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オランダ政府がスキポール空港の減便措置を断念、米国などの抗議を受けて

一昨日11月14日の本欄でお伝えしたばかりの「蘭アムステルダム・スキポール空港発着便の減便措置」は、同日午後(現地時間)にオランダ政府によって撤回されたことが分かりました。

オランダ政府は昨22年、ヨーロッパで最も混雑する航空ハブのひとつであるスキポール空港の便数を50万便から46万便に削減する計画を発表し、実際にこの冬季スケジュールから乗り入れ航空便の減便措置を実施することになっていました。
しかし、一昨日もお伝えしたように、米国を含む各国からの抗議と、EU委員会からもこの措置が欧州の法律や航空協定に違反する可能性があるとの警告を受けて、オランダ政府はスキポール空港での運航抑制計画を当面は放棄すると発表したようです。

オランダ政府が運航抑制策を撤回したアムステルダム・スキポール空港(空港HPから)

この件で大いに喜んだのは、強い反対の声をあげていた米国の航空会社団体エアラインズ・フォー・アメリカ(A4A)です。さっそく、「オランダ政府がスキポール空港発着便の減便計画を中止するという発表は歓迎すべきニュースです。私たちは、航空業界の懸念に耳を傾け、オランダ政府とEUに対して米国・EU航空輸送協定への違反を指摘してくれた米国運輸省に感謝します」との声明を出しています。

A4Aは一方で、「騒音公害の削減を考えると同時に、航空業界の世界的な環境対策の目標達成に引き続き取り組んでいく。米国の航空会社は、より燃料効率の高い航空機とエンジンに継続的に投資し、持続可能な航空燃料を開発し、機内と地上の両方でより効率的な手順を実施していく覚悟です」とも言っています。

また、オランダのフラッグキャリアたるKLMオランダ航空も、もし米国航空会社に対しスキポール空港の乗り入れを制限するなら、対抗措置としてKLMのニューヨーク便も差し止めると言われていたため、今回のオランダ政府の譲歩でホッと胸を撫で下ろしたことでしょう。

オランダ政府のインフラ・水道大臣であるマーク・ハーバーズ氏は議員に宛てた書簡の中で、来24年に向けた計画の第1段階は「追って通知があるまで」延期され、少なくとも(KLMが政府の減便措置を訴えて係争中となっている)最高裁判所の判決が出るまで延期されると述べました。最高裁判所の判決は24年の第2四半期に下される予定だとか。

ただ、この決定でがっかりしたグループも少なくありません。アムステルダム南郊の空港近くの住民への騒音公害を軽減するために、空港の発着抑制を強く希望してきたスキポール市は声明で「地元住民が窮地に立たされており、この動向には失望している」と述べました。

また、地球温暖化対策などで戦っているグリーンピースやフレンズ・オブ・ジ・アースなどのオランダの環境団体は、今回の同国政府の計画撤回を「衝撃的」だとしています。
「ここでは非常に多くのことが危機に瀕している。その結果、地元住民は窮地に置かれ、気候はさらに加熱する」と警告を発しながら、「これは大きな後退だが、オランダを住みやすくし、気候危機に取り組むためには、航空便の数は減らさなければならない」と付け加えています。

環境問題と航空産業の相剋を解消するのはなかなか難しいことですが、各国が協力と対話を重ねながら、さまざまな方法で取り組んでいくしかないようですね。

2023年11月16日掲載

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