フリーランスには二種類いる

僕は以前都内のWeb制作会社に勤めていて、8年くらい勤続したところで退職してフリーランスになった。わかりやすくブラック企業だったし未練はないけど、ブラックなだけに色んなことを覚えることはできた。その点については本当に感謝している。

フリーランスで仕事をしていると時折他のフリーランスの人と一緒のプロジェクトに参画することがある。フリーランス同士で色んな情報交換をしたりして横のつながりができるし、何かの機会でお互いに仕事を紹介し合ったりして結構楽しい。


しかし、たまにフリーランスの中にもやべえやつが居たりする。

僕が数年前にジョインしたプロジェクトで、若いフリーランスのマークアップエンジニアと一緒になった。以前はSIerでフリーランスのエンジニアとしては1年満たないくらいの経験だそうで、僕のことを先輩、先輩と言って慕ってきてくれた。

最初はまあ可愛い後輩くらいの感じで思ってたんだけど、この人がマジでやばかった。

まず圧倒的にスキルが足りない。マークアップエンジニアを名乗るからには、少なくとも基本的なHTMLマークアップは出来ると思っていた。しかし彼の書いてきたソースを見ると

<ul>
    <div>文章文章文章</div>
    <h3>見出し</h3>
    <p>文章文章文章</p>
    <li>リスト</li>
</ul>

といった感じで書かれていた。
HTMLマークアップが分かる人ならこのHTMLがいかにヤバいか分かるだろう。リストを定義するul要素の中にh3やpがあったりするのだ。

そしてWebの知識が少ない。
彼はドメインやサーバもよく分かっていないみたいだったし、ブラウザの開発ツールもあまり使い慣れていない様子だった。


本来であれば同じフリーランスの僕が彼にわざわざレクチャーすること自体が業務外だったわけなんだけど、プロジェクト完遂のためには少しでもスキルを身につけて戦力になってもらわないことにはまずい。だから少々時間を割いてでも彼に色々と教えた。

でも最大の問題はここからだ。正直スキルが低いことなんて可愛く思える。
彼は自分の都合のいい時は「先輩、先輩」と人懐っこく話しかけてくるが、ちょっと指摘をすると「あ、ソッスカ…」「ハイハイ…サーッシタ」と拗ねてしまうのだ。これやばくね?


元請けの会社のディレクターさんは僕に何度も彼のフォローを続ける様に言ってきたが、流石に僕の業務外のタスクが増えすぎてしまうので、報酬の見直しなどを含めて交渉した。

翌日、彼はチームのデスクにいなかった。
どうやら前日の夜にディレクターさんと話した時に仕事の進め方についてディレクターさんに指摘され、逆上して来なくなったらしい。その後どうなったのかは分からない。


後日、僕にとって先輩格のフリーランスエンジニアの人にその話をしたら

「ああ、そっちのフリーランスかあ」

と言っていた。「そっちの」というのは、いわゆる出来ない方のフリーランスという意味だそうだ。先輩フリーランスエンジニアが言うには、フリーランスの中には、会社など組織にいなくても通用するタイプの人と、会社など組織に所属することが困難で成り行きで一人になったタイプの人と二種類いるのだという。
話を聞いたその日は「そういうもんかなぁ」と思っていたけど、何度か色んな現場でそういう人が稀に紛れ込んでいる時に「そっちの人か」と思うようになった。


僕はこの記事で「そっちの人たち」を馬鹿にすることはできない。
なぜならこの仕事、油断していれば常にヤバいやつの仲間入りしてしまうことがあり得るからだ。少なくとも拗ねて会話にならないようなフリーランスにはならないようにしたい。

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