建てることになった」

 今年秋からは横須賀市でライメックスと廃棄プラスチックのリサイクルプラントの運営を開始する。

 「日本の廃プラのほとんどは、サーマルリサイクルという形で、熱源利用されている。そうした中で、今年4月にはプラスチック資源循環促進法が施行され、35年までには全ての使用済みプラスチックをリユース・リサイクルで有効利用するという目標が定められるなど、状況が変わろうとしている。

 サーキュラーエコノミーを牽引していくような、その仕組みづくりをわれわれスタートアップがやろうという決意のもと、廃プラのマテリアルリサイクル事業を行う決断をした。まだ、実験段階ではあるが、ライメックスの原料に廃プラを利用できるように開発を進めている。横須賀のプラントでは使用済みのライメックスの回収も行う。ライメックスとプラスチックのマテリアルリサイクルを両立させるモデル工場として確立させ、近い将来には、全国、海外への展開をしていきたい」

 一方で、ライメックスの利用拡大、普及が課題になる。

 「既存の紙やプラスチックの代替となるので、既存の仕組みやルールの視点から、認めてもらえないなどの場面もある。カテゴリーがなかった新素材を生み出したのだから当然で、自分たちで標準化に向けた規格づくりを進めたり、リサイクルできる素材であることを証明するために回収と循環の仕組みづくりに取り組んだりしている。

 昨年7月には、韓国のSKグループから出資を受けた。どこの国の企業と提携するかということに意味はない。大事なことは志を同じくする仲間と組むことだ。SKグループとは、ジョイントベンチャーを設立し、付加価値の高い『生分解性』のライメックスの開発を共同で進めている。生分解性の普及に舵を切った中国をはじめ、回収のインフラが整っていない東南アジア市場への展開も一緒に進めていきたい」

ライメックスの商品群 (TBM)

 今後チャレンジしたいことは何か。

 「戦後の日本企業は、東南アジアなどの国々で製造拠点をつくった。それで国が豊かになったことで大いに感謝された。今度は、同じようにサーキュラーエコノミーやサステイナビリティといった領域の展開を世界中の国々で行っていきたい。そして、この領域であれば、TBMをはじめとした日本企業が世界一だと言われるような存在になっていきたいと考えている。情報革命、AI革命の次は、サステイナビリティ革命が起きるはずだ。

 ユニコーン企業と呼んでいただける存在になったことはありがたい。ただ、成功者ではなくまだまだチャレンジャーの立場だ。後に続くスタートアップ企業の経営者たちの手本となるように、責任を持って事業を成し遂げていきたい。われわれは、まだ直接的にスタートアップを支援できる立場じゃない。だからこそ、戦っている姿を見せていきたい」

 新しく事業を起こす際、チャンスととらえるのか、リスクが高いととらえるのか、人それぞれだろう。ただ、判断する際に大いに役立つのが第三者の意見だ。「学歴という意味で私にはプライドがないから、人から教えを請うことに抵抗がない」と、笑う山﨑氏のもとには、大事な局面ごとに助言をしてくれる人が現れる。「教えを請う」という姿勢を貫いているからだろう。山﨑氏のもとには、異業種の社員や社外取締役といった形で新たな人材が止むことなく集っている。

出典:Wedge 2022年6月号

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