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プロ経営学者が提唱する優良企業の〝必須条件〟|【特集】人をすり減らす経営はもうやめよう[mini Interview]

日本企業の〝保守的経営〟が際立ち、先進国唯一ともいえる異常事態が続く。人材や設備への投資を怠り、価格転嫁せずに安売りを続け、従業員給与も上昇しない。また、ロスジェネ世代は明るい展望も見出せず、高齢化も進む……。「人をすり減らす」経営はもう限界だ。経営者は自身の決断が国民生活ひいては、日本経済の再生にもつながることを自覚し、一歩前に踏み出すときだ。

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累計約70万部を誇る『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズの著者が語る、企業経営者が備えるべき心構えとは。
聞き手/構成・編集部 川崎隆司

坂本光司(「人を大切にする経営学会」会長)

坂本光司(Koji Sakamoto)
「人を大切にする経営学会」会長
1947年、静岡県生まれ。経営学者。専門は中小企業経営論、地域経済論。千葉商科大学大学院商学研究科中小企業人本経営(EMBA)プログラム長を兼任。静岡文化芸術大学教授や法政大学大学院教授などを歴任し、現職。著書に『日本で一番大切にしたい会社』シリーズ(あさ出版)など多数。

編集部(以下、――)「人を大切にする経営学」とはどのような学問なのか。

坂本 「経済学」が世の中を〝知る〟ための学問だとすれば、「経営学」は〝実践する〟学問だ。決して本や机上だけでは完結せず、最前線である企業の経営現場で成功したミクロの事例を集めて体系化することで「理論」と呼べるものが見えてくる。20年以上の長きにわたって約8000社もの日本企業を訪問した中で、長く優良経営を続けている企業に共通していたのが「人を大切にする」という経営姿勢だった。

――大切にする「人」に優先順位はあるか

坂本 私は多くの経営者に「ES(従業員満足)なくして、CS(顧客満足)なし」と伝えてきた。まずは自社の「社員とその家族」を大切にする。そうすることで彼らは仕事にやりがいを見出し、一生懸命に「顧客」のために働く。顧客が満足すれば売り上げが上がり、その一部を、最後に「株主」へと還元できる。この順番を間違えてはいけない。

「周囲の人を幸せにする」という目的を見失わなければ、利益や名声は後からついてくる。

――長く続く企業と、そうでない企業の違いは。

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